総悟夢小説*体温
お久しぶりです!!
寒くなってきましたね...
手を、繋ぎたいと思った。
沖田くんと、キュンとする帰り道をどうぞ。
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体温
手を、繋ぎたいと思った。
「そしたらチャイナがーー」
学校の帰り道。
秋の夕方はもう真っ暗で、静かで。
隣で楽しげに笑う彼ーー沖田くんをちらり、盗み見る。
さっきからずっと、神楽ちゃんの話ばっかり。こんなによく話す沖田くんも、珍しい。
...別に、妬いてるわけじゃないけど。
話に相槌を打ちながら、心は上の空。
たまに触れる、肩と、手の甲が熱い。
触れるたびに、手を繋ぎたいと思って。
でもそんな勇気なんかなくて、ぎゅっと拳を握り締める。
「ーーそれにしても、寒いねィ」
「...そうだねぇ」
「..........さっきから思ってやしたけど、あんたずっと“そうだねぇ”しか言ってねぇぜィ」
「...そうだねぇ.....へっ?」
じと、と。
刺さるような視線にびくりと肩をあげて隣を見れば、軽くこちらを睨む沖田くんがいて。
...ば、ばれたか。
「俺と一緒に帰っておいて上の空たァ、いいご身分で」
「ご、ごごごめん!いやあの、そーゆーつもりじゃっ...」
ぶんぶんと両手を振って慌てて弁解するも、沖田くんはじとーっとこちらを睨むばかり。
うわー...せっかく2人で帰れて嬉しいのに、何やってんだろあたし。
...手、繋ぎたいなんて。その前に告白だろばか。もう。
はぁ、と肩を落とす。
これじゃあ、告白する前にフラれるよね。
「...オイ」
「...どうしたの?」
隣にいたはずの沖田くんの声が後ろから聞こえて、思わず立ち止まる。
振り返れば、少し不機嫌そうな沖田くんが、なぜかこちらに左手を差し出していて。
「寒いなァって、言ってんですけど?」
「...う、うん?寒いね」
「....馬鹿なのは気付いてやしたが、ここまでとはねィ」
「なっ?!ば、馬鹿って、沖田くんひどい!」
いきなり馬鹿呼ばわり?!しかも気付いてたって...あたしそんな、沖田くんの前でヘマしてたっけ...。
悶々と考えながら眉間にしわを寄せていれば、ずんずんと沖田くんがこちらに近づいてくるのが視界の端に映る。
「...お、きたくん、なんか近くない?」
「...俺は、寒いって言ってんでさァ」
目の前で立ち止まった彼は、尚も不機嫌な表情で私を見下ろしていて。
何が何だか分からない私はただただ彼を見上げていて。
ーーそして、油断した。
するり、右手に感じた体温。
はっと驚いて、感じた体温を見下ろす。
「...ーーっ、あ、えと、」
「あったか。子供体温だねィ、お前」
ぎゅ、と。
沖田くんの左手と、私の右手が繋がれていて。
大きくて、少し冷えた掌。
数秒間固まって、子供体温と馬鹿にされてるのに、何も言い返せなくて。
ーーゆっくりと顔をあげれば、いじわるに笑う沖田くんが私を見下ろしていた。
「寒くねぇだろィ?」
「...は、はい...」
ーーこのまま。
心の熱もみんな、伝わればいいのにと。
そう、思った。