Strawberry Candle(26) | えりんぎのブログ






~チャンミンside~


















───────抱きたい。






そう言ってきたのは、久しぶりに親子で夕食をとって、またユノが怒って飛び出てきた日の夜遅くだった。





相変わらず親子の仲は険悪なのか、僕はあれから超多忙のおじさんとは会うこともなかったけど。






眉間にしわを寄せていかにも機嫌悪そうな人。



突然部屋に来たくせに、そんな顔してくるなよ、と思うけど。




「今夜は親子喧嘩の腹いせで夜遊びに行かないんですね?」


意地悪く言ってやったら、──ふん、と鼻をならし勝手に部屋の奥へ進む。


ドカッとソファへもたれてそのまま一切喋らなくなった。




こういう時のユノは放っておくのが一番だから、・・僕も何も言わず途中やりのレポートに目を向ける。




どれだけたったのだろう?
気づいたら隣に立つユノ。
そのユノからは何の感情も読みとれなかった。




「・・・珈琲でも淹れましょうか?」



「それとも別のが欲しい?」




珈琲以外ならスヒさんにお願いしに行かなきゃ、と思っていたところで、・・・






「─────おまえが欲しいよ。チャンミン。」





えっ?///って振り向くよりも先にふわりと後ろから抱きしめられて。




「な、────抱きたい。」



耳元で吐息のように囁かれた。


   




「ぼ、僕のこと、・・お、玩具っていいましたよね?」



「は?いつの話だよ。」



「ど、どうせ身体だけの関係だから、一緒に、・・気持ちよくなろーぜ、とかも言った。」



「はぁ?何言ってんの?」



「あと、・・あとは、・・。///」





─────はぁ、・・と大きなため息。



「おちつけ?チャンミナ、・・。」



後ろから抱きしめたまま、回した手でポンポンと僕の肩をたたく。





「最初は親父が勝手に引き取ってきた奴、としか見てなかった。
関わるつもりなんてまったくなかった。」


「───それがなに?今は・・こんなに欲しいんだよ、おまえが。」



 

───毎晩のように遊び歩いては香水の匂いをプンプンさせて帰ってきてたから、よほど遊び慣れてるんだと思っていたのに。


僕にはほとんど手を出してこないユノ。
体温を分け合うように抱き合っては唇を合わせるだけのキス。
深く唇を重ねてもそれ以上に侵入してくることはなくて。



───僕が男だから?



実はひそかに落ちこむ僕がいたなんて絶対知られたくないけど。


そんな思いとは裏腹にやっぱり怖いと尻込みしてる僕もいて、この関係性が心地良いと最近では満足していたのに。




「────駄目?」




僕の顎をくいっと引いて真剣な顔で覗きこんでくる。




「あのね、───ユノ?
実は僕、ロマンチストなんだ。」



「え?・・まぁ、・・どうみてもそうだろ?」



当然、って顔してくるから僕の方が驚いた。
いつも見た目を裏切ってる、って言われるのに。



「素直だし、言うことがいちいちキレイだし。花が可哀相とか普通言わねぇし。・・花言葉に詳しいってだけでダメだろ、それ。」





カァァッ///////、────と。
それは愛の告白のように甘く響いて。



恥ずかしくてまともにユノを見てられない僕を不思議そうにしてる。





やっぱり無口な人はこれだから困る。


────言うことがいちいち爆弾だ。





「で、・・だから、・・今日は嫌、です。」




意味分かんない、って顔で眉間に深く皺が寄った。




「ユノも男は初めてかもしれないけど、・・僕も、・・そうで。///──ほら?その顔!・・ユノ、怒ってる。嫌なことがあって、・・それをぶつけるように抱き合うのは嫌です。」




「───そろそろ我慢の限界なのに?」




こめかみがピクピクしだした人に、

───だから、・・ですよ?とにっこり笑った。





ふわっと腕を伸ばして、今度は僕がユノを覆うように抱きしめる。




「───でも、そんなに辛いことがあったのなら、・・今日は抱きしめて寝てあげます。」



僕の胸元に無理やり閉じこめられたユノが、ふっと笑った気配がして、───





「・・・今日はそれで我慢するか。」とポツリ。




一度身体を離してゆっくりと視線を重ねる。
キュッと結んだ口元はけして僕に弱みを漏らさないけど。
どうしようもなく辛い時の心の拠り所になりたいと、いつも願っているから。




だからユノ、────



「・・・いつも見てます。大好き。」



これだけは覚えておいて?






クチュ、っとキスをおとしたら、・・ふにゃ、っと複雑な表情。
こんな風にどんどん表情管理が出来なくなって、思わずって感じのヘンテコな顔を見れるのが嬉しい。



今度はその頬をペロッと舐めてみた。



「っ!///このっ!」



いいかげん調子づいた僕を責めるように捕まえて、キッと睨んでくるけど全然恐くない。



「────俺は、愛してる。」




あの罰を与えるようなキス以来、その日のキスはユノの熱く柔らかい舌を与えられて、蕩けるような気分のまま朝まで抱き合って眠った。