「保守」の感覚と安倍総理 | 真の国益を実現するブログ

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真の国益を実現するため、外交・国防・憲法・経済・歴史観など
あらゆる面から安倍内閣の政策を厳しく評価し、独自の見解を述べていきます。

ネットで「保守」が人気のようですが、「保守」とは一体何なのでしょうか?

私個人の感覚であり、バークやトクヴィル、オルテガ、西部邁といった保守思想家の思想とは関係ありませんが、私の感覚では以下のようなものが「保守の感覚」です。

・大切なものを、絶対に失いたくない、という感覚
・合理主義ではなく、昔からの伝統を守らなければ、という感覚


です。

例えば、皇統(国体)・日本の伝統文化・日本人としての誇り、こういったものを断固として守らなければならないのではないでしょうか?

政治思想とは異なりますが、一般的な感覚としては、「子供を守りたい、失いたくない」という感覚でしょうか?

大事なことは、国防(軍隊)や外交戦略、インテリジェンス(仮想敵国とのプロパガンダ戦)は、あくまで大目的を達成するための手段だということです。

ものすごく大切な皇統や日本の伝統・文化を守るためには、「戦略的」でなければなりません。例えば、軍隊は大切ですが、軍拡一辺倒でソフト・パワーや外交努力を軽視すれば、周辺国に脅威とみられて軍拡競争・相互不信・疑心暗鬼を招き、最終的には戦争となります。

左派はソフト・パワーや外交ばかり重視し、軍事を軽視する傾向にあります。
右派は軍拡ばかり重視し、ソフト・パワーや外交を軽視する傾向にあります(特にネトウヨ)。

極端に軍事ばかり重視するのも、極端に外交やソフト・パワーに偏るのも、ともに危険を招いて大切なものを守れなくなるので、駄目です。両方とも、「リアリスト」ではありません。

「大切なものを守る、保守のための」リアリズムが必要なのです。

このあたりの、「一番大事な目的」を見失ってはならない・・・ということは、藤井聡氏の「プラグマティズムの作法」という本に詳しいです。

さて、ここまでの前提を置いた上で、安倍総理の以下の発言を吟味しましょう。

「安倍政権においては、目的と手段は峻別をしているわけであります。
 なぜ強い経済を作るかと言えば、日本に生まれたことに喜びを感じる、そして日本人みんなが豊かさを感じ、そして日本に生まれた喜びとともに誇りを持てる国を作る、これが目的であるということでございます。
 日本は、古来から朝早く起きて汗を流して、みんなで一緒に田を耕し、そして水を分かち合いながら、そして秋になれば皇室とともに五穀豊穣をみんなで祈ってきた国であり、誰か病気で困った人がいればお米を持ち寄って助け合ってきた国、それが「瑞穂の国」なんだろうと思います。
 そしてその中において、我々はTPPに参加しますし、まさにグローバル経済・社会の中で勝ち抜いていきたいと思っています。
 グローバル社会・経済というのは、大きな可能性を与えてくれると同時に「荒ぶる魂」もその中に内在するわけでございます。その中において、いかに優れたグローバル経済・社会にしていくかということは、ルール作りなんだろうと思います。そのルール作りにおいても日本は発信していくべきなんだろうと思います。そして、その中において、グローバルな経済・社会の中で埋没してしまうかもしれない、麗しい日本の国柄があります。そして両方に共通するものは、やはり哲学でなければならないんではないかと、このように思うわけでございます。まさに、自由な競争、そして開かれた市場を重視をしながらも、道義を重んじ、真の豊かさを知る、その日本らしい市場主義、そして資本主義のあり方を追求することは、これは世界のルールにもなっていく。我々は自信の持てる哲学とともに、ルールについても世界に向かって発信していくべきであろうと、このように思うわけでございます。
(全文はこちら⇒http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/actions/201304/18zaiseisimon.html)

TPP参加で、安倍総理が「守りたいもの」とは、一体何なのでしょうか?

「瑞穂の国」という犬笛を持ちだせば、みんなだませると思っているのでしょうか?

「助け合い、五穀豊穣を祈ってきた」のと「TPPでルールをつくる」この2つが全く論理的整合性がありません。

TPPで日本的な「助け合い」の価値観をアメリカにも広める・・・というならばわかるのですが・・・。そんなはずはありません。それは、安倍総理が国内で遂行しようとしている政策をみれば、わかります。

世界経済フォーラム年次会議冒頭演説~新しい日本から、新しいビジョン~

 電力市場を、完全に自由化します。2020年、東京でオリンピック選手たちが競い合う頃には、日本の電力市場は、発送電を分離し、発電、小売りとも、完全に競争的な市場になっています。
 日本では、久しく「不可能だ!」と言われてきたことです。
 医療を、産業として育てます。
 日本が最先端を行く再生医療では、細胞を、民間の工場で生み出すことが可能になります。
 日本では、久しく「不可能だ!」と言われてきたことです。
 40年以上続いてきた、コメの減反を廃止します。民間企業が障壁なく農業に参入し、作りたい作物を、需給の人為的コントロール抜きに作れる時代がやってきます。
 日本では、久しく「不可能だ!」と言われてきたことです。
 これらはみな、昨年の秋、現に、決定したことです。
 加えて、昨日の朝私は、日本にも、Mayo Clinicのような、ホールディング・カンパニー型の大規模医療法人ができてしかるべきだから、制度を改めるようにと、追加の指示をしました。
 既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃になるのだと、私は言ってきました。
 春先には、国家戦略特区が動き出します。
 向こう2年間、そこでは、いかなる既得権益といえども、私の「ドリル」から、無傷ではいられません。
 世界のトップクラス入りを望む都市では、容積率規制がなくなります。文字通り、青空だけが限界です。質の高い住宅とビジネスのコンプレックス、ゼロエミッション・タウンが、次々と登場するでしょう。
 TPPは、私の経済政策を支える主柱です。欧州とのEPAも進めます。日本はこれから、グローバルな知の流れ、貿易のフロー、投資の流れに、もっとはるかに、深く組み込まれた経済になります。外国の企業・人が、最も仕事をしやすい国に、日本は変わっていきます。
 日本の資産運用も、大きく変わるでしょう。1兆2000億ドルの運用資産をもつGPIFについては、そのポートフォリオの見直しを始め、フォーワード・ルッキングな改革を行います。成長への投資に、貢献することとなるでしょう。
 法人にかかる税金の体系も、国際相場に照らして競争的なものにしなければなりません。
 法人税率を、今年の4月から、2.4%引き下げます。
 企業がためたキャッシュを設備投資、研究開発、賃金引上げへ振り向かせるため、異次元の税制措置を断行します。
 本年、さらなる法人税改革に着手いたします。

 古い産業に労働者を縛り付けている、雇用市場を改革します。新たな産業には、イノベイティブで、クリエイティブな人材が必要です。古い産業に「社内失業」を温存させていた補助金を、良い人材を求める新たな産業への労働移動の支援へと、転換します。
 少子高齢化が進む日本のどこに、イノベイティブで、クリエイティブな人材がいるのか。そう仰る向きがあるかもしれません。
 アリアナ・ハッフィントンさんは、「リーマン・ブラザーズが、もしリーマン・ブラザーズ&シスターズだったなら、生き残れただろう」と仰いました。
 日本の企業文化は、いまだにピンストライプ、ボタンダウンです。
 いまだに活用されていない資源の最たるもの。それが女性の力ですから、日本は女性に、輝く機会を与える場でなくてはなりません。2020年までに、指導的地位にいる人の3割を、女性にします。
 多くの女性が市場の主人公となるためには、多様な労働環境と、家事の補助、あるいはお年寄りの介護などの分野に外国人のサポートが必要です。
 女性の労働参加率が、男性並みになったら、日本のGDPは16%伸びるという話です。ヒラリー・クリントンさんのお話です。私は大いに勇気づけられました。
 企業のボードメンバーたちに対する、大いなる刺激も必要でしょう。
 24日からの国会に、会社法改正を提案します。これで、社外取締役が増えます。来月中には、機関投資家に、コーポレート・ガバナンスへのより深い参画を容易にするため、スチュワードシップ・コードを策定します。


・電力市場の完全な自由化
・医療を産業化する(おそらく混合診療や自由診療の拡大、株式会社参入のこと)
・既得権益の岩盤を打ち破る、ドリルの刃
・雇用規制の緩和
・GPIFを使ったギャンブル投資
・女性労働力の「活用」

これらは、「カネ儲け」のために自由化を推し進め、弱肉強食の競争が激化するということです。これは、全く日本的な「共同体」「助け合い」とは相いれないものです。

安倍総理の発言は完全に矛盾しています。日本的な価値観を保守するのが目的ではなくて、「自由競争」そのものが目的なのです。だから、TPPなのです。

これ以上、倒錯・矛盾した安倍総理の暴走を許すわけにはいかないと思います。


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