「じゃあ、ミノ。悪いけど、また後からね。」
「うう……ヒョ~~ン。」
──正門から入って、こちらに曲がると理工学部の校舎、っていう分かれ道で一旦チャンミナとはお別れ。
チャンミナの手を握って離そうとしないミノに…まるで母親と子供だなぁ、って微笑ましく思った。
「……すぐ会えるから、な?」
ミノの頭をポンポンって撫でるチャンミナ…
……いいなぁ、あれ、…今度俺もやってもらお。なんて、ぼーっとしてたら、目の前にチャンミナの顔が。
「…ぅわぁ!…びっくりした…。」
「もう…ユノ。寝不足ですか?…あの、…お願いしますね。ミノのこと。」
思わず自分から顔を近づけちゃったのが急に恥ずかしくなったらしいチャンミナが頬を赤く染めてスッと目線をそらした。
……あーーー、触りたい!
その熟れたようなツヤツヤほっぺに指を這わして…はにかんでキュッとなった唇に……。
でも、弟の前だし。触れるの禁止だし。
「…んあぁ、、だ、だいじょうぶ!」
動揺しちゃって上手く喋れない。
……こんなんで俺、1ヶ月とか、…もつの?
……じゃあ、終わったら連絡しますね、って名残惜しそうに背中を向けて歩き出す。
途中、何度か振り返り…照れくさそうに笑ったり、…早く行けよ、っていいたげに手を左右に振りながら頬を膨らましたり……おまえの視線はずっと俺で。
……昨日は会えなかったから、…あの熱いキスでとろけそうになった夜以来で…
恥ずかしさと気持ちよさの狭間に揺れる瞳が…しなる背中から腰へのライン、熱い吐息……。
何もかも夢中になった…どうしても欲しいと思った。
……チャンミナの自信、ってなに?
こんなにも…こんなにも、チャンミナだけが欲しいのに。
───「……ユノさん!」
「…えっ?」……あ、ミノがいたんだった!
慌ててミノの方を振り返る。
そこにいたのは、無邪気に人懐っこい笑顔の弟ではなく、苛々と眉間にシワを寄せ、冷たく思う程に真顔の男だった。
「……ミノ?」
「ユノさん…。覚えておいて。…僕はあなたが嫌いです。」
「はっ?…ミノ?なに言ってんの?」
「馴れ馴れしく呼ばないでください。ヒョンの手前、あなたに案内はしてもらいますが、必要以上の会話はしたくありませんから。」
はぁ?……二重人格かよ、こいつ!
睨むように俺を見据えるミノはただの男で、あの弾けるような笑顔も、甘えるような仕草も嘘のようにどこにも見あたらなかった。