先日、友だちがイキナリ、「私、婚活する!」と言い出した。
いまや当たり前に浸透している「婚活」という言葉。でも、実際には何をするの?お見合い?結婚相談所に登録?なんて考えていたら、ふと婚活居酒屋の「相席屋」のことを思い出した。
相席屋とは、初対面の女性グループ(主に2人)と男性グループがランダムに相席し、食事をしながら出会いを楽しむお店のことだ。
友に声をかけてみると、二つ返事で「行く!」と返ってきたので、早速その2日後に行くことにした。こういうのはタイミングが命。
都内だけでも20店舗以上ある相席屋の、どこに行くか悩んだ結果、都内に1店舗だけある30代以上限定の「R30 赤坂店」に行くことに決めた。
■PM19:00~作戦会議
決戦は土曜日。
勇んで出かけたものの、19時過ぎにお店に行くと、「今、満席なんですよ」と店員さん。席が空くまで1時間ほどかかると言われたので、近くの手羽先屋で時間をつぶすことにした。
メニューを見ながら、「手羽ぎょうざ!」と言いかけて、いやいや、これから相席をするのに餃子はなかろうと、普通の手羽先に変えるくらいの理性はまだ保っていた私たち。
ここで、ちょっとした作戦会議をしてみる。
私たちは、同じ歳で同業だ。
「36歳・フリーライターって、モテなそうだよね?」
しかし、現実とかけ離れた嘘をついてもボロが出る。
「せめて、編集関係の会社員ってことにした方が、堅気に見えるんじゃない?年は34歳くらいでどうかな?あれ?それだと干支は何だっけ?」
「57年生まれのいぬ年だよ、弟と一緒だから間違わない」と友。
「よっしゃ、それでいこう!」と、ざっくり作戦が決まった。
そうこうしているうちに、「お席が空きました」と相席屋から電話が。かぶりついていた手羽先を慌てて飲み込んで、私たちは再び相席屋に向かった。
■PM20:00~ 相席屋にて、男性待ち
お店に入ると、若いイケメン店員が席まで案内してくれた。店内は薄暗く、ムーディに仕立ててある。テーブルとテーブルの間には仕切りがあり、半個室状態。席に行くまでに、何組かの男女が相席しているのが見えた。
案内されたテーブルに着くと、イケメン店員がお店のシステムを説明してくれた。女性は飲み放題で無料。食べ物は別料金。
土曜日は男性客が少なく、相席するまでに時間がかかるかもしれないとのこと。赤坂はオフィス街なので、土曜日は会社員も少ないのだろう。お客さんはノー残業デーの水曜日と、金曜日に多くなるらしい。
女性が無料なのに対し、男性は飲み放題30分ごとにお金がかかるのが相席屋のシステムだ。R30赤坂店は通常の相席屋と少し違って、料金も高い。
平日は30分1500円、土日は30分2000円(通常店は土日1800円)。
しまった、土日は割高だから男性が少ないのか…!しかし、せっかく来たのだから、一組くらいは相席して帰りたい。
さらにイケメン店員は、大事なことを説明してくれた。
「どうしても相性の合わないお客様もいらっしゃると思います。その場合は、トイレに『席替え希望カード』がありますので、書いていただいて、そっと店員に渡してください」
「分かりました」と言いながら、しかしこのシステムには、なんだか心がざわざわする。
「それって、チェンジしたことは相手には分からないんですか?」と聞くと、「それとなくやんわり伝えるので大丈夫ですよ」とイケメン店員。
説明が終わったところで、ドリンクとおつまみを1品頼み、殿方の登場を待つことにした。
しかし、30分ほど待っても、男性は現れない。
トイレに行く途中に他のテーブルを見ても、女性ふたりだけの席が目立つ。
女子が余っている! しかも、みんなキレイなのだ。世の殿方はどこにおるのじゃ!こんなにかわいい子がここに溢れておるのに!と東京中の男性たちに伝えたい気持ちになる。
スマホをいじりながら時間をつぶしていると、どちらともなく、「ねぇ……さっきの設定、どうする?」という話になり。
「うん。もう、めんどくさいね。いっか、36歳・フリーライターで」
「ありのままでいこう!」
このとき、すでに4杯以上は飲んでいる。
ダメなオンナ2人である。
■PM21:00~ ついに相席開始!
「ご相席の男性が到着されました」
イケメン店員が言いに来てくれたのは、入店から1時間ほど経った時だった。思わず背筋が伸びる。
「こんにちはー」
登場した男性ふたり。見た目は普通か?
しかし、男性陣は「ウーロン茶」と「ジンジャエール」を注文。私たちの表情が一瞬凍りつく。
「あれ?お酒は飲まれないんですね」と聞いたら、「お酒お好きなんですか?」と聞き返された。「いえ、そんなには……」と答えたが、私たちの前に並ぶのは、焼酎の水割りとジントニック。水ではないこの透明な液体を、酒嫌いな人が飲むわけがない。
気を取り直して、場を盛り上げようと会話を進める。
「お仕事は何をしているんですか?」
定番の質問だ。
左側(友の前)の男性は、IT系です、と言う。
右側(私の前)の男性、製造業です、と言う。
「へぇ、製造業なんですね。何を作っているんですか?」
「うん、いろいろ」
会話終了―――。
そして、製造業男性は、その後、すっとトレイに立った。その時はまだ、この行動の意味が分かっていなかった。彼がすぐに戻り、また4人で会話続行。
「おいくつですか?あ、年齢当てますね!」
「子どもの頃、好きだったアイドルは?」
と、頑張る女性陣。
「うーん、菊池桃子かな」とIT男子。これで私たちより少し上の世代であることが判明。
次に製造業男性に聞いてみた。
「別に。アイドルとか好きじゃなかったし」
会話終了――――。
その後、いくつかの話題でなんとか場をつないでいたところに、イケメン店員がやって来る。
「あの、すみません。本日男性が少なくて、多くの女性に相席していただきたいので、あと3~4分で終わりでよろしいでしょうか?」
「あ、はい…」と言うしかない。
たいした盛り上がりもなく、30分で相席は終了した。
■PM21:30~ 女子とも相席してみた
男性が席を離れた後、友とふたり、顔を見合わせる。
「ねぇ、これってチェンジされたってことだよね?」
「どうなんだろ?」
と言いながら、ふと見た目の前のテーブルの男女を見ると、私たちが相席する前から同じ組み合わせだった。
「あそこ、もう1時間以上相席しとるやん!」
どうでもいい男性であっても、チェンジされるといい気はしない。
消化不良の私たちは、「もう一組くらい相席したいよね」とねばってみたものの、ここは土曜日の赤坂。男性が現れる気配はない。
仕方ないので、「ちょっと女子に話し聞きたくない?」と、イケメン店員を呼び止めて交渉してみる。
「あそこの女性と相席したいんですけど」
狐につままれたような目をするイケメン店員。
「えっと…初めてのケースなのでちょっと…」と言っているのを「ちょっとだけ、ちょっとだけ」と制して、ドリンクを片手に、女子のテーブルに乗り込んだ。
30代半ばのその女性2人組は、相席屋に来たのは2回目で、婚活中とのこと。
勝率は?と聞くと、「いい男には出会えない」らしい。
「でも、1時間くらい相席してましたよね? 盛り上がってるように見えましたけど」
「いやー、終えるタイミングが分からなかっただけで。全然楽しくなかったよね、疲れたー」とコリコリと肩を回す。
お、女は怖いです。
女子の動向も聞けたところで、席に戻った私たちはすっかり満足してしまい、料理のお会計300円強(スマホアプリのポイントを500円分使用)だけを支払って、相席屋を後にした。
結論。店員が一番イケメンだった。
相席屋は果たして婚活に役立つのか? その2、「六本木店編」につづく。