ソプラノ歌手・川上真澄です。
演奏家でもありプロデューサーでもあります。
時々庭師にもなりますが、こちらはちょいとお休みしています。それでも咲いてくれるバラたち。
ありがたいです。
さて、企画して演奏して…
この形を取るようになって8年目くらいです。
昨日の記事から続き。
報酬をチケットで、というシステムを取るところがあります。
私はこの考えには反対です。
『チケット=報酬』と聞こえはいいかもしれませんが、見方を変えるとチケット・ノルマ有りの無報酬と何ら変わりはないと思うのです。
渡されたチケットの枚数の中で売った枚数がギャラというわけですから、演奏に対する報酬とは性格が異なるように思うのです。
本来、企画する側が報酬をお渡ししないといけないのに、演奏者にチケット販売という他の業務を強要しているだけです。
限られた枚数のチケットを売れば、それがそのままギャラになるんでしょうから無報酬ではないと思われるかもしれませんが、
中には売らないで配る人もいるかもしれません。
配るどころか持ったままかもしれません。
「そんなのは個人の自由よ」で済む話ではないと思います。企画する方、演奏する方、どちらも自分たちの首を絞めてるんですから。
その小さな波は少しずつ広がって、全体に悪影響を及ぼします。
チケットを無料で貰った方は、会場に来ない場合もあります。自腹切ってないので、ありがたみがないのですよ。公演日を忘れちゃうんです。
というか、他の用事を優先させます。自分でお金払ってないから痛くも痒くもありません。
(これはチケット料金が安すぎても起こる現象です)
そうすると、客席には空席が…
ガラガラな公演では、いらしたお客様が「あれ?」と残念な気持ちになります。いい印象を持たれず負のスパイラルにおちいります。
それから無料で配っていると、その団体の次の公演のチケットが売れなくなります。
だって、無料で貰ったのよ?
また出演者の誰かを突っつけば無料で貰えるわ。
(これは割引した場合や安すぎた場合にも)
実際にこのセリフを言われて、二度と『ご招待』はしないと誓いました。
これ、地方の公共ホールで実際に起きている現象です。
「待ってれば売れ残ったって、また配り出すから購入しない」んだそうです。
無料で配られると次の公演のチケットが売れなくなるのを証明していますね。
公共ホールですから、予算は行政から出ているので企画する方は売れずとも痛くも痒くもないのです。自分たちのお給料は変わりません。
ただ、お呼びしたアーティストや演奏者に対して、客席ガラガラではさすがに失礼だろうということで何とか客席を埋めようと最後には無料配布となるようです。
数年前に聞いた話ですので、今はどうなのか改善されたのか知りませんが…
自ら自分たちの企画の価値を落としているように思います。
私は自分が企画する公演で奏者にチケット・ノルマは課しておりません。
上記のような理由の他に、演奏者にはノルマがあるだけで精神的にも経済的にも大変な負担が掛かるのが分かっているからです。
ただ、赤字になると自腹を切るのは自分ですから、私にとっては『自分だけ膨大なノルマ』がある状態なんですけどね
共演者からは「ノルマが無いのは助かる」
という声をいつも頂いています。
プロデューサーとしては、ノルマを課さないのは負担が大きいので大変つらいです。
チケット収入でコンサートを運営しているのですから、売れなかったら売れなかった分、負担するのは自分です。
しかも自分も一緒に演奏し『1人ノルマ』という超ドM状態に自分を追い込んでいるのですから、毎度毎度よぉやるよ…と思います
生活の危機というか、今後の演奏活動の危機というか…そんなものを感じながらのチケット販売活動。不安がつきまといます。
でも、ノルマを課すことで共演者の方々が苦しんでいる姿を見ることの方がつらいかもしれません。
それに自分がやりたい演目に奏者に付き合って貰っているという感覚もあります。
なので自分で企画しておいてチケット・ノルマを課すなんて鬼だな…と。
市民オペラ団体を設立し、合唱メンバーを素人さんから募集した時に
「チケット・ノルマはありますか?」
という問い合わせを頂きました。
本当に驚きました。
素人さんにもチケット・ノルマを課すところがあるのですね。
プロデューサーとしてのプライドはないのでしょうか。
一つ言えるのは、
出演者が心から楽しんでいる公演は、ノルマを課さずとも自主的に販売協力してくださいますよ。
ノルマ無しなのに、会場はほぼ満席状態が続いています。
これは私の力ではありません。
たくさんの方が協力してくださるからです。本当にありがたいことです。
ノルマがなく(たくさんではないけど)報酬も出て、客席はほぼ満席状態、自分で企画運営するのは大変なことで、出演したいと依頼を頂き待って頂いている方もいます。嬉しいことです。
やはり演奏に集中したいですから。
そして、いいコンサートになりそう、いいパフォーマンスが出来そうと感じた時、出演者自ら積極的に販売協力してくださるようです。
いい演奏になりそうなのに、自分のお客様が誰も来ないなんて、奏者にとっても淋しいことですから。
こういう状態に『胡座』をかかれるのは困りますがね…
ちなみに、ノルマがあると、ノルマ分売った後は、それ以上チケットを売ろうと努力はしません。
「ノルマ分売ったぁ。さぁ、演奏に集中しよう!」って、それで終わりです。