クズとブスとゲス/わたしの坊や/白い光の闇/黒い雌鶏/人質交換 感想と東京フィルメックス受賞予想 | 映画時光 eigajikou

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世界の色々な国の映画を観るのがライフワーク。
がんサバイバー。
浜松シネマイーラの会報にイラスト&コラム連載中。
今は主にTwitterとFilmarksに投稿しています(eigajikou)

第16回東京フィルメックス 2015
コンペ作品と受賞予想




『白い光の闇』

2015年製作 スリランカ映画
ヴィムクティ・ジャヤスンダラ監督

若い仏教僧、極端な行動に走る学生、
臓器売買のビジネスを行う男、
そして昼と夜の顔を持つ外科医らを主人公に、
複数の独立した物語から織り成される謎めいた作品。
そこには現代社会の中での生と死についての
ヴィムクティ・ジャヤスンダラの考察が反映されている。

自然を映すシーンは美しく合成は一切使わず
撮りたい情景になるまでひたすら待ったそう。
死に囚われて僧になった青年、
臓器売買をする男、
許し難い医者などが登場。ス
リランカの仏教と哲学を伝える作品とのこと。
難しかった(^o^;)...

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サマン・アルヴィティガラ氏(編集)
ラル・ハリンドラナス氏(美術)








『黒い雌鶏』

2015年製作
ネパール、フランス、ドイツ合作映画

ミン・バハドゥール・バム監督の長編デビュー作。
2001年毛沢東主義派との内戦が休戦中の
ネパール北部の小さな村。
不可触民の主人公の少年は
高カーストの友人と
いなくなった自分の大切な雌鶏を
探しに村の外に出かける。
そこで観たのは激しい戦闘。
カースト、宗教、内戦を織り込んだ力作。

↓The Black Hen トレーラー


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中央がミン・バハドゥール・バム監督






『わたしの坊や』

2015年製作 カザフスタン映画
ジャンナ・イサバエヴァ監督

余命僅かな少年は
酩酊運転のパトカーで母を轢き殺した
警官たちに復讐。
干上がったアラル海の強風、
放置された廃船等荒涼とした風景と
母子が歩く赤い花の草原との対比が鮮烈。
どのシーンもポスターに出来るような
監督拘りの映像美が印象深い。
アラル海だった場所にソ連時代からある廃船、
荒廃した街、
見捨てられた主人公。
みんな遺棄されたような存在。
そんな苛酷な環境での復讐を問う重い作品。

Simplog
ジャンナ・イサバエヴァ監督




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奥田庸介監督


『クズとブスとゲス』

2015年製作 日本映画
奥田庸介監督

女を騙して食い物にする主人公、
麻薬の密売人、
ダメンズウォカーな女、
風俗業を営む金に憑りつかれたヤクザなど、
クセのありすぎな登場人物たちの群像劇。
シルベスタ・スタローン隊長を敬愛する監督が
どうしても自分のオリジナル脚本、監督で撮りたくて
クラウドファウンディングで自主制作。
バイオレンス映画に体張って主演兼。
お行儀良く生温い商業邦画界に挑戦状な熱い映画。






『人質交換』
2015年製作 フィリピン映画

時系列や場面が入り組む97分間を
空き倉庫にセットを組みワンショットで撮影。
セットは3日で作り、
撮影は1日で8テイク撮ったとのこと。
マルコス独裁政権末期の2歳の時に
監督自身が誘拐された事件を多面的に描く。
この事件は子ども(監督!)が無事戻り、
警察と軍の成功譚に利用された。
しかし、当時反政府的な言動をしたとされる人への
警察と軍による拷問が行われ、行方不明者が多数出ていた。
その現実も描いている。
監督が抱えてきたものの重さはいかばかりか。
139分をワンショットで撮り切った
ドイツ映画『ヴィクトリア』も凄い映画だったが、
負の歴史に対する批評性を込めた
『人質交換』も驚きの作品。


コンペ作品残りの紹介はこちら↓

コインロッカーの女/タルロ/消失点/酔・生夢死←クリック

東京フィルメックスには、
今年初参加。
昨日でコンペティションの10作品はコンプしました。
今日授賞式があります。
受賞予想は全く自信がありませんが、
一応書いておきますネ。

最優秀作品賞 『黒い雌鶏』

審査員特別賞 『わたしの坊や』

観客賞 『コインロッカーの女』

学生審査員賞 『べヒモス』

う~ん、上記の作品が
どれかの賞を受賞しそうな気がするという感じで、
後、『酔生夢死』『人質交換』『タルロ』
も入りそうな気もするのだけど...


特別招待作品、
特集上映作品は
まだこれから観る作品も多く
今後まとめて書く予定です。



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特集上映作品『非情城市』の後
Q&Aに登壇したホウ・シャオシェン監督