怒りが込み上げてきてつい…
「どうする?乗り込む?」
なんて言ってみたけれど。
どうするのが正解なのかわからない。
やっぱり…すみれ先輩が絡んでいるに違いないと確信した。
もう、何やってんのよ!相葉のバカっ!!
‘バ、バイトかなぁ?ほら、私に内緒でお金貯めてサプライズ~なんて。ハハ’
「無理しないで…」
無理に笑う彼女の顔を見ていたらこっちが辛くなってきた。
何も出来ない自分にも腹が立つ。
と、その時…
♪~♪~♪~♪~
私の携帯が鳴った。
「もしもし?うん。今?今は…ちょっと…」
先生からの電話。
今日はもう、これで何度目の着信だろう?
「温泉にでも入ってから帰ろうかなって…」
『温泉?』
「うん。」
『何か変わったことは?』
「えっ?うん。大丈夫。」
『ならいいけど、カナはすぐムキになるんだから…絶対にカナから手をだすんじゃありませんよ?』
「うん…」
意味がわからなかった。
でも…やっぱり何かがあることだけはわかった。
先生は…何を知っているの?
何を心配しているんだろう?
『迎えに行くから…すぐに帰って来なさい…』
「…」
先生との電話を切った後…私は…
「温泉…やめよっか…?」
って…
‘帰る…’
何かがある。
何がある?
私たちの知らないところで何が起きてるの?
先生は何を知っているの?
駅までの僅かな道程でさえも彼女の足元はふらついている。
せっかくの海が…
「あっ…」
‘えっ…?’
驚いた…
「先生…」
‘あっ…二宮先生だ…’
迎えに行くとは言っていたけど、まさかもうここにいるとは思わなかった。
じゃあ…さっき海から見かけた先生らしき人は…やっぱり先生だった?
駅前のお土産屋さんのオバチャンと仲良く話をしている先生。
何かが起こることを察知して、まさか今日はずっとこっちにいたの?
「何で…」
『あぁ、おまえらか。』
‘先生、何でここに?もしかして先生も海ですか?’
『ん?あぁ、ちょっと知り合いの家があるもんで。フフ』
‘すごい偶然ですね♪’
『おまえらは?夏休みに海ですか?』
‘うん。たまにはいいでしょう?ちゃんと塾にも行っているし、勉強のことも忘れてないから。’
『勉強ねぇ…フフ』
何なの?
イラッとした。
「あの…先生は…もしかして車ですか?」
『ん?もちろん車ですけど?それがどうかしました?』
「あの…すみませんが私たちを乗せてもらえませんか?」
‘えっ?カナちゃん、それはさすがに悪いよぉ’
教師と生徒のよそよそしい会話。
あくまでも教師と生徒として…どうにか先生の車に自然に乗り込めるように演技をした私。
「あっ!ほら、さっき、変な人たちにナンパされてね?しつこくされちゃって…だから…その…」
だって先生が迎えに行くって言ったんじゃん。
『いいですよ。どうせ帰るとこなんで。フフ』
‘ホント?やったぁ♪’
「あ、ありがとうございます…」
だから、先生が迎えに行くって言ったんじゃん。
何で私があたふたしなきゃなんないのよ
私は無意識に車の助手席に乗った。
彼女は後ろで窓の外を眺めながら少し眠そうな顔をしている。
だから私はジロッと先生を睨んで…
「何で先生はあそこにいたんですか…?」
小さな声で呟いたんだ…