エスプレッソマシンレビュー第3回[デバイスタイル ブルーノパッソPD-1] | エスプレッソ研究

エスプレッソマシンレビュー第3回[デバイスタイル ブルーノパッソPD-1]


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デバイスタイル(deviceSTYLE)社のブルーノパッソ(Brunopasso)PD-1。

一般用カフェポッド専用マシンとしてはダントツの人気を誇る機種。

リーズナブルなプライスながら、「ダブルボイラー」「3方向バルブ」「軟水化レジンフィルター」「ダブルサーモメーター」を装備する。

「ダブルボイラー」は抽出とスチーミングの同時進行を可能にする機能。

「3方向バルブ」は素早い連続抽出を可能にする機能。

「軟水化レジンフィルター」はマシン内部への水のミネラル分の沈着を低減させる機能。

「ダブルサーモメーター」は湯温が適温かどうかを可視化する機能である。


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側面観。

美しいデザインは石橋忠人によるもの。

石橋忠人はケンウッドやエレコムの製品デザインも手掛けるプロダクトデザイナー。

木製ハンドルを動かす事により、ポッドホルダーを上下させる。

本格的なメカニズムを収めるため重量は7.7kgと、家庭用としてはかなり重い部類に入る。


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背面観。


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上から。

後方にあるグレーのボタンを押すとリッドが開き、タンクにアクセスできる。


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軟水化レジンフィルターを備える水タンク。

レジンフィルターはおよそ4ヶ月ごとの交換が推奨されている。

レジンフィルター交換時などには、さらにディスケーリングを行うよう推奨されている。

これはマシン水路内に沈着したミネラル分等(スケール)を除去することで、具体的には1.5Lの水にクエン酸大さじ2杯を溶かした水を抽出とスチーム両方の水路に数回通すようにする。

ディスケーリング後は真水を通してクエン酸成分を洗浄するのを忘れずに。

タンクは上に引っ張ると外れる。容量は1.5Lある。


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この間にカフェポッドを挟む。


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ポッドトレイセット(画像下の円盤状のパーツ)は乗せているだけなので、簡単に外すことができる。


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ポッドトレイセット上面。


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ポッドトレイセット下面。

ポッドトレイセットは上部のポッドフィルターと下部のポッドトレイに分解でき、簡単に清掃できる。


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スチームワンド(スチームアウターノズル装備)。

スチームアウターノズルは引っ張れば外れるので、使うとしても清掃は簡単に行える。

アウターノズルの効果は、デロンギBAR14のベル型スチームノズルのようにミルクの攪拌を起こし易くする事だと考えられる。アウターノズルは上部に2つの空気穴を備える。


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スチームアウターノズルを撤去した状態。

スチーミングに慣れたオペレーターなら外して使っても何ら問題は無い。

5℃→65℃試験は47秒だった(スチームアウターノズルを付けた状態)。BAR14が1分10秒だったのを考えると、なかなか強力なスチームと言える。

また、スチーミング前に150ccだった水の量は、スチーミング後には190ccになっていた。BAR14では210ccだった事を考えると、それだけスチームがドライでミルクが薄まりにくいと考えられ、つまりミルクの風味が濃厚なカプチーノを楽しむことが出来ると言えるだろう。実際飲んでみてもPD-1で作ったカプチーノの方がBAR14で作ったカプチーノよりもミルクの風味がリッチだった。

PD-1のボイラーは家庭用機に多いウエットボイラーではなく、業務用マシンに多く採用されるドライボイラーである。やかんの様にお湯を沸騰させてスチームを発生させるウエットボイラーと違い、水を高温の水管に通す事で蒸気を発生させるドライボイラーではよりスチームが安定し、すばやい立ち上がりになる。この事もPD-1の優秀なスチーミング性能に寄与している。

もちろんフリーポアラテアートに使えるトロトロのスチームドミルクを作ることは容易である。

一つ欠点を挙げると、スチームボタンをOFFにしてから実際に蒸気が止まるまでに6~7秒のタイムラグがあるため、目標温度より早めにスチームボタンをOFFにしないとミルクの温度が上昇しすぎてしまう事がある。

rwの温度計で65℃の時点でスチームボタンをOFFにし、蒸気が止まるまで待っているとミルクは72度まで上昇してしまった。これではミルクの風味が落ちてしまう。

私が試した結果ではrwの温度計読み58℃あたりでスチームボタンを切らないと、一般的に超えてはならないとされる65℃を超えてしまうようである。このあたりは慣れが必要だろう。

それとスチームONがボタン式なので、常に全開の蒸気しか出す事ができない点もある。常に全開でないとフォームの気泡がつぶれないので問題無いとは思う(実際プロは常に全開でスチーミングする)が、初心者が余裕を持ってスチーミングしたい時には少々問題になるかもしれない。


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グループヘッド。ポッドホルダーは下方向からネジ止めされているので、一旦ポッドホルダーを外してからディスパージョンスクリューにアクセスする事になる。


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ドリップトレー。

容量は実測280ccと十分。形状も洗い易い。コーヒー液が滴る中央部分には大きな穴が開いているので、トレーの網が抽出液で水浸しになることはほぼ無い。よく出来ている。

トレー内に水が多く溜まると、トレー内の黄色の部分(フロート)が上昇してカップ受けの穴が全面的にフロートで覆われるようになる。こうなったら直ちにトレーの水を捨てる。親切な設計がこんなところにも。

カップ受けには表裏があり、手前の大きな穴が右側にくるようにセットする(画像では左になっているので、この面は裏面)

3方向バルブによって開放された残圧と水分も、トレーの奥にあるマシン側の小孔を通してこのトレーに排出される。


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これが使用するカフェポッド。今回は世界的にもメジャーなイタリアのilly社のものを用いる。

カフェポッドは様々なメーカーから発売されているが、もともとはこのilly社が開発したシステムESE(Easy Serving Espresso)で、あらかじめ最適な設定をされたエスプレッソ豆が挽いた状態で一杯分づつパックされ、難しいテクニック不要で本格的エスプレッソを抽出できるようにしたものである。

グラインダーで豆を挽いたりタンピングしたりする必要が無く、掃除も簡単。挽き粉や焙煎豆よりも長期においしさを保てるのも大きな利点。

このillyの個別包装タイプは1個84円程度のコストがかかる(入手先により異なる)。通販サイト等を活用すれば、賞味期限が近いカフェポッドを買ったり、通常品でもまとめ買いをすることにより1杯あたりのコストを下げる事ができる。

場合によってはこのillyの個別包装タイプでも1個あたり50円以下になる事がある(賞味期限が近いものをまとめ買い)。

illyの個別包装でないタイプ(缶入り)の場合は1個あたりのコストが通常品でも63円、10倍量のまとめ買いをすると52.5円になる(入手先により異なる)。

缶入りのタイプは一回開封すると風味の劣化が速いので、頻繁に飲む人向けと言えるだろう。

他にラヴァッツァ、ムセッティ、セガフレード、マメーズなどのブランドがカフェポッドを販売している。

好みのブランドを探すのもカフェポッドの楽しみの一つだろう。

ちなみにカフェポッドの賞味期限は未開封で製造後2年という商品が多い。中には1年や1年半という商品もある。

1つのカフェポッドで30ccを抽出するエスプレッソの他に、レギュラーコーヒーのように100ccを抽出するカフェポッド(デバイスタイル社の呼称はカフェレギュラー)や、50cc~60ccを抽出するカフェルンゴ用のカフェポッドも用意されている。


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開封。これがカフェポッド。


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カフェポッドを破って粉を出してみた。粒度の揃った極細引きにグラインドされている。


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各カフェポッドごとにポッドトレイの高さを調整する。調整幅は11段階。

恐らくカフェポッドはメーカー、または銘柄ごとに厚みが微妙に異なり、挟み込む力をポッドトレイの上下で均一化することにより抽出圧を一定のレベルに調整できるようにしているのだろう。

左が「down」でポッドトレイが下がり、スペースが大きくなる。

右が「up」でポッドトレイが上がり、スペースが小さくなる。

ポッドトレイセットは溝にはめているだけなので、調整は画像のように上に上げてずらすだけの簡単操作。

ポッドトレイの高さが高すぎると、カフェポッドが破れるので注意。

ハンドルを強く押し下げて、水平になった時に「こつん」と手応えがある程度が最適な高さである。


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それでは抽出に移る。

これがメーターパネル。

左上のボタンがスチーム電源ボタン。これを押すとスチーム側のボイラーが起動する。

左下のボタンがスチームボタン。これを押すとスチームワンドからスチームが噴出する。

右上のボタンは抽出電源ボタン。これを押すと抽出側のボイラーが起動する。

右下のボタンは抽出ボタン。これを押すと抽出が始まる。

中央上に付いている小さなインジケーターが「タンク水量警告表示部」である。タンク水量が250cc~300ccになると点灯して水量不足を警告する。

左側の大きなメーターは「スチームサーモメーター」

右側の大きなメーターは「抽出サーモメーター」である。


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スチームと抽出のボタンを押して、湯温を上昇させる。

指針が緑の領域に入り、温度上昇が止まったらスチーミング、抽出操作を行える状態になった合図。

テスト時は抽出OKになるまで1分36秒、スチーミングOKになるまでが1分55秒だった(抽出電源ボタンとスチーム電源ボタンを同時に押した場合)。

先に抽出電源ボタンだけ押した場合は抽出OKまでが1分14秒だった。

その後スチーム電源ボタンを押すと1分53秒でスチーミングOKの状態になった。


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あらかじめ高さを最適に調整したポッドトレイセットに、illyのロゴを上向きにしてカフェポッドを乗せる。


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ハンドルをいっぱいに下げ、抽出ボタンを押す。

抽出時の音量は騒音計による計測で70dB程度。


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30ccを抽出直後の状態。


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クレマを上から。

さすがillyだけあって、ボディがしっかりしていて飲み応えがある。苦味は比較的抑えてあり、酸味と甘みがリッチである。

挽きたての最高品質の豆をパウダー専用機で最適にショットした味にはどうしても劣るが、これも十分においしいエスプレッソと言える。

抽出が終わったらポッドホルダーを下げて、ポッドを取り出してを捨てるだけの簡単操作。


<総評>

誰でも安定しておいしいエスプレッソを、手軽に飲める優秀なマシンである。ダブルボイラーや3方向バルブがあるお陰で、操作もストレスが少ない。

スチームは家庭用としては十分に強力で、濃厚でおいしいカプチーノも楽しめる。

お手入れが簡単なのもPOD専用機ならでは。



<デバイスタイル ブルーノパッソPD-1>スペック (ブログ管理人調べ)


●メーカー : デバイスタイル(deviceSTYLE)

●品番 : PD-1

●分類 : カフェポッド専用機

●217×417×354mm

●コード長 : 1.5m

●重量 : 7.7kg

●消費電力 :1466W(エスプレッソ650W、スチーム816W)

●ポンプ圧 : エスプレッソ→最大15気圧(抽出時9気圧)  スチーム→2.5気圧

●パウダー使用 : 不可

●POD使用 : 可(ESE規格準拠)

●水位計 : 有(残水量250cc~300ccで点灯するインジケーター)

●着脱式ウォータータンク : 有 (容量1.5L)

●着脱式ドリップトレー : 有 {容量280cc(実測)}

●カップウォーマー : 無

●3方向バルブ : 有

●熱交換器 : 無

●デュアルボイラー : 有 (ドライボイラー)

●給湯機能 : 無

●C型スプリングによるフィルターバスケットの固定 : 無

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