2月29日の会から、新型コロナウィルスの拡散状況を鑑み開催を自粛してきましたが、2020年3月28日の会から正式に、四谷デッサン会は無期限の休会扱いとさせていただきます。
2009年に開会してから足掛け11年、東日本大震災や大型台風直撃など、さまざまな危機に直面してきましたが、はじめてこのような判断をすることになりました。
ご利用の皆様にはご迷惑をお掛けしますが、何とぞご理解のほど、よろしくお願い致します。
苦渋の決断をした主催者の立場から少し書かせていただこうと思います。
私が、出身のセツ・モードセミナー在学後に会を始めたのは、同校の規模縮小が理由でした。同校を去ること、それは私にとっては絵を描く仲間との決別を意味しました。
私にとって絵を描く仲間との時間は、学校生活を経て欠かせぬものとなっており、それは私同様、絵を描く人の多くは心のどこかに闇を抱えており、それゆえに他人に対して一定の距離感を持ち、人の心に踏みいることが少ない人物が多いところに、一緒にいて心地良さを感じていたからだろうと思います。
そういう仲間を失うことが怖かったということに、私が四谷デッサン会を始め、10年も継続してきた大きな理由があります。そんな中今回、会をやすむことを決断した際、決定に失望してこれを機に会で絵を描くことを辞めてしまう人が現れるのでは無いか、という恐怖感もありました。
それでも休会を決めたのは、今回拡散されている病気は、自分ですら掛かっていることがわからないことが多く、無自覚で他人に移してしまい、さらにマスク着用や消毒を徹底しようとも、感染が避けられないためです。いくら他人に対しての気遣いができる人物であろうと、病気を移してしまうのです。
自由に参加でき、気軽に参加できる形をモットーに運営してきた我が会のスタイルを鑑みると、罹患者が現れることは限りなく会の終焉に近づくことを意味することになります。それは先述の想いから会を営む私には辛過ぎることですし、もし犯人探しでも行われてしまったら、せっかく絵描き同士で繋がった縁がズタズタに裂かれてしまうでしょう。だから私は、最悪のケースを想定し、会をやすむことを決めました。
さいわいにも、絵はどこでもひとりでも描けます。休会の間も皆さん、何かを自宅で描くのでしょう。でもやっぱり、みんなで絵を描くと楽しいですし、他人と描くと互いの刺激により上達を促す効果もあるはずです。だからこそ、一時期の不自由を伴ってでも、みんなで描く場を守ることを選択しました。
絵というものは、描く喜びを生むだけでなく、そこから様々な人間関係を生み出す素晴らしいものであると、私は確信しています。描くだけではなく、その絵を見せることでもひとつの文化が生まれ、輪が広がります。私はこの休会の間、喜びをともにできる仲間がいたことを改めて実感するでしょう。
どうか皆さん、休会は未来にむけてのものだと思いご理解ください。そしてまたみんなで絵を描くために、各自無理をしないことをお願いしたい。繰り返しますが、この病気は無自覚のうちに自分を介して人に移してしまいます。絵を描く心の優しい皆さんとならこの事実、分かち合えると、信じています。
皆さんと同じとき、同じ場所で絵を描ける日を心待ちにしています。
四谷デッサン会主宰門脇大