世代間格差の議論には意味がない?!(高齢者≠裕福) | 真の国益を実現するブログ

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 過日、ダイヤモンドオンラインで「年金では暮らせない“下流老人”を苦しめる格差の実態」という記事が配信されました。

次のような内容です。

・OECD加盟34カ国の調査データ(2010年時点)では、日本の高齢者(65歳以上)の貧困率は19.4%。これは米国(19.9%)とほぼ同レベルで、34ヵ国中8番目に高い水準。

・貧困に陥る高齢者は、①保険料を納めてこなかったために、公的年金を受給できない(無年金者)、②厚生年金や共済年金といった「公的年金の二階部分」を受給できない、③保険料納付期間の不足によって基礎年金を満額受給できない、という3つのパターンが考えられる。そして、最低限の生活水準を割り込む場合、生活保護が最後のセーフティネットとして機能しなければならない。

・貧困老人を減らすためには、次の策が有効である。
①高齢者が働くことができる社会の実現、②非正規労働者も厚生年金に加入できるようにしていく(多くの非正規労働者が加入している国民年金の給付額は満額でたった月6万5000円)、③生活保護の見直し(国際的にみて、日本の生活保護の捕捉率(生活保護の基準以下で暮らしている人のうちで、現に生活保護を利用している人の割合)は低いと指摘されている)

異論ありません。的確な分析だと思います。

 実際に、生活保護世帯の増加が報じられていますが、高齢者の増加に歩調を合わせるように増えているのです。
 生活保護率(保護人員の人口千人当たりの比率)の年次推移(年齢階級別)を厚生労働省公表の統計資料から作成しました。
 特に、60歳以上の保護率が他の年齢階級に比べてほぼ2倍となっており、率の上昇率も高いことが分かるかと思います。

 そして、10月7日厚生労働省発表の直近の生活保護被保護者調査(平成 27 年7月分概数)では、高齢者世帯以外は対前年同月比で減少していますが、高齢者世帯はなんと5.7%も増加しています。http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/hihogosya/m2015/dl/07-01.pdf

 上記ダイヤモンドオンラインの記事では、貧困に陥る高齢者のパターンとして、公的年金の「二階部分」を受給できない等が上げられていましたが、筆者は、さらに、公的年金の二階部分の支給を受けている、ここで言う貧困に該当しない高齢者(世帯)についても、厳しい家計状況にあることを以下に記したいと思います。

 老後の一世帯当たりに必要な生活費は、総務省の「家計調査報告」(夫65歳以上、妻60歳以上で構成する夫婦無職世帯平均)によると約26万円だそうです。しかし、このような老齢世帯の厚生年金の支給額は約23万円※で天引きされる住民税や保険料を考慮すると手取り約20万円となります。つまり、毎月6万円の赤字となるのです。
 この赤字を埋めるためには、①家族の支援を受ける、②ずっと働いて稼ぎ続ける、③貯蓄等財産を取り崩す、という方法が考えられます。
価格コム「公的年金の支給額」より

 ここで、それなりに元気であり、70歳までは何らかの収入が得られると仮定します。そこで、70歳からの余命ですが、男性では約10年、女性では約20年はあります(平均年齢とは異なります)。
 ということは、平均をとって、余命15年×12か月×6万円=約1千万円の貯蓄がないことには、普通の生活を送れないという計算になります。

 65歳以降働いて稼ぐことが出来なくなれば、さらに500万円が加算され約1500万円の貯蓄が必要となってきます。

 さらには、「マクロ経済スライド(そのときの社会情勢(現役人口の減少や平均余命の伸び)に合わせて、年金の給付水準を自動的に調整する仕組み)」が導入されましたので、23万円の年金支給額が減額される蓋然性も高く、より厳しくなる可能性もあります。

 ついては、経済活性化のため、高齢者の貯蓄を消費に回してもらおうと税制等を工夫しても、そう簡単にはいかないのです。無論、大企業を定年退職して多額の退職金を受け取った人や株や土地等の運用益が上がるような一部の資産家には、それもあてはまるのでしょうけどね。

 また、いわゆるリフレ派と言われる、インフレ期待を定着させることにより、現在の消費や投資を喚起させるという経済理論を信奉している識者や政治家が一定数いますが、この高齢者の家計状況を鑑みると、むしろ逆なような気もします。なぜならば、年金支給額も、一定インフレ率に応じて増額されるのでしょうけど、将来の物価高騰を考慮した場合、むしろ現在の消費を減らして貯蓄を増やす行動をとる方が自然なような気もします。年金支給額が増額されるなぞとは、誰も考えないでしょうからね。

 年金等における世代間の負担と支給の不公平さから、高齢者を悪者扱いする意見も見受けられますが、筆者は、これには違和感を持っています。
 年金支給が厳しくなった主な原因は、無論、経済成長率の鈍化もありますが、賦課方式をとる我が国の年金制度においては、少子化です次世代からの所得移転(保険料)を給付原資とする賦課方式では、出生率の低い世代の給付額が少なくなることは必然です。

 したがって、政治家は絶対に発言できませんが、子供をあえて生まなかった人に問題があるのです。
 公正、公平性を言うならば、子供なしの人は年金を減額、子供を生み育てた人には、年金を増額するべきなのでしょう。


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