夢の隣、隣の夢 1 | つうしんたいきちゅう

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 友人の声が、僕をまどろみの中から引き上げる。

 
「おっすシラサギー」
 はっと我に返った僕は足を止めた。ミストフィールドのようにぼやけていた頭がクリアになって、周りの喧噪が一気に耳に飛び込んでくる。人の話す声やポケモンの鳴き声、風の音、往来の車のクラクション。ぼんやりと突っ立っていた俺を横目で邪魔そうににらみつけながら、トレーナーを乗せたゼブライカが足早に通り過ぎていった。
 僕の通うホドモエ大学は、人の迷惑にならない限りはポケモンを外に出していて良いことになっている。とは言え学生もポケモンも自由なもので、授業外の時は割合無法地帯と言えよう。風を切る音がするので空を見上げてみると、ケンホロウが翼を広げ、大きめの窓へと猛スピードで入っていくのが見えた。乗っているトレーナーは怪我しないのだろうか。
「なにぼーっとしてるんだよ。昨日夜更かしでもしたのか?」
 笑った友人にばん、と肩を叩かれる。よろけそうになりながら苦笑して、「なんでもないよ」と返した。本当に、ただぼんやりしてしまっただけなのだ。

 僕のぼんやりなどそこまで気に留めていないらしい友人は、もはや違う話を始めている。それは彼がアルバイトをしているフレンドリィショップに来た変なトレーナーについてのもので、毎週水曜日の午後七時に必ず現れてスーパーボールを十個買いにくるとりつかいがいるとか、ケーシィを連れてやってくるのにあなぬけのひもを大量購入していくサイキッカーだとか、何度無いと言い張っても「ここにはピッピにんぎょうさんはいないんですかぁ?」と聞きにくるメルヘン少女だとか。カロスの奴のことはよくわからん、と友人はぼやくように言う。
 友人の後ろからついてくるのは、短い足をてとてとと動かして歩くタブンネだ。いつもにこにこ顔で優しげに寄り添っているこのポケモンはまるで友人の彼女のように見えなくもない。去年の秋頃にGTSで交換したんだというヤンチャムがその名の通りやんちゃすぎて困る、と言いつつ二匹とも出している時は尚更で、もはや家族に見えてしまうのだけど、そう言うと怒られるから僕の心の中だけに留めることにしている。友人はどちらかというとキルリアみたいな子の方が好きらしい。
 ヤンチャムに肩車をしてやりながら、友人はまだあれこれと話している。髪の毛を引っ張っているヤンチャムは時折ぶちぶちと抜いているようにしか見てないのだけど、あれはもう許容することにしたのだろうか。その様子を耳の飾りを揺らしながら笑顔で見ているタブンネは、そんなことを考える僕に「気にしないで」という風に首を小さく振った。

 屋根付きベンチの喫煙所で煙草をふかしている生徒たちの足元で、まだ眠いんだと言わんばかりにガマゲロゲがどえんと転がっている。その隣では、器用なことにドリュウズが煙草を爪の間にはさんで一緒になって吸っていた。この前テレビで見たホルードもそんなことをしていたのだけど、ポケモンも煙草をおいしいと思うのだろうか、などと煙草をおいしいと思えない僕は考えてみる。
「あーな、結構いるみたいだよな。きのみとかポフィンだかの味の好みに連動してるらしいけど。とりあえずくさタイプとはがねタイプはやめといた方がいいだろうな」
 僕の視線の先に気づいた友人も言う。まあこいつが吸ってても笑っちゃうけどな、とタブンネの方を見ながら続けたせいで彼は小さな手ではたかれた。見た目に似合わず結構力は強いらしい、「おうっ」と呻いた友人はよろめいて転びかける。タブンネはにこにこしながらその様子を見ていた。
「あっ、あのさ。この前ペリーラと一緒に大きな公園に行ってきたんだけど……」
 友人がタブンネを睨みつけたので急いで話題を変える。僕のポケモンであるペリーラは、暴れることが好きで元気なアーケンだ。すぐにつつく癖があるのがたまに傷だけれども、岩のように固い羽で打たれないだけマシだと思おう。
「へー、なんか行くとか言ってたよな。どんな感じだった?」
「うん、広くて良かったよ。結構のんびり出来る場所もあるし。今度イオンも行きなよ」
「俺は家にいる方がいいしなー、それにしても……」


 ふと、視界がぼやけた気がした。耳の奥が静まり返り、頭がどこかへ持って行かれるような感覚になる。

 しかしそれも一瞬のことで、すぐに周りの音が戻ってきた。学生の喧噪、車のクラクション、風で揺れた木の葉がざわめき。僕と二人で歩いていた友人が、大きくのびをして頭を揺らしながら言う。
「それにしても、飛んでっちゃったり逃げたりしねえの? だってペリーラって確か……」
 喫煙所で煙草をくわえている学生たちの足下を、少しだけ強い風が通り過ぎていく。僕たちの横を女の子たちが追い抜いていった。
「大丈夫、だって……」



「だってなんだよ?」
 喋りながら、またもやぼやけた視界を晴らしてくれたのは友人の声だった。お前またボーッとしてたけど、と訝しむように言った友人と一緒になって、隣のタブンネと頭の上のヤンチャムも僕を覗き込んでくる。ごめんごめん、と謝ってから「だって」ともう一度言った。
「ペリーラは進化しないと飛べないからさ。アーケンってそういう種類らしいよ」
「へー、じゃあ安心だな」
「大体、ひこうタイプだからって早々逃げたりしないって」
「うるせえよ。そういうことも無いとは言い切れないだろ」
 友人が口を尖らせる。先ほど追い抜かれた女の子たちのポケモンなのだろう、つかず離れずの距離でランプラーとコマタナが漂っていた。女の子たちは軽やかに歩きながら、ポケモンたちはふわりふわりと浮かびながら、校舎の中へと消えていく。
 喫煙所のベンチを主人が立つのを合図に、ガマゲロゲが面倒くさげに立ち上がる。彼らものそのそと足を引きずりながら校舎へと入っていった。やる気の無い後ろ姿がそっくりである。

「で、そのペリーラはどうしたんだよ?」
「なんか風邪ひいちゃったみたいで、今日は家にいるんだ」
「ふーん、お大事に。もし長引くようだったら、タブンネに協力してもらうといいぞ」
 友人の言葉に、タブンネもアピールするみたいに僕を見る。彼らにお礼を言いながら、僕たちも校舎に入って教室へ向かった。

 
 ふわあ、と思わず伸びをしながら外に出る。今日は一日がなんだか長く感じられたような気がした、早く帰って休みたい。とは思ったものの、アルバイトがあるためそうはいかない。元来シャキッとした性格では無いところに加えて最近はぼんやりが増えているから、途中で眠気に負けないようにしなくては。
 バトルサークルだろうか、屈強そうなポケモンたちを従えた学生が何人か歩いているのが少し遠くに見える。ポケモンの力をアップさせることでお馴染みのドリンク剤が入ったビニール袋を手に提げた男子生徒にボーマンダがじゃれついている。それでよろけた彼を笑っているのは青く染めた髪をツインテールにしたエリート風の女子で、ガブリアスの首もとを撫でながらくすりと口元を緩ませた。カロスの少年ジムリーダーによって開発されたという、最近イッシュにも導入されたスパトレのサンドバッグをいくつも抱えたガタイのいい学生を手伝って、連れのバンギラスも彼に負けず劣らずの数を逞しい腕で支えている。そんな様子を一歩後ろから落ち着いて眺めている眼鏡の生徒は見た感じ彼らのリーダーっぽいけれど、風格に反して連れているのは可愛らしい、小さなパチリスだった。主の手に抱かれて、もぐもぐとポフレをかじっている。
 何故パチリスなのだろう、と気になったけれども彼らは大学内のスタジアムへと姿を消してしまった。まあ、バトルビギナーズの僕にはわからない理由があるのだろう。ポケモンの力は未知数だというし。

「ねー、今日カレー食べに行かない?」
「カレーかー。私はいいけどさ、ナナの奴が辛いの嫌いなんだよね。甘党だから」
「へ? あんたのナナって確かワルビアルだよね? あの面で辛いのダメ甘いもの好きってどんなよ。ま、それも大丈夫よ。カレーハウスクイタランは辛さ調節もしてくれるから」
「いいじゃない。ギャップ萌えよ、ヤーコンさんと一緒。つーかその名前、カレーにアイアント入ってそうでヤなんだけど」
 僕の隣を歩いている女の子の片方に内心で同意する。うん、クイタランカレーはちょっと遠慮したい。しかしカントーにもピジョンのイラストが目印のハンバーグ屋さんがあったけれど、あれもそう考えるとキャタピー、ということか。この話はやめよう。
 日が暮れるにはまだ早く、太陽が光る西の空は綺麗な青をしていた。夏も盛りに向かっているのだろう、去年は行けなかったから今年の夏休みにはライモン遊園地に行きたい。春に一度行ったけれど、ネットの情報だとあの遊園地のシーズンは夏らしいし。

 なんてことを考えながらのんびり道を進む。早めの足音の響きに振り向くと、トレーニングウェアに身を包んだ男性がルチャブルと共にランニングの最中だった。それぞれに逞しい脚を動かして僕を追い抜いていく。
 ルチャブルはかくとうタイプ複合とは言え翼の方がメインだと勝手に思っていたけれど、鍛えるとあんなに逞しくなるものなのか。ほう、と感心して溜息をついてしまう。僕のペリーラは飛べないわけだし、今のルチャブルのように脚の鍛錬をしてみようか、と考えたところでやめる。無理無理、主に僕の方が無理だ。ランニングなんて想像するだけで疲れてしまう。
 大学生になったからバトルをしてみたいなあ、と思ってペリーラをブリーダーからもらったのだけど、彼がバトルに出せるポケモンになるのはいつの日だろうか。一緒にいて楽しいから十分だけど、バトルで味わえるという一体感を僕も早く体験したいものだ。



 そこまで考えたところで、またアレがきた。視界が霞み、一瞬の目眩に襲われる。瞼と瞼が、誰かがそう道の反対側から何かが向かってくるのが見えたけれど、避けることが出来ず足がふらついた。

「ちょっと、気をつけて!」
 僕の頭がはっきりした時には、既に自転車の方が避けてくれていた。怒ったような声を残して自転車が曲がり角へ消えていく。危ないところだった、白昼夢を見ていて自転車にはねられて怪我をするだなんて情けなさすぎて笑えない。すみません、と謝ろうとするも遅いことなど火を見るよりも明らかだった。
 しっかりしなくちゃ、と心中で自分に喝を入れながら路地を曲がる。住宅街に入ったせいで人通りが一気にすくなくなり、今まであった話し声も耳に届かない。それと取って代わるみたいにして、姿こそ見えないが木々の間にいる鳥のさえずりが聞こえてきた。
 白塗りの家の庭から、プラムの木の枝が飛び出している。綺麗に色づいた実がおいしそうで、ごくりと思わず喉が鳴った。今日のバイト帰りに寄れたらだけど、是非ともプラムを買って帰ろう。
「そこの人! 通るよ!」
 一人決意していると、後ろから声をかけられた。叫ぶようなそれにまた自転車だろうか、と振り返った。



「あーもう! 気をつけて!」
 振り返っただけなのに、それが命取りだったらしい。僕に向かって突っ込んできたビブラーバとそのトレーナーに、条件反射で「ごめんなさい!」と謝ったけれども、よく考えたらこの道はポケモンに乗るのは禁止のはずである。いくら人通りが少ないからって、いう何時僕みたいな鈍い人がいるかわからないじゃないか。
 などと情けない自己正当化をする僕を馬鹿にするような目で、木の枝にとまったマメパトたちが見下ろしていた。黄色っぽい目がいくつもこちらを向いていて、なんだかとても恥ずかしくなったので急いで立ち去る。くるっくー、なんて声が追いかけてきて頬が熱くなった。
 世界中で大ヒットした雪を操る女王様の映画、主役姉妹であるグレイシアとリーフィアがプリントされた鞄を揺らして女の子がすれ違っていく。じゅくがえりならぬじゅくいきとでも言うべきなのだろうか、ワークブックやノートがのぞく鞄の絵、マスコットキャラ的存在のバニプッチと目が合ってしまった。
 アルバイト先の家を見つけて足取りも軽くなる。赤茶色の屋根の家、目印は門に飾られたダゲキとナゲキの等身大な石像。来る度に思うのだけど、見つけやすくて助かっている。どうしてこのチョイスなのかはわからないけれど。


「あー、シラサギ先生あとちょっと待って。課題がもう少しで終わるから」
 僕のアルバイトは、ホドモエ在住の中学生の家庭教師である。何人か受け持っているのだけれども、今日の担当生徒は旅から去年の春に戻ってきたという14歳だ。旅をしていた間に学校に通えなかった分、今取り戻したいということらしい。 
「またー? まあ、開始時刻まで十分あるからいいけど。急いでやっちゃいな」
「はーい」
 間延びした声で返される。驚くほど白い肌にかかった、綺麗にウェーブしている茶色の髪。華奢な手足に緑の目と、陳腐な言い方だけどもお人形さんのようだ。見た目で判断して申し訳ないけど、この子が三年以上も旅を続けていたと思うとちょっと信じられない。それでも聞くところによるとジムバッジ四つまでいったらしいから、結構な強者ということだろう。
 専業トレーナーは諦めたけれど、ポケモンと関わる仕事につきたいから将来はホドモエ大の携帯獣学部にいきたいらしい。
「今日オニキスくんは?」
「さっきトレーニングするってお庭に出ちゃったよ。先生と入れ違いだったんじゃない?」
「そっか。元気だなあ……」
 彼女のパートナーでもあるエンブオーの行き先を尋ねたりしている間にも時は過ぎ、授業開始時刻となる。
「よしっ、ギリギリ終わった」
「じゃあ丸つけからしようか」
 ノートに書かれた数式と答えを照らし合わせながら確認していく。グラフをまっすぐに通る直線の位置が少しずれていたため赤いペンでバツをつけながら、簡単に解説を始めると生徒は口を尖らせて言った。
「もう、こんなの何に使うのよ。一次関数なんて、日常生活じゃ使わないって」
「それは……」
 使うよ。例えばポケモンを育てる時、元ある個体値に加えてあとどのくらい、どうやって鍛えれば能力値がいっぱいになるかとか。ホウエンやシンオウならばコンテストに必要なかっこよさやうつくしさ、あとどのお菓子をいくつあげれば高くなるのかとか。かの有名なカロスの「いしや」の商品を買うために貯金すると何ヶ月かかるのかとか。
 一次関数の使い道なんて、山ほどあるんだよ。と、僕は言おうとしたんだ。だけど開いた口は使いものにならなかった。



 首から上がふらりと傾く感覚がする。生徒の部屋は全体的にピンクで統一されているのだけれど、ピンク色では無い部分までもがなんだかピンクに見えたような気がした。白かったはずの壁紙、茶色のはずだった床。それまでもがピンクに思えて、だけどもちゃんと確認するよりも前に、僕は急激に重くなった瞼を閉じてしまった。

「……先生?」
 不思議そうな生徒の声にハッとする。いけない、またこれだ。僕は慌てて、何を言おうとしたのか思い出す。そうだ一次関数だ。
「ごめんごめん、えっとね……たくさんあるよ。例えばさ、君が将来車を買うとするじゃん。でも高いから、お金を貯めて買うとして……初めにあるお金にプラスして、どのくらいの期間貯めればいいのかな? っていうのを求める時とかさ」
「ふーん」
 三つ編みにした髪を揺らして、わかっているんだかわかっていないんだか不安になる声で生徒が答える。大丈夫かな、と思ったちょうどその時部屋の扉が開いて、彼女のお母さんが入ってきた。
 お茶でもどうぞ、との言葉に恐縮しながらコップを受け取る。早くもお菓子の入った小皿に手を伸ばしている生徒が「あっ、ダニー」と嬉しそうに声をあげた。ダニー、この家で飼われている長毛種の大型犬がお母さんにくっついてのそのそと入り込んできたようである。
「ああ、こら。二階には来ちゃいけないって言ってるじゃない。すみません先生、よろしくお願いしますね。ほら、ちゃんと勉強するのよ」
「はあーい」
「お気遣いありがとうございます」
 お母さんに促されて、大きなモップみたいな犬が部屋から押し出されていく。濡れたように黒い目が、名残惜しそうにこちらを見ていた。何がそんなに気になるのか、と疑問に思った僕の気持ちを察したように生徒が言う。
「あのね、これ。お父さんがこの前フランスにお仕事しに行った時のお土産なんだけどね」
 小皿に盛られたガレットを一つ、生徒が自分でもかじりながら僕に手渡してくる。香ばしい砂糖の匂いが鼻をくすぐった。
 その、甘い匂いをかいだ時だった。僕はガレットのせいだけじゃない、別の甘さを感じたように思った。生徒が続ける言葉が、とても遠くから言っているようだ。
「ダニーがね、このお菓子すごく気に入っちゃって、私たちが食べてるとすぐに見つけてやってくるの、…………」



「……そうなんだ。ダニーくんは甘いもの好きなの?」
「みたいだけど……先生、またボーッとしてたでしょ。どしたの? あ、もしかして好きな人出来たの!? どんな人? おとなのおねえさんタイプ? おじょうさまタイプ? まさかのバッドガール系!?」
「違うって……悪かったよ」
 ふっと夢から引き戻されるような感覚、矢継ぎ早な質問。このくらいの年頃の子はすぐに話をそっちに持っていきたがるらしい。苦笑しながら首を振ると、なんだつまらないの、と拗ねたように言われた。そんな顔されても困るなあと思いながら甘いお菓子を一口頬張る。ミアレのものはなんでこう、独特の高級感があるのだろうか。
 長い毛にガレットの欠片をくっつけながら食べているムーランドを想像しつつ、僕は参考書に目を落とす。今日は出来れば面積へ応用するところまではいきたいものだ。食べ終わったら駆け足になりそうである。
「お父さんったらさ、『メゾン・ド・ポルテ』のお洋服がいいって頼んだのに、ハクダンの帽子しか買ってきてくれなかったんだよ。ほら見て、アレ。あのキャスケット」
「いいじゃん、かわいいと思うけど」
「そうじゃないの! 私は、ベージュのトレンチワンピースが欲しかったの!」
 壁にかけた白い帽子を指さし、生徒が頬を膨らませている。途中から何を言っているのかところどころわからない、今に始まったことではないけれども女の子のファッションはとても難しい。僕は彼女のお父さんに心から同情した。
 なんて話をしたり真面目に勉強したり、途中でトレーニングから戻ってきたオニキスが隣でゴロゴロしだしたのを生徒が羨ましそうに見たり、結局ダニーがお母さんの目をかいくぐってやってきて余っていたガレットを食べたりしているうちに時間は過ぎた。僕は次回までの課題を出し、親子とポケモン二匹に挨拶して家を出る。紫色に染まった空の片隅だけがオレンジで、ハトーボーが二、三匹、住処へ向かって飛んでいくのが見えた。