「名将言行録」の太田資正の章は、資正が語ったと言われる戦場訓で締められています。
http://kindai.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/1043024

『嘗て曰く、具足は軽く馬は静かなるが善し、刀は糸巻にて、頭際に菱三つ四つあるが善し、長尺は好み申まじ、槍は太く短きが善し、衣類は麻木綿善し、冬は木綿袷善し、食事は大食悪しし、餅四つ五つ持参駿河善し、鰹節も持参あるべ、此外の物は無用なり、人馬の薬種々あれども、是も無用なり、薬抔用意せば人馬共働き成り難し、暑気の凌ぎ様は、其国々場所々々にて違ふなり、又面々の強弱にても違ひ之あるなり、寒中火にあたり申すまじ、後悪しし、雪中は片手包懐へ入るべし、暑中水飲申まじ、第一腹合に悪しし、夜中は主従二た時づつ能く寝べし、左なくては疲るるなり、梅干の黒焼は持参すべしと』

「名将言行録」に収録された内容は、真偽や出所が分からないものが多く、この戦場訓もその一つです。

しかし、妙に細かく、経験に裏打ちされた雰囲気の漂うこの一節は、あるいは本当に資正にまで遡れる内容なのもしれません。

質実剛健を基本としながらも、役に立つ良いものは良いといい(例えば木綿袷)、薬は持つなと厳しいことを言いつつ、、戦場で寝るコツや疲労回復に役立つという梅干しの黒焼を薦める。

優しい心のありようが伝わる文章です。

最後の『梅干の黒焼は持参すべし』の一節は、読むとなにやらホッコリします。


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