2004年2月愛媛県今治市で当時11歳の男児が放課後の校庭で蹴ったボールが門扉を越えて道路に転がり,それを避けようとしたバイクを運転していた80代男性が転倒して骨折し入院1年4か月後に肺炎で死亡した事案で
最高裁は
男児の親に対して遺族に1100万円の賠償を命じていた2審判決を破棄して原告の請求を棄却する判決を下しました(4月10日付け毎日新聞)
民法714条は
前二条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合
その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は
その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う
としています
「前二条」とは
712条・・・未成年者
713条・・・精神障害者
に関する規定です
今回の事案では
未成年者である11歳男児がボールを道路まで蹴り出したことに過失を認め
地裁・高裁は
714条に基づいて親に賠償責任を認めたものと思われます
これまで
714条で賠償訴訟をされた被告に付くと
責任を否定するには高いハードルがありました
714条但書には
ただし,監督義務者がその義務を怠らなかったとき
又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは
この限りでない
として
親が責任を負わない場合を規定しているのですが
この但書で責任を免れるのは
極めて大変でした
子供が起こした自転車同士の事故の事案で
私が子供の親の代理人になった時も
子供=責任無能力者 ∴親に責任
という単純な図式で賠償責任が認められました
※登下校中の事故で学校が賠償保険に入っていたので和解して保険から支払ったのですが
今回の最高裁判決
内容をまだ精査していませんが
これまでの
責任無能力者→監督義務者の責任
という単純な図式から少し脱却し
監督義務者が責任を負わない範囲を広げた(というか少し明確にした)ものと言えるでしょう
今回の判決についてテレビで色々と論評されていますが
結構間違った論評があります
例えば
民法714条は未成年者の行為が違法でない場合(ex.不可抗力の事故)にまで親の責任が認められるものではないですし
未成年者で責任能力が認められる位の年齢の場合でも
親の監督義務違反と結果との間に因果関係が認められる場合には民法714条ではなく709条の一般不法行為で責任が認められます
が
これらの点について間違ったコメントをしているコメンテーターがいます
それにしても
今回の事件
保険の関係なのか学校に対する訴えは無かったようで
これで賠償は全否定になってしまいました
それと
被害者が転倒して骨折入院後1年4か月も経過して死亡した事案で死亡に対する損害まで賠償させていたと思われることも
何となく不思議です
被害者保護のサービス判決だった?
とすれば
被害者の顔が見えない最高裁判決で賠償が全否定されてしまったのは可哀想な気がするのですが
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