はいっ、マリオ・バーヴァ再びです。これが一番観たかったの、字幕付きで(ここ肝心)。
なんと言っても私の原体験的映画「世にも怪奇な物語」の「悪魔の首飾り」に出て来る少女の元ネタになった子が出て来るって言うんだもの、これを観ない訳には行きません。が、これがまたなかなか観られない映画でねー、やっと今回まともに観られて本当にありがとうございます。
上がバーヴァの「呪いの館」、下がフェリーニの「悪魔の首飾り」です。ただバーヴァのは少女の役ですが、実は男の子が演っていたので、確かに顔をアップで見ると可愛らしいですがちゃんと男の子の顔です。バーヴァ曰く「ちょっとした違和感を出したかった」のだそうで、そこは成功した所かなと思います。また、この子が撮影中はずっと女の子の格好をさせられていたので機嫌が悪かったとの映画の内容の割に実に可愛らしい心和むエピソードでもあります。
この辺の映画にはよくある「滅多に外部から人が訪れない呪われた辺鄙な土地」と言うのがやはりベースにあります。その理由はその辺鄙な村で怪死事件が相次いでおり、そこに良からぬ噂が立つと言う、これまたオーソドックスなパターンですが、やはりそこはマリオ・バーヴァの卓越したセンスと技術によって素晴らしいレベルのゴシックホラーに仕上がっています。
また、他のバーヴァの映画でもですが、本当はあり得ない様なブルーやグリーンのライトを使用しているシーンも多く、非現実で幻想的な雰囲気を盛り上げますが、ダリオ・アルジェント辺りにこのセンスが引き継がれていそうな感じです。
何と言う素晴らしい色彩感覚!最近だとこの様な古色蒼然とした雰囲気を良く出していたのがパスカル・ロジェの「ゴーストランドの惨劇」ですが、なんか違うんだよな。強い色の使い方なのかなあ、ファッションなどでもイタリアは独特の強い色の使い方がある様に思うので、もしかしたらこの鮮やかな差し色の使い方に独特のセンスがあるのかも知れません。それと混ぜてる発色ではなくて重ねてる発色に近い感じ。日本画だと砂絵具を混ぜてしまうと汚い色になるので、一つの色を塗って乾くのを待ってその上から違う色を重ねるんですね、これで非常に日本画的な微妙な発色が可能になるんですが、それに近いものも感じます。
そして、検死のため村を訪れた医師のポールが逃げて行く男を追っていたら何度も同じ部屋をループしてて捕まえたと思ったら自分だった、と言う様なアヴァンギャルドでトリッキーな幻想シーンや、巨大な蜘蛛の巣に引っ掛かる悪夢の様なシーンも見どころ。
これだけの監督が何となくB級扱いされてるのはやはりストーリーの弱さなのかな?絵に圧倒されますが、ストーリーが弱くて余りこっちは印象に残らないと言うか、自分が撮りたい絵が優先と言うか。しかし考えて見たらルチオ・フルチなんかその最たる監督ですし、ダリオ・アルジェントもそっちに近い。これはもうイタリアン・ホラーの伝統なんではとも思うのでした。
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マリオ・バーヴァ監督作品
ルース:ファビエンヌ・ダリ
モニカ・シュフタン:エリカ・ブラン
ポール・エスワイ:ジャコモ・ロッシ・スチュアート
マーサ:フランカ・ドミニシ
カール:ルチアーノ・カテナッチ
グラプス男爵夫人:ジョバンナ・ガレッティ
メリッサ・グラプス:バレリオ・ワレリー
†††1966年 イタリア
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