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おんがく・えとせとら

音楽のこと,楽器のこと,いろいろ。

 

 懐かしや、80年代に"I Ran"などがヒットした「カモメの群れ」A Flock of Seagulls。写真のリードボーカル/KBのマイク・スコア(Mike Score)のヘアスタイルはカモメを意識したものだったのでしょうか? 花形満もびっくり、スダレで前が見えん。

 

 さて、今回の本題はそちらではなく、旧Seagull、現M.Shiozakiブランドの塩崎雅亮氏。先月のことですが、四国電力が毎月無料配布しているPR誌「ライト&ライフ」の12月号に愛媛在住の塩崎氏が紹介されました。四国以外の方にはなかなか行き渡らないかと思います。特集タイトルは「美しい旋律を生み出すルシアーの世界」、同じ愛媛のギター製作家・廣川憲二氏の記事とあわせてどうぞ。

 

 

 

 実はかれこれ10数年前、私も塩崎氏の工房を訪ねたことがあります。現在は西条市となっていますが、当時はまだ平成の大合併前で東予市でした。マーチン00-18のネック起きの修理をお願いしてて、完成時にもらい請けに行ったのです。旅館だったかお風呂屋さんだったか、昔の佇まいを残した古い建物で看板がなく、電話してなんとかたどり着いたのを覚えています。工房内をざっと見学させてもらい、出荷前のギターを少し弾かせてもらいました。お弟子さんが1-2名いたような。

 修理品はさすがにきっちりリペアされていました。修理費は45,000円だったかな。フレットも総打ち替えだったのですが、若干両端が削り過ぎで1弦プリングオフ時のひっかかりがなくなってしまいましたが。弾き手の好みまで伝えてなかったからなぁ。

 嬉しくて帰りに高速のSAで車を止めてしばらく弾きこんで悦に入ってましたっけ。

 

 

 レコード・コレクターズ2月号の特集が「キング・クリムゾン80年代3部作」。CD/DVD/BD19枚組ボックスセット「On (and off) The Road」の発売に関連した内容だったのですが、2016年10月の発売から随分遅れて取り扱うのはなぜ? 販売が思わしくないのでテコ入れ策のプロモーションの一環だったんでしょうか? Amazonでも、4ヶ月余り経過した3月4日現在レビューが1件だけです。現役時代に評価が低かったことが尾を引いているのか? 

 KCファンの知人曰く「80年代は大嫌い。ダブルトリオの方がまだマシ」とのこと。私は大好きなんですがね。ちなみに彼はバンドのキーボーディスト。延々決まったパターンを繰り返すギターバンドにはのめり込みにくいのかもしれません。

 

 昨年後半以降、同セットの発売と前後していくつか関連本が発刊されています。

 

 

 右から「レコード・コレクターズ2月号」、「キング・クリムゾン ライブ・イヤーズ1969-1984」(シンコーミュージック)、「デビッド・ボウイとギタリスト」(RフリップとAブリューの記事あり/シンコーミュージック)、「プログレ・ギターの魔術師たち」(RフリップとAブリューの記事あり/リットーミュージック)。

 一番左は参考書籍、今回改め読み返してみたシド・スミス「クリムゾン・キングの宮殿」。80年代KCについて結成から解散まで30ページ余の記述があります。2007年に出たものの現在は絶版。中古品なら購入可能のようです。

 

 これらに刺激され「じゃあひとつ奮発してみよう」ということで今回買った中身がコチラ。

 

 

 ディスクは、ボックス本体の4つの仕切りにジャケット5部(右上の仕切りのみ二段重ねで2部入り)、各ジャケットに3枚ずつ収納で計15枚を収納。残るディスク16〜19はボーナス・ディスク扱いで別の台紙に一括収納されています。

 

 30cm角のブックレットは約40ページ、初めて見るステージ/リハ/レコーディング時の写真もたくさん掲載されています。年追うごとに変化していくAブリューのヘアスタイルもよく分かる。1983年5月のスタジオ写真では、ペイント前の改造ミュージックマスターを弾く姿も見られます。このギターはすでに「Three of〜」録音時から活躍してたんでしょう。

 

 その他のオマケ(チケット、ポスター等の複製品)は次のとおり。

・1984年来日公演パンフレット

・ポスター×2(1982/8/7公演、1982/9/6公演)

・バンド・ポートレイト×1

・ワーナープレスリリース?(1984/3/3版)

・EGプレスリリース?(1981-1982)

・Rフリップの日記?(1981/10/30)

・演目リスト

・バックステージパス×3

・チケット×4(1982/8/27フレジュス、1981/12/12大阪、1981/11/11イリノイ、1981/10/22トロント)

 

 

  ところで、本ボックスセットの広告は分かりづらく、上の雑誌広告にある<日本アセンブル・パッケージ・オリジナル特典>は公式サイトで購入しないと付いて来ないみたい。こちらは定価3万円、中古でも2万1千円〜と、ちょいとお高い。

 しかし、広告の「もう、猫またぎとは言わせない!」はなかなか自虐的、国内では背水の陣で臨むという宣言でしょうか。

 

 本作についての個人的な評価点は、映像はほとんどYouTubeに挙がってるものばかりですがより高画質・高音質で視聴できること、ライブ音源の経年変化をまとめて聴き比べられること、ブックレットが充実してること、あたりでしょうか。特に「Elephant Talk」でのA.ブリューのぶっ飛びギターソロをいろいろ楽しめるのが魅力で、ソロの最後をフニャフニャと締め括る仏フレジュスのバージョンが一番秀逸かな。(残念なことに映像がない。)

 

 

 

 8月末に発売されたキング・クリムゾンの新譜ライブ盤は「Radical Action (To Unseat The Hold Of Monkey Mind) 」という、また、プログレらしい小難しいタイトルでした。

 同盤に入ってた日本語解説では「心猿の抑制を解き放つ抜本的行為」とありますが、しがみつく心猿を振り落とすような激しい行動、というようなことでしょうか。しかし、仏教用語の「意馬心猿」にある後者の言葉はMonkey Mindと同じと考えてよいのか?

 人間の煩悩や情欲、いわゆるスケベ心はコントロールしきれない馬や猿のよう、ということ(馬や猿にとってはいい迷惑。牛はどうか? 原子心母—これは意味違う)ですが、これは仏教用語・ヨガ用語としても世界に広く知られておるようで、同一と考えてよさそうです。そういえば昔読んだ石川達三の「心猿」も同じテーマを扱ってましたね。不倫の話。

 

 さて、本作は昨年12月19日、私も見に行った高松公演がメインになっているということで話題になってましたが、青いカーテンを背景にしたステージレイアウトはどの会場も同じらしく、作品中にはことさらライブin高松をアピールする記載はありません。映像の一番最後に観客が初めて登場しますが、私は映ってませんでした、残念。

 高松公演の座席は前から5列目のやや左で非常に良い位置でしたが、やはり不覚にも途中寝てしまいました。ひょっとしたら新曲の「心猿(Radical Action〜)」の時だったかしれない。聴き返してみるとイントロは監獄ロックみたいですね。うーむ、馴染まん。

 あ、「RED」演奏時にステージ両側からスタッフがいきなり数人出てきて、前方左のお客さんを連行していったのも目撃しました。結構手際が良くて、シルクドソレイユの演出のように余興として仕込んであるのではないか、てな感じでした。

 サンポート高松ホールはMax1500席、地方でのプログレ公演としては程よい規模だったかもしれません。随分昔、トレヴァー・ラヴィン時代のYesが同じく香川にやって来た時は県民ホール(2000席)が会場で、こちらは結構スカスカだったのを思い出しました。

 

 

 70-80年代にはプログレの難解・哲学的なところに自己陶酔してましたが、さすがに30年以上を経た今は昔の話、という感じです。クリムゾンに関しては個人的には「ディシプリン(Discipline)」時の衝撃がすごく印象的で、それ以降のクリムゾンは現在に至るまでオマケの時代のような感じがしてます。

 ダブルトリオ、トリプルドラムなど実験的な試みは頑張ってるね!と評価したいと思いますが、あの時を超える興奮がない。エイドリアン・ブリュー(Adrian Belew)のギターとトニー・レヴィン(Tony Levin)のスティックという飛び道具と、陽気なアメリカ人vs陰気なイギリス人の融合というシュールなパフォーマンスはまさに突然変異だったんでしょうが、1981年、浅草国際劇場に行かなかったことを未だに後悔してます。

 

DGM提供のライブ映像 サックスが入ると随分雰囲気が変わります