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筆が進まない

抽象化は止まらない【対話篇その1 その2 その3

生徒「先生。いつになったら次の話に進むんですか?ずっと待ってるんですけど」
先生「すまんのう。分かってはいるんじゃが、中々やる気が起きないんじゃ」
生徒「珍しいですね。何かあったんですか?」
先生「うむ。悩み事があってな。」
生徒「ふーん、先生でも悩むことあるんですね。」
先生「当たり前じゃよ。人生の中で、誰しも一度くらいは想像を絶するような深い悩みに遭遇するものじゃ。
   キミにはまだ分からんかのう。」
生徒「なんだろ。株で大損したりしたんですか?それとも誰かに恋をしてるとか?」
先生「それは言わん。もう少し熟成させてから話すことにしよう。」
生徒「そっかあ。」

生徒「じゃあ、モヤモヤとした悩み事があって、話の内容が思いつかないんですか?」
先生「いや、話す内容は大筋で最後まで決めてあるんじゃよ。
   ただ、言語に落とし込むための体力が足りない。
   今の状態では、ピョンピョンと弾むような軽快な文章は書けない。
   まして、数学の群論や圏論をこっちの世界に持って来ようとすると余計体力が必要じゃ。」
生徒「へー、そういうもんなんですか。」
先生「こうしてワシとキミの二人の人格を作り上げること。それから、リズムのある言葉を紡ぐこと。
   ワシにとっては、これが意外に大変なんじゃ。」
生徒「うーん、色々あるんですね。」
先生「というわけで、しばらくは休業。自分のことをしっかりやるんじゃよ。」

抽象化は止まらない 【対話篇】 その3

Have no respect whatsoever for authority;
forget who said it and instead look what he starts with, where he ends up, and ask yourself,
"Is it reasonable?"
権威なんぞというものには、金輪際頭を下げてはならん。
どんな名言であろうと、それを誰様が言ったかなどということにこだわらず、
はじめと終わりを必ずしっかりと見定め、果たしてそれが理にかなっているか?と、自分に尋ねることだ。

先生「やあ、元気にしておったかの?」
生徒「ええ、おかげさまで。」
先生「いきなりじゃが、抽象化のご利益を3つ答えてもらおうかのう。覚えておるか?」
生徒「ええ、何とか・・・。
    ・見た目・構造がすっきりする、
    ・人に物事を伝えやすくする(覚える項目を減らす)、
    ・抽象化した事柄の適用範囲が広くなる。
    ですよね?」[前回] [前々回]
先生「おお、良く覚えておったのう。」
生徒「はい。今回は、どのようにして抽象化する力を身につけるのか、についてですよね。」
先生「そうじゃ。早速、話を始めよう」


生徒「抽象化をする力をつけたいとは思うけれど、どうすれば良いんでしょう?」
先生「ズバリ言おう。”哲学”か”数学”をやるんじゃ。
生徒「へー。何でその2つなんですか?他にもたくさんの学問がありますよね?」
先生「それにも理由がある。
    哲学は、言葉だけを自由自在に駆使して、物事の本質に切り込んでいく。
    数学は、記号を使って、数学に潜む隠れた構造を見つけ出していく。」
生徒「ふーん。」
先生「そこで質問じゃ。どちらの学問にも共通する点は何だと思う?」
生徒「うーん、何だろう?」
先生「2つに共通するのは、”目に見えないもの”を言葉か記号で扱うという点じゃ。
    この作業には、とてつもなく高い抽象化の力が必要なんじゃ。

生徒「”目に見えないもの”かぁ」
先生「そう。それを扱っているうちに、抽象化する力も自然と身につくんじゃよ。」


生徒「じゃあ、哲学と数学なら、どっちがいいんですか?両方一気に学ぶのは、つらそうなんですけど・・・」
先生「今の君だったら、数学じゃな。
生徒「何でですか?」
先生「哲学の客観性がとても低く、反対に、数学の客観性はとても高いからじゃ。」
生徒「客観性って何ですか?」
先生「簡単に言えば、誰もが納得できる説明、かつ、その内容を確かめることができるかどうか?、じゃな。」

生徒「哲学は避けた方がいいんですか?」
先生「うむ。君は、なるべく避けた方が良いのう。」
生徒「何でですか?」
先生「良い師匠が見つかれば良いんじゃが、そうもいかないじゃろう。」
生徒「師匠がいないと駄目なんですか?」
先生「うむ。哲学は、複雑な造語が氾濫していて、先導がいないと迷路にはまりやすいんじゃ。
    アリストテレスの可能無限が~、とか、カントの先験的統覚が~、とか。」
生徒「全然、分かりません」
先生「分からなくていい。さらに、決定的なことは、ソーカル事件[2]じゃな。」
生徒「何ですか、それ?」
先生「20年くらい前に、ソーカルという物理学者が、文系の専門雑誌に論文を投稿したんじゃ。
    その内容は、哲学者や社会学者達の言葉を適当に集めてきて、つぎはぎしたものじゃった。
    もちろん、内容は無意味。しかし、こともあろうに、その論文が雑誌に掲載されてしまったんじゃよ。」
生徒「それって、マズイんじゃないですか?」
先生「そう。普通、厳格に審査された論文だけが掲載されるんじゃが、その審査がザルだとバレてしまった。
    それに加えて、当時の哲学者や思想家が無意味な用語ばかり語っていることもバレてしまった。
    それもこれも、哲学の客観性の低さゆえじゃ。」
生徒「そんなことがあったんですね。」
先生「論文や本をたくさん読んでみたけれど、結局何も分かっていなかったという話はよくある。
    それだと、抽象化する力を身につけたとは言えないじゃろ?」
生徒「うーん・・・そうですね。」
先生「学びたいなら大学や大学院で良い師匠につくか、英語を読むことができるようになってからの方が良い。
    カントなどは、日本語に比べ、英語の言い回しの方が遙かに分かりやすいからのう。」
生徒「そうかあ。
    哲学については分かりましたけれど、数学はどうなんですか?」
先生「長くなったから、その話は次回にしよう。」
生徒「僕はあまり数学が得意じゃないんだから、簡単にお願いしますよ。」

次回へ続く・・・

[1]: What Do You Care What Other People Think? (1988) http://en.wikiquote.org/wiki/Richard_Feynman
[2]: ソーカル事件 wikipedia


抽象化は止まらない 【対話篇】 その2

Remember that the people you talk to care only about themselves one-hundred percent of the time.
あなたが話している人は、自分自身のことにしか興味がないのだ。 ("人を動かす" by Dale Carnegie)

先生「さて、前回に引き続き、抽象化の話をしようかのう。」
生徒「ええと、今回は"なぜ抽象化をする必要があるのか?"について、話すって言ってましたね。」
先生「そうじゃな。早速始めよう。君は、どう思う?」
生徒「いきなりですか。
    うーんと、抽象化をすると、確か2つ良いことがあるんでしたよね。
    覚える項目が格段に少なくなることと、見た目・構造がとてもすっきりするんでしたよね。」
先生「良く覚えておったな。なんで、そんなことをするんだと思う?」
生徒「うーん、分かりませんね~。教えてください。」
先生「物事を、人に伝えやすくするためじゃよ。
    例えば、人に物を頼む時を考えてみよ。手紙を出してもらいたい時に、
    会社を出て、右に曲がって、100m歩いて、信号を渡って、郵便局の前のポストに入れて。
    とは、言わないじゃろ?単に、ポストに入れといて、と言うじゃろ。
生徒「なるほど。たくさんある指示を、ポストに入れる、という動作にまとめているんですね。
先生「そう、その作業が抽象化じゃよ。
    抽象化を行うとどうじゃ?」
生徒「確かに、伝わりやすくなりますね。
    一から十まで言うのは、覚えるのも大変ですし、分かりにくいですよね。」
先生「そう、それが抽象化をする理由じゃよ。人の記憶力には、限界があるからのう。」
<大切なこと その2>
 抽象化をするのには、理由がある。
 それは、「人に物事を伝えやすくする」ためだ。


先生「さて、次の話に移ろうかのう。」
生徒「次は何ですか?」
先生「抽象化を行って、人に物事を伝える、という具体例じゃ。」
生徒「上で、ポストの例を挙げたじゃないですか。」
先生「もっと良い例じゃ。孫子を知っているか?」
生徒「ええ、まあ一応。昔の中国の武将ですよね。孫子の兵法を書いたっていう。」
先生「良く知っておったのう。彼の兵法は、現在でも盛んに読まれておる。
   何で、昔から読まれているんだと思う?」
生徒「何でって、そりゃあ、「ためになるから」じゃないですか?」
先生「何で、ためになるんじゃ?」
生徒「読んだ人が、ビジネスなどに応用できると思うからじゃないですか?」
先生「何で、ビジネス以外でも、たくさんの人が読んでいるんだと思う?」
生徒「ビジネス以外にも、応用できそうだからじゃないですか?」
先生「何で、ビジネス以外にも、広く応用できるんじゃ?一般人も読んでいるぞ。」
生徒「そりゃあ、一般人の心にも、引っかかるところがあるからじゃないですか?」
先生「何で、一般人の気を引くこともできるんじゃ?」
生徒「えーと、分かりやすく書いてあるからじゃないですか?」
先生「分かりやすく書くためには、どうすれば良いんじゃ?」
生徒「ええと、簡単な言葉で書くことと、なるべく短い言葉で書くことです。」
先生「ようやく結論に辿り着いたな。それを何と呼ぶのじゃ?」
生徒「ああ、ようやく分かった。抽象化ですね。」
先生「そう、孫子の兵法は、抽象化して書かれているために、広く応用できるのじゃ。
    それこそ、ビジネスの世界から日常生活にまで。


生徒「そっかあ、言われてみれば、"三十六計逃げるに如かず"なんて、誰にでも当てはまりますよね。」
先生「そうじゃろ?思い当たるフシがあるじゃろ?」
生徒「そりゃあ、過去を振り返ってみれば、たくさんありますよ。」
先生「そこ!」
生徒「え、どこ?」
先生「今、自分の体験を振り返ったじゃろ?」
生徒「ええまあ。」
先生「人間は、抽象的なことに出くわした時、なるべく自分に身近な例で考えようとするんじゃ。
生徒「先生の言う抽象的なことって、"三十六計逃げるに如かず"ですか?」
先生「そうじゃ。それに限らず、他のこともそうじゃ。
    人間は、ある事柄を、自分の状況に当てはめようとする傾向がある。」
生徒「確かに、当てはめようとします。イメージが湧きませんから。」
先生「そう。その傾向を利用すれば、抽象化の良さがもっと分かる。
    抽象化した事柄というのは、広い範囲に当てはまるんじゃ。
生徒「そうか、それで孫子の兵法は、広く読まれているんだ。」
先生「まとめると、こうなる。
    孫子の兵法には抽象化された事柄が書かれている。
    その事柄を読んだ人は、自分の例に当てはめようとする。
    抽象化された事柄だから、多くの人に当てはまり、読んだ人は「ためになる」と考える。

生徒「そうかあ。抽象化すると、良いことがたくさんあるんですね。」
先生「そうじゃ。福音書が読まれたりするのも、抽象化されていて、誰にでも当てはまるからじゃよ。」
<大切なこと その3>
 抽象化をすると、さらに良いことがある。
 「抽象化された事柄は、適用範囲が広くなる。」



生徒「次回は、どんなことをやるのですか?」
先生「抽象化をする理由も分かったことだから、次回はこれを話そう。
    "どのようにして、抽象化する力をつけるのか?"」
生徒「中学生から、大人までが読むんですから、簡単にしてくださいよ。」

次回へ続く・・・




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