今日ご紹介するお料理は、是非一度試していただきたい大変美味しいアイルランド料理のレシピです。
アイリッシュ風牛肉のギネス煮込み
このお料理は第3回クッキングリッシュの会でもご紹介したものです。
その際、オーブンがなくても作れないものかと質問がありましたので、遅ればせながらその質問の答えとして、オーブンでもコンロでも作れる方法をご紹介したいと思います。
ギネスと言えば、既に日本でも誰もが知っているアイルランドの真っ黒なスタウトビールです。スタウトとは麦芽を焦がしてビールを作る製法で、ホップの香りが強く色も濃いビールです。
昨日のフィッシュアンドチップスもそうでしたが、イギリスやアイルランドでは、こうしてビールを使ったお料理が非常にたくさんあります。
あの苦い味のビールで料理を作ったら、苦過ぎて食べれないのでは...?
と思ってしまいますが、ゆっくり時間をかけて煮込むと、ビールは想像を絶する美味しいソースに生まれ変わります。また硬い輸入肉でも、とろけるほど柔らかく煮込むことが出来るのです。
我が家ではビールを使うキャセロール料理には、だから必ずお値段の安い輸入肉を買って来て使います。今回もコストコで購入し冷凍しておいたアメリカンビーフで作りました。
いつもこのお料理を作る際には、英料理家・ディリアスミスのレシピ本を参考にさせてもらいますが、今回ご紹介するレシピは、アイルランド人の知人から教わったレシピを我が家風にアレンジしたものです。
<材料 4~5人分>
牛脂...2個
煮込み用輸入牛肉(すね肉など)...1.5kg(トリミング前の目方)
たまねぎ、大きめに切る...中2個
小麦粉...大さじ2
ギネス...500ml
人参、皮を剥き7~8mm幅に輪切り...大1本
にんにく、スライス...大2かけ
タイム...3~4本
ローレル...2葉
水...適宜(必要に応じて)
塩こしょう...適宜
味の素...適宜
パセリの葉、みじん切り...適宜
<作り方>
1.まず、肉をトリミングする。脂肪分をこまめに、また惜しみなく取り除く。(1.5kgの肉がトリミング後に約1kgになるのが目安。)5~6cm角に切る。
2.煮込み用の鍋に牛脂1個を熱し1の肉に焼き目をつける。
(オーブン使用で煮込む場合は、コンロ調理の後そのままオーブンに入れられるル・クルーゼなどの鍋を使用する。)
3.焼き目がついた肉を一旦皿に上げる。鍋底にたまった水☆をここでしっかりと切ることがポイント!
☆輸入肉のディメリットは、目方を増やす為に水を注射されていることが多く(合法)、この水が肉に火を入れると大量に沸いてきます。食しても全く害はありませんが、ここでこの水分をしっかり切ることで、灰汁のない綺麗なシチューを煮ることが出来ます。
4.キッチンタオルで軽く鍋の汚れを取り、残りの牛脂を熱したまねぎを炒める。しんなりし、薄っすら色目がつくまで約2~3分炒める。
5.4に肉を戻し小麦を加えて混ぜ合わせる。粉分がまんべんなく肉とたまねぎに混じったら、ギネス、人参、にんにく、ハーブを加える。材料がひたひた浸かるところまで必要に応じ水を足す。
6.5が煮立ったら蓋をし火を弱めて約1時間半から2時間煮込む。途中何度か鍋の中を確認し水分が足りなければ熱湯を注し、常に材料がひたひたに浸かっているようにしながら煮込む。
(オーブン調理をする場合は、5が煮立ったら火を止め蓋をし、予熱を済ませた140度のオーブンに入れて約3時間じっくりと煮込む。途中湯を足す必要はほぼなし。ただしガスオーブンの場合火力が強いので、途中1、2度水分確認をするにこしたことなし。)
7.コンロ、オーブン両調理法とも、調理の終わり30前に塩こしょう、味の素を加えて味を調え、残りの時間を調理する。
8.ビールの苦味が完全に消え、黒い濃厚な煮汁に生まれ変わったシチューを皿に盛り、パセリを載せ、マッシュポテトやパスタ、または白い炊き立てのご飯と一緒にいただく。
オーブン調理で3時間、コンロ調理でも2時間近くかかる料理。なんとなく大変そうに思いますが、我が家では来客のある時はギネス煮込みに限らず、必ずキャセロールディッシュを準備するようにしています。
ゲスト到着前に調理も後片付けも済み、キッチンの散らかりを見せる心配がありません。そして何より、ホステスがホストと一緒にゲストをもてなせることは、ゲストに余計な気を使わせることがないのでより寛いでもらえます。
ところで、キャセロールディッシュの肉の切り方ですが、普通は同じ大きさに切りそろえるのを態と大きさを変えて切ってみると、また別の楽しみ方が出来ます。
小さく切った肉には煮汁がしっかり染み込みますが、反対に大きく切った肉の内側にはまだ肉独特の風味がすこし残っていて、1つの肉で2つの味を楽しむことが出来ます。
今回の私のギネス煮込みでは、デパ地下で見つけたこの時季には珍しいペコロスをたまねぎの代わりに使い(16個)、また調理の終わり30分前の味付けの時に、冷蔵庫に残っていたブラウンマッシュルームも加えました。(8個)
また、いつもこの料理を作る時に参考にさせてもらっている、ディリアスミスのレシピの発想に影響を受け、今回もくるみのピクルスを加えて煮込みました。
くるみのピクルスと言うのは、くるみが殻の中でナッツを形成する前に刈り取り酢漬けにしたものです。写真の通り、これがくるみだとは想像の出来ないまっくろなゴルフボールのようなものです。
半分に割ると中はこんな風になっています。味は小たまねぎのピクルスのような酸っぱ味の強いもので、香りもそっくりです。これを上の手順5で、人参やにんにくなどと一緒に肉に加えて煮込みます。
このイギリスの伝統的なピクルスは、残念ながら日本ではまだ見かけたことがありません。これは数ヶ月前にオーストラリアで購入して来たものです。最近では本家本元のイギリスでも売っていない店があるほど、珍味のピクルスです。