Strawberry Candle(25) | えりんぎのブログ





~チャンミンside~













────額に、目蓋に、・・そして頬に。



何度も何度も柔らかい感触。
焦れったいくらい繰り返される所作に。




「ぅん、・・ユ、ノ、・・スコーン、」



このままではおかしくなりそうで。



「ん?・・さっき、・・ドアの前で食ってた、・・だろ?」



「ちがっ、・・未遂、・・っ。///」




言葉はなんの意味も持たず、ただお互いの熱だけを感じはじめた頃、





─────コンコン、と。



ビクッと肩が跳ねてすごい勢いで心臓が鳴りだした。



バッと身体を引いたのに、それを許さず離れようとしないユノ。





「───ユンホ坊ちゃん?チャンミンも居るんでしょ?・・忘れもんを持ってきてあげたんだけど?」


────スヒさん?









「せっかくの焼きたてをまだひとつも食べてないじゃないか!それに・・忘れないようにって、何度も言ったのに。」



ブチブチ言いながら部屋の奥まで入ってきたスヒさんが、ドンッとサイドテーブルに置いた籐のカゴ。
そこにはスコーンに塗るためのイチゴジャムやクリームチーズが入っていた。




「ああ、・・忘れてました!///ありがとうございます!」



他にも小瓶がいくつか入っていて、物色してる僕の隣でかなり仏頂面のユノ。




「おや?お邪魔だったかい?ユンホ坊ちゃん。」



気持ち悪いくらいニヤニヤしてるスヒさんだけど、赤ん坊の頃からお世話になってるこの人にはさすがのユノも頭があがらないようだった。



「・・・分かったから、もう行けよ。」ってボソッと言うだけ。





スヒさんときたら、───ふふん、っと鼻をならして、

「私はねぇ、人の恋路を邪魔するのが大好きなんだよ!」とか。




「こ、こ、こいじっっ?/////」



焦って挙動不審な僕にケラケラ笑うスヒさん。


「なんだい?違うのかい?」



また、にた~~っと僕を覗きこんできて、───ああ、・・遊ばれてるよ。




さっきまでの行為で、篭もった熱が発散出来ずクラクラしてる僕の肩をグッと引き寄せ。




「ふん。───違わねぇよ。」なんて事も無げに言っちゃって。




カアァァァァ・・・・////////////!!




さらにゲラゲラ笑うスヒさんと。
逃げようとジタバタする僕を今度は両手で囲い込むユノと。



この2人は僕をどうしたいんだ?//////





ふとテーブル上の缶コーヒーの空き缶に視線を向けたスヒさん。
そこには以前挿してあったホタルブクロではなく、中庭の藤棚からお願いして貰ってきた藤の花が生けてあった。




「───きれいだねぇ。あんたがやったんだろ?チャンミン。」



「はぁ、・・まぁ、///。」


ホタルブクロが枯れちゃって、急に寂しくなったのが我慢できず、つい庭からいろいろ貰ってきては生けるようになってしまった。




「そういえば、・・聞いたかい?」




「いいだろ?もう!///」


急にカァと顔を赤くし大声をあげたユノに、僕はもう興味しかない。



「なんですか?」って言いながら、スヒさんを止めようとしたユノの手の甲をキュッとつねった。



「痛ってぇ!」



またケラケラ笑ったスヒさんの言うことには、───。





出張の日の朝、あまりに冷たいユノの態度にスヒさんが言った言葉。



「いつまでも枯れない花なんてないんですよ!───ユンホ坊ちゃん?」







植物図鑑を見ながら、──すごく思い入れのある花なんです!って確かに言った。
でもそのまま忘れていたのに。
さすがに屋敷の庭にはない花を。
探してくれたんだね。


最初は人を使って採ってきたその花を、素直にプレゼントするにはひねくれ者のユノ。




「突然、枯れたって言ってくるから何のことかと思ったよ、この坊ちゃんは。それで言ってやった、──自業自得ですよ、ってね。」


ニヤッ、と意地悪な笑み。
隣の人は諦めたのか、それでも拗ねたようにそっぽを向いていた。




「で、知らんぷりしてたら、自分で探してきたよ。何度も頼むのは恥ずかしかったんだろ?でもチャンミンには見せてやりたかったんだよね。」




「ふふ、可愛いところもあるじゃないか?ねぇ、チャンミン?」




───え?///


突然振られても、・・////
何て言っていいか分からず、さっきつねってしまったユノの手をスリスリとさすってみた。




その手をギュッと掴まれて、────






「───枯れる前に素直になれ、って事だろ?分かってる、・・ってか、思いだした。」 




「俺は、後悔するような生き方はしない、って、─────。」




ユノの長い指が絡まった僕の手にそっとキスをおとす。




「────そう誓ったんだ。」







目の前ではスヒさんが、困ったようにため息をついて。
それは嬉しそうにも見えたし、・・・悲しそうにも見えた。