いつだったか、「まれびとハウス」に立ち寄った時のこと。
そこにいた誰かと意気投合して、2冊の本をもらいました。
「ぜひこれを読んで欲しい、きっと合うから」というコメント付きで。

シモーヌ・ヴェイユ『根をもつこと』上下巻
亡くなってのちまで無名だったこのフランスの女性哲学者の作品は
正直難解で、今でも読み通せていません。(上巻すら!)

ただ、少しずつ読む中で印象的だった言葉があったので
ここに書き留めておきます。

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「われわれは麦畑に経緯を払わねばならない。麦畑だからではなく人間にとっての糧だからである。同様に、祖国、家族、その他いかなるものであっても、集団には経緯を払わねばならない。集団だからではなく一定数の人間の魂を養う糧だからである。」
シモーヌ・ヴェイユ『根をもつこと』上巻より
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彼女は第一次・第二次世界大戦を通じ、戦争と人の死と、
無理解と迫害の中で生きた、世俗的なユダヤ人家庭の子女でした。

21世紀を生きる私が周りを見渡してみれば、
「魂の糧」に払われるべき敬意は、この物的に裕福な日本でも、
彼女の育ったフランスでも、豊かに存在しているようには思えないのでした。

大きな力に蹂躙されるボロボロの国々の市民から見れば、きっと尚更なのでしょう。
祖国や家族という「糧」は、麦と違って置き換えもきかず、
糧が失われれば魂も傷つき、傷ついた魂はそこから腐るのでしょうね。

そんなことをぐるぐる考えながら、のんびり読んでいます。
5年で読了できるかな。笑
エンデの作品「鏡の中の鏡」も、分かったと思えるまで5年かかったけれど、
いまでは大事な一冊です。