抽象化は止まらない 【対話篇】 その2 | フラットな世界を目指して

抽象化は止まらない 【対話篇】 その2

Remember that the people you talk to care only about themselves one-hundred percent of the time.
あなたが話している人は、自分自身のことにしか興味がないのだ。 ("人を動かす" by Dale Carnegie)

先生「さて、前回に引き続き、抽象化の話をしようかのう。」
生徒「ええと、今回は"なぜ抽象化をする必要があるのか?"について、話すって言ってましたね。」
先生「そうじゃな。早速始めよう。君は、どう思う?」
生徒「いきなりですか。
    うーんと、抽象化をすると、確か2つ良いことがあるんでしたよね。
    覚える項目が格段に少なくなることと、見た目・構造がとてもすっきりするんでしたよね。」
先生「良く覚えておったな。なんで、そんなことをするんだと思う?」
生徒「うーん、分かりませんね~。教えてください。」
先生「物事を、人に伝えやすくするためじゃよ。
    例えば、人に物を頼む時を考えてみよ。手紙を出してもらいたい時に、
    会社を出て、右に曲がって、100m歩いて、信号を渡って、郵便局の前のポストに入れて。
    とは、言わないじゃろ?単に、ポストに入れといて、と言うじゃろ。
生徒「なるほど。たくさんある指示を、ポストに入れる、という動作にまとめているんですね。
先生「そう、その作業が抽象化じゃよ。
    抽象化を行うとどうじゃ?」
生徒「確かに、伝わりやすくなりますね。
    一から十まで言うのは、覚えるのも大変ですし、分かりにくいですよね。」
先生「そう、それが抽象化をする理由じゃよ。人の記憶力には、限界があるからのう。」
<大切なこと その2>
 抽象化をするのには、理由がある。
 それは、「人に物事を伝えやすくする」ためだ。


先生「さて、次の話に移ろうかのう。」
生徒「次は何ですか?」
先生「抽象化を行って、人に物事を伝える、という具体例じゃ。」
生徒「上で、ポストの例を挙げたじゃないですか。」
先生「もっと良い例じゃ。孫子を知っているか?」
生徒「ええ、まあ一応。昔の中国の武将ですよね。孫子の兵法を書いたっていう。」
先生「良く知っておったのう。彼の兵法は、現在でも盛んに読まれておる。
   何で、昔から読まれているんだと思う?」
生徒「何でって、そりゃあ、「ためになるから」じゃないですか?」
先生「何で、ためになるんじゃ?」
生徒「読んだ人が、ビジネスなどに応用できると思うからじゃないですか?」
先生「何で、ビジネス以外でも、たくさんの人が読んでいるんだと思う?」
生徒「ビジネス以外にも、応用できそうだからじゃないですか?」
先生「何で、ビジネス以外にも、広く応用できるんじゃ?一般人も読んでいるぞ。」
生徒「そりゃあ、一般人の心にも、引っかかるところがあるからじゃないですか?」
先生「何で、一般人の気を引くこともできるんじゃ?」
生徒「えーと、分かりやすく書いてあるからじゃないですか?」
先生「分かりやすく書くためには、どうすれば良いんじゃ?」
生徒「ええと、簡単な言葉で書くことと、なるべく短い言葉で書くことです。」
先生「ようやく結論に辿り着いたな。それを何と呼ぶのじゃ?」
生徒「ああ、ようやく分かった。抽象化ですね。」
先生「そう、孫子の兵法は、抽象化して書かれているために、広く応用できるのじゃ。
    それこそ、ビジネスの世界から日常生活にまで。


生徒「そっかあ、言われてみれば、"三十六計逃げるに如かず"なんて、誰にでも当てはまりますよね。」
先生「そうじゃろ?思い当たるフシがあるじゃろ?」
生徒「そりゃあ、過去を振り返ってみれば、たくさんありますよ。」
先生「そこ!」
生徒「え、どこ?」
先生「今、自分の体験を振り返ったじゃろ?」
生徒「ええまあ。」
先生「人間は、抽象的なことに出くわした時、なるべく自分に身近な例で考えようとするんじゃ。
生徒「先生の言う抽象的なことって、"三十六計逃げるに如かず"ですか?」
先生「そうじゃ。それに限らず、他のこともそうじゃ。
    人間は、ある事柄を、自分の状況に当てはめようとする傾向がある。」
生徒「確かに、当てはめようとします。イメージが湧きませんから。」
先生「そう。その傾向を利用すれば、抽象化の良さがもっと分かる。
    抽象化した事柄というのは、広い範囲に当てはまるんじゃ。
生徒「そうか、それで孫子の兵法は、広く読まれているんだ。」
先生「まとめると、こうなる。
    孫子の兵法には抽象化された事柄が書かれている。
    その事柄を読んだ人は、自分の例に当てはめようとする。
    抽象化された事柄だから、多くの人に当てはまり、読んだ人は「ためになる」と考える。

生徒「そうかあ。抽象化すると、良いことがたくさんあるんですね。」
先生「そうじゃ。福音書が読まれたりするのも、抽象化されていて、誰にでも当てはまるからじゃよ。」
<大切なこと その3>
 抽象化をすると、さらに良いことがある。
 「抽象化された事柄は、適用範囲が広くなる。」



生徒「次回は、どんなことをやるのですか?」
先生「抽象化をする理由も分かったことだから、次回はこれを話そう。
    "どのようにして、抽象化する力をつけるのか?"」
生徒「中学生から、大人までが読むんですから、簡単にしてくださいよ。」

次回へ続く・・・