better than better 35 | better than better

better than better

彼は、私の死んだママのことが忘れられない。
一方通行の片思いたち


素人小説です

「千歳君、来てるよ」

帰ったとたん祖母にそう言われ、思わず二階を見上げた。

「何しに?」

「知らないよ。早く行きなさい、ずいぶん長い時間待ってるから」

私は駆け上がっていきたいのか、回れ右をして外へ逃げたしたいのか自分でも分からないまま、のろのろと階段を昇った。

千歳は床に座って、ベッドにもたれて眠っていた。眉尻を下げた無心な寝顔を見ていると、どうしようもなく愛おしくなってしまう。私が抱きしめるのが、この人であったならばよかったのに。

 小さく深呼吸をしてから、枕で千歳の頭を叩いた。

「女子高生の部屋で、なにしてるのよ」

千歳はゆっくりと目を開けると、まだ半分寝ているような掠れた声でおかえり、と言った。

「何しに来たの」

「特に用事はないけど。最近、春海見てないなって思って」

そう言ってちょっと笑った。

「久しぶり」

「…それだけ?」

「もうそろそろ学園祭だろ。今年も忙しいのか?」

私の不機嫌な声を無視して千歳は続けた。

「あたりまえでしょ」

「あいつは使い物になってるのか?なんだっけ、女たらしの役立たず」

「香篠君のこと?」

教科書を片付けるために、否、千歳に背を向けるために机の方を向いた。そして、一瞬目を閉じる。

「付き合ってるんだ」

「…は?」

「付き合ってるの、香篠君と」

平静さを欠いた千歳の声で逆に私は冷静さを取り戻して、笑顔で振り向いた。


次話



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