雑踏の中で「谷中から根津に行こうか」後ろの紳士がそう言った隣の女性が「え?」と訊き返す紳士はもう一度言ってやる彼が三度目に繰り返したとき私はやっと理解する二人を結ぶ光陰の数ふわりと積まれた丁寧なくらし 私の持たぬ細やかさを