ひと昔前のことになりますが、
『ＣＢＳイブニングニュース』『４８アワーズ』『６０ミニッツ』といった、
アメリカのニュース番組を好んで見ていた時期がありました。
ＣＢＳが世界に誇るアンカーマン「ダン・ラザー」が活躍していた頃です。
近代、アメリカが抱える肥満問題は深刻で
健康被害はもとより、「太っている人は出世ができない」という、人生を左右する問題へと進んでいます。
そのせいか、肥満とダイエットに関するニュースがかなり多く、
その類のニュースを放送しない日はないほどでした。
そんな中で見た、あまりにも悲しいダイエットに纏わる話です。
アメリカの、ある片田舎に「美しい」と大評判の女性がいました。
あまりの美貌に「彼女を知らない人はいない」と言われたほどだったそうです。
もちろんスタイルも抜群で、すれ違う人は誰でも皆立ち止まって見つめたとのこと。
そんな彼女が夢見たのは、当時爆発的な人気だった「スーパーモデル」
そして彼女は大きな夢を抱いてニューヨークへ。
所が、色々なモデル事務所の面接を受けたものの、そこで待っていたのは、
「ここへ何をしにきたの？」
「そんなデブでモデルになれるはずがないだろう」
「田舎者は田舎でコーンでも作ってろ」
という屈辱的な言葉だけ。
それでも夢を諦められない彼女はダイエットして痩せる事を決意します。
それまでダイエットは無縁だった生活から一変して、
ひたすらカロリーと戦う毎日へ・・・・
どうにか１０キロ痩せることに成功した彼女は再びモデル事務所のドアをノックしました。
でも帰ってきた言葉は、
「まだ太ってる！」
「どこが痩せたんだ？！」
「まだまだ太りすぎ！！」
「使い物にならない！」
という罵声だけでした。
「今度ダメだったらもう後がない」
そう思いつめた彼女は、カロリーのある物は殆ど何も口にしない、
もはや「絶食」に近いダイエットをしてしまいます。
その結果身心を病んでしまった彼女は、夢も希望も全てを失い
逃げるように故郷へ戻ります。
そこで両親が見たのは、
髪も歯も抜け落ち、肌はシワくちゃのボロボロ
やつれ果ててミイラの様になった娘の姿でした。
その姿を見た母親は気が狂ったように泣きました。
「あんなに綺麗な子だったのに！」
「あんなに健康で、いつも元気で、輝く様な笑顔だったのに！」
「この子が一体何をしたって言うの？！」
「この子のどこが悪かったって言うの？！」
「私の娘を返して！！」
両親の必死の介護にもかかわらず、
彼女が再び輝く様な笑顔を見せる事は、もう二度とありませんでした。
わずか２２才という若さで、自ら命を絶ったのです。
夢を抱くことは決していけない事でも、悪い事でもありません。
一度きりの人生なのだから大きな夢に向かって突き進む事は素晴らしいことだと思います。
でも、もし彼女の夢が「スーパーモデル」でなかったら、
もし彼女がニューヨークに行かなかったら、
普通の会社に就職して、恋をして、素敵な男性と結ばれて
可愛い子供に囲まれて幸せな人生を送っていたのかもしれない。
どうしてもそんな風に考えずにはいられません。
「普通に生きる」ってつまらない事なのでしょうか。
「普通に生きて平凡な人生を送る」ってそんなにダメな事なのでしょうか。
「普通」「平凡」こそ、人にとって一番の幸せなのかもしれないのに。
普通に生きたくても生きられない私は、この時から更にそう思う様になりました。
