ガイドブックではもの足らない人のための台湾本ー高雄・台南 | ちょっとそこまで☆増刊号

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烏山頭水庫

台湾に限らず、何度もリピートするようになると、一般的な旅行ガイドブックではもの足らなくなってくる。台湾旅行はブームなので、台北情報ならそれなりに充実している。書店でもガイドブックだけでなく、よりディープな本も目にするようになった。

しかしこれが、高雄、台南となると、情報量が激減する。4ページとか、立ち読みでもすぐにチェック出来る量でしかなかったりする。台南だと、おそらく地球の歩き方の十数ページが最大だろう。新幹線で日帰り観光前提の紹介記事だと、内容も情報量も似たり寄ったりになる。主要な観光地の紹介はどのガイドブックでも同じだし、一度行っておけばとりあえず終了の所も多い。

だからリピーターにとっては、毎回足を運べるお気に入りの場所を見つけることと、どこで何を食べるかが問題なのだ。

最近は続けて高雄台南に行っているので、グーグルマップで紹介されている店の口コミと写真が頼りだ。あとは現地で実際に見て、客が多い店なら大抵は外さない。

グーグルマップにすべての店が載っているわけではないので、現場チェックも大切だ。事前情報がなく現地判断で入った店が当たりで、あとで評判のいい店だと知った時など、勝ったなと嬉しくなってしまう。

そんな中で、数少ない台南本を紹介しておく。一般的なガイドブックではなく、ディープなものや読み物的な本だ。どこでも初回は普通のガイドブックが便利なので、最低でも、るるぶ、マップル、地球の歩き方くらいは読んで基本情報は押さえているものとして書いていく。


オモロイ台南 台湾の古都でしこたま食ってきました
ヤマサキタツヤ

イラストによる台南本。帯には「ごくうま台湾のグルメコミックエッセイ」とある。
作者の妹が台南に住んでいるということで、観光旅行でなく、在住者や台湾人の日常目線でのレポートがが新鮮だ。

写真ではなく全編イラストとなっているので、手に取ってパラパラ見て物足りなさを感じる人がいるかもしれないが、実際はその逆だ。漫画家特有の細かい描き込みで情報量は想像以上に多いし、イラストは下手な写真よりも見たいものを的確に伝えてくれる。現地で実物を見ているので、そのリアルさも手に取るように分かる。

そもそも台湾の料理はあまりフォトジェニックでないことは、リピーターの皆様ならご存知だろう。なんだか全体に薄茶色で、撮ってきた写真を友人に見せて「これメッチャうまいんやから」と力説しても、いまいち伝わらない。

また、店から広告料をもらって書いている記事ではないので、作者が感じたままに描いているのがいい。美味いものや面白いスポットだけでなく、ネタになる変なものやおかしなこと、しょーもないコトを同列に扱っているのが、一般的なガイドブックとの決定的な違い。

一応、ガイドブック的な機能もあって、紹介した店の場所は巻末地図で分かるようになっている。が、この地図の文字の小ささは何なのだ。老眼鏡かけても薄暗い所では読めないぞ(笑) と、これは作者でなく編集者に言っておこう。まあ、店の名前が分かれば、あとは自分で調べるからいいけど。


私の台南 「本当の台湾」に出会う旅
一青妙

やっと台南本にめぐり会えた!という文章中心の本だ。
冒頭は台南小吃店が紹介されていて、國華街、保安路、海安路あたりが中心となっているのがいい。この界隈は、2回目の台南で楽しさに気がついた。國華街と水仙宮市場辺りはガイドブックで紹介されているが、保安路、海安路まで含めたエリアは、何度でも来れる。先日たまたま立ち寄った俗俗賣木瓜牛乳が大好きだと書かれていて、嬉しくなってしまった。

グルメガイド的なパートは最初の4分の1程度で、写真も豊富に使っており、本文中にカラーページも多い。

あとは台湾を、そして台南の人と街をより深く知るエッセイとなっている。作者は珍しい姓だと思ったら、歌手一青窈の姉。父親は台湾人で、自らも小学生時代まで台北で過ごしていて、この辺りが他の作者とは一線を画した深さの所以だ。押し付けがましい主張や思想もなく、上質のエッセイとしてお勧めできる1冊だ。


無敵の台湾   まのとのま

番外として紹介するこのイラスト本は、2001年発行と10数年前のものなので、もう中古しか手に入らないだろう。手に入れても、当然だが情報も古い。いわゆる一般的なガイドブックとして現役で使えるものではないので念のため。

それでもあえて紹介するのは、久しぶりに読んでみたこの本が、意外なほどディープで面白かったから。

この作者の「無敵の〇〇」シリーズは、ソウル、香港、パリなど世界の観光地を巡って次々と出版されていたので、面白く読ませていただいた。前項でも書いたが、いわゆる漫画家さんのイラスト本特有の圧倒的密度と情報量が特徴で、自分の思ったこと遠慮せずズバズバ書いているので、一般的なガイドブックとは一線を画す。

私が初めて台湾に行ったのは2011年。だからこの本を読んで台湾に行こうと思ったのではないし、台湾旅行前にこの本をガイドブックとして読み込んだわけでもない。一般的な旅行本として読んでいたので、長いこと本棚にあるのを忘れていた。最近、頻繁に台湾に行くようになってから改めて読み返してみると、これが実に面白いのだ。

まず、台湾にリピートするようになって、経験や知識が増えてきたので、本に書いてあることが実感としてリアルに感じられる。あ、この店でこれ食べた!とか、ここ行ったよ~とか。

同時に、本に描かれた10数年前の景色が、今と結構変わっているところがあって、その違いが興味深い。観光地が整備されていたり、店がなくなっていたり、夜市の雰囲気が微妙に違っていたり。きっと経験豊富なリピーターの方ほどそんな箇所が多くて、また別の意味の面白さがあると思う。

この面白さがどこから来るのかというと、基本的な取材がしっかりしていて、現地でちゃんとした(笑)台湾人から実にディープな情報を収集してプロが描き込んでいるからだ。だから趣味のブログの旅行記とは全くの別物。そのディープさが、リピートするようになってからジワジワと分かってきた。

全般的に台北中心だが、高雄台南も押さえられている。例えば高雄の美味処、朝食の興隆居が紹介されているのは良いとして、塩埕街の路上小籠包屋、永和小籠包が、まだ店名もない隠れた名店として紹介されているのには驚いた。私は実際にこの店で小籠包を食べて来たのだが、10数年前に本書で読んだことなど、全く記憶になかった。

毎年発行される一般的なガイドブックは、雑誌のように古いものは捨てていくが、本書はずっと本棚に並べておくつもりだ。

VELTRA