Strawberry Candle(40) | えりんぎのブログ





~チャンミンside~


















「ユ、・・ユンホ。・・なに馬鹿げたことを、・・。」





心なしか震える、低い声。
驚きと動揺、・・それがみるみる怒りの表情に変わっていく。




「・・おまえ、それは正気で言っているのか?」




「勿論です。」
   


一切の迷いない即答に。
また呼吸さえ出来ないくらいの張りつめた静寂。



真っ直ぐに父親を見据える愛おしい人を。
僕はあとどれくらいこの人に尽くしたらこれほどの愛に応えられるのか、と。
そう思うほどの覚悟を見せられて、ただ胸がいっぱいで。




「────チャンミナ、泣くなよ?」




ユノの親指がふいに僕の頬に触れて、──初めて自分が泣いてることに気づいた。





「あ、・・ごめ、・・なさい。」




この緊迫した空気を感じさせないくらいの優しい眼差し。
その瞳の色にまた涙が溢れる。




目の前から痛いほどの視線を感じるのに、───キュッと唇を噛んでみたけど、それは止まることを忘れた泉のように・・・





「───こんな事、・・私が、許すと思ったのか?」




静かに、諭すように僕とユノを交互に見ながらポツリと。




「父さん、・・僕が選んだ途は、あなたが自らの意志で選ばなかった途でもあります。
僕の気持ちは、きっと貴方しか分からない、────違いますか?」




ピクッと揺れた肩。
指先におちた視線。
その人の動揺が痛いほど伝わった。




────息子が自分の“幼いくらいの恋”を知っていた。




そして敢えて選んだ、・・遥か昔自らが選択肢にすら挙げなかった途を。





「・・ユンホ・・、あ、ああ、・・そうだ、・・自ら選んだ、そうするしかなかった。」







力なく落ちた肩が酷く寂しげで、先ほどまでの威厳はなりを潜め、───この人もずっと苦しんでいたのだと思った。


僕に惜しみない愛情を注いでくれた父さんと、───容易に袂を分かち、安穏とした人生を送っていたわけではないと。




なぜかそれに嫌悪感は感じず、しみこむように2人の想いが広がる。
僕もそう、・・・もし側に居ることが叶わなくなろうとも、きっと心までは無理だ。
一生心だけはユノから離れられないと思うから。





「チャンミン。・・君には何不自由ない生活をさせたかった。
満足いくまで勉学に励み、やりがいのある仕事に就き、・・・いずれ幸せな家庭を築いて欲しかった。」



「自己満足だと言われようが、・・それでも。
・・・君の選ぼうとしてる未来は、きっと、・・辛く険しい。」





ユノに似た切れ長の瞳が切なそうに揺れる。
叶わなかった想い人の幸せを願う気持ち。
それを僕に、・・と言うなら。





「おじさん、・・・ユノが側に居ないって事が、僕にとっては何よりも不自由なんです。」





なぜか僕は微笑んでいた。
何の迷いもなく口についた言葉が嬉しかった。





「・・・ストロベリーキャンドルの種が寒さにとても弱いことを知っていますか?
秋に採れた種をそのまま植えると冬を越せないのも多いんです。」



「それを嫌って春に植える春まきをする場合もあるのですが、・・でもね、春まきではあの真っ赤な花は咲かないんです。」



「寒さに耐えたストロベリーキャンドルだけが可憐な花を咲かせることができるんです、・・おじさん。
僕も、・・そうありたいと、・・そしてそれは、父さんから貴方へのメッセージでもあったと、・・思うんです。」





───きっと長い長い間、・・口にすることなく心の奥底に秘めた想い。
組んだ両手に額を預け頭垂れるその人はとても小さく見えて、ユノがいなければそっと抱きしめていたかもしれない。




ふと顔をあげ、「・・それで、ボストンなのか?」とユノに尋ねる。
ふっ、と口角をあげただけのユノ。



「交換留学から帰って、大学で1年。
入社しても1年は本社で研修期間だ。
その後ボストン支社へ呼び寄せるつもりか?」




「勿論です。社長。」




ニッと不敵な笑い。
いつものユノだ。



「ボストンでいずれグリーンカードを取得するつもりです。」




「ボストンのあるマサチューセッツ州はアメリカで最初に同性婚が認められた州ですから。」





えっ?///────あまりの驚きに目をまん丸くさせてる僕を横目に、どうだ、とばかり自慢げに笑う。




「どうやらチャンミンの同意は得られてないようだな。」と呆れたように言われ、ちょっと焦ったユノがおかしかった。




「・・チャンミナ。大切な話がある。」なんて急にかしこまって僕に向きあうから、早々におじさんに止められて。





「そっちの話は今すぐには結論は出せない!
それよりも環境エネルギー事業とボストン支社の協力者について詳しく聞きたい。
こちらは早急に会議にかける必要があるからな。」



そう言って、ユノは深夜まで拘束され、僕は解放された。









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いつも、いいね!をありがとうございます♪


どうなるんだろ?と思われていたと思いますが、こうなりましたσ(^_^;
私の精一杯です^^;


2人が離れることは有り得ないし、何年もたってから再会、というのも安易過ぎて。
「まるで見当違い」と本人も言ってるようにまだまだ問題は山積みですが。。。


いろいろと矛盾を感じられたらすみません。
なんたってパラレルのFFですから^^;