【サザンの楽曲「勝手に小説化」㉖】『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』(原案:桑田佳祐) | 頑張れ!法政野球部 ~法政大学野球部と東京六大学野球について語るブログ~

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少々マニアックな事なども書くと思いますが、お暇な方は読んでやって下さい。

私が大好きなサザンオールスターズ桑田佳祐の楽曲の歌詞を題材に、私が勝手に「短編小説」を書くという、

「サザンの楽曲・勝手に小説化」

シリーズは、これまでの所、「25本」を書いて来ている。

そして、現在は、前作『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』から始まる「4部作」を連載中である。

従って、今回、書かせて頂くのは、『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』「続編」であり、「4部作」の「その2」である。

 

 

という事で、まずは、これまで私が当ブログで書いて来た、

「サザンの楽曲・勝手に小説化」

シリーズの「25本」のタイトルを、ご紹介させて頂く。

 

①『死体置場でロマンスを』(1985)

②『メリケン情緒は涙のカラー』(1984)

③『マチルダBABY』(1983)

④『Ya Ya(あの時代(とき)を忘れない)』(1982)

⑤『私はピアノ』(1980)

⑥『夢に消えたジュリア』(2004)

⑦『栞(しおり)のテーマ』(1981)

⑧『そんなヒロシに騙されて』(1983)

⑨『真夜中のダンディー』(1993)

⑩『彩 ~Aja~』(2004)

⑪『PLASTIC SUPER STAR』(1982)

⑫『流れる雲を追いかけて』(1982)(※【4部作ー①】)

⑬『かしの樹の下で』(1983)(※【4部作ー②】)

⑭『孤独の太陽』(1994)(※【4部作ー③】)

⑮『JOURNEY』(1994)(※【4部作ー④】)

⑯『通りゃんせ』(2000)(※【3部作ー①】)

⑰『愛の言霊 ~Spiritual Message』(1996)(※【3部作ー②】)

⑱『鎌倉物語』(1985)(※【3部作ー③】)

⑲『夕陽に別れを告げて』(1985)

⑳『OH!!SUMMER QUEEN ~夏の女王様~』(2008)

㉑『お願いD.J.』(1979)

㉒『恋するレスポール』(2005)

㉓『悲しい気持ち(Just a man in love)』(1987)

㉔『Moon Light Lover』(1996)

㉕『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』(2007)

 

 

…という事であるが、今回、私が書かせて頂く「サザン小説」の題材として選ばせて頂いたのは、

1998(平成10)年にリリースされたサザンオールスターズの楽曲、

『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』

である。

この曲は、未だにサザンのライブの「定番曲」であり、サザンファンの中でも特に人気が高い曲だが、

『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』

という楽曲の中には「横浜」の観光名所が沢山出て来るので、

「横浜の名所案内」

という側面もある。

そして、この曲のテーマは、ズバリ何かと言えば、

「不倫の恋」

である。

というわけで、今回の小説は、冒頭で述べた通り、

『NUMBER WONDA GIRL ~恋するワンダ~』

「続編」として書くので、前作で登場した「あの女」が再び登場する。

従って、宜しければ前作からお読み頂ければ幸いである。

それでは、前置きはそれぐらいにして、

「サザンの楽曲・勝手に小説化シリーズ」の「第26弾」、

『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』(原案:桑田佳祐)

を、ご覧頂こう。

(※なお、この小説に登場する個人名・団体名などは全て架空の物であり、実在の物とは関係ありません)

 

<序章・『夜霧よ今夜も有難う』>

 

 

まだ人通りの少ない夜明けの街を、私と、ある女が、ピッタリと寄り添いながら歩いていた。

私も彼女も、ただひたすら黙っていたが、私と彼女は、しっかりと手を繋ぎながら、ゆっくりと歩を進めていた。

夜が完全に明けてしまえば、私と彼女は、こんなに大っぴらに一緒に居る事は出来ない。

何故なら、私と彼女は、

「人目を忍ぶ恋」

をしていたからである。

そんな私達の事を、まるで外界から覆い隠してくれているかのように、お誂え向きに、辺りには「夜霧」が立ち込めていた。

その時、私の胸は疼いていた。

私と彼女は、お互いに、

「好きになってはいけない人」

を、好きになってしまい、今こうして、二人して歩いていた…。

「何故、こういう事になってしまったのか…」

今更、考えても仕方が無いが、私は、これまで有った事を思い出していた。

しかし、彼女は一体、何を考えているのか、ただ私に寄り添っている彼女の表情からは、その考えは何も読み取れなかった…。

 

<第1章・『風速40米』>

 

 

その時の私の「衝撃」を、一体、どのように表現したら良いか…。

私は、あの時ほど、物凄い「衝撃」を受けた事は無かった。

私は、もう二度と逢う事はあるまいと思っていた、「あの女」と再び出逢ってしまったのである。

しかも、それは私の職場だった。

私は、ある銀行に勤めているが、私の勤め先…「横浜大洋銀行」の川崎支店に、「あの女」が現れた時、私は本当に心臓が止まるかと思ったものである。

ある朝の事。

私の職場に、中途採用の新人社員が入って来るというお達しが、支店長から有り、私達の職場の人達が集められた。

「今日から、こちらに配属される事になった、新人の方をご紹介します。さあ、どうぞ…」

支店長から紹介され、一人の若い女性が姿を現した。

「さあ、皆さんにご挨拶を…」

支店長に促され、その女性は皆の前に進み出た。

「本日から、こちらでお世話になる事になりました。榊マリと申します。宜しくお願い致します…」

少し緊張気味の彼女が、そのように挨拶し、ペコリと頭を下げると、職場の皆から拍手が起こった。

しかし、この私と言えば…その女の顔を食い入るように見ていた。

「…マリリンじゃないか…」

今、目の前に居て、榊マリと名乗った女性…この女(ひと)は、どう見ても、私が不思議な「出逢い」をして、一度は「深い関係」になってしまった、あのマリリンではないか…。

「何で、マリリンが此処に…」

私の頭は混乱していた。

私が出逢った時、マリリンは金髪だったが、この日、私の職場に現れたマリリン…いや、榊マリは、黒髪だった。

しかし、それ以外は、どう見ても、あの時に私が出逢ったマリリンその人である。

 

 

マリリンと出逢い、別れた後、私の生活は、また平凡な日常に戻っていた。

しかし、この時、私はまるで「風速40メートル」ぐらいの大嵐に見舞われたような心境だった。

そして、榊マリと名乗った女は、私の方を見ると、何か意味ありげに笑っていた…。

「えー、それじゃあ、榊マリさんには、渉外担当になってもらいます。君、色々と教えてあげなさい」

支店長に言われ、私は凍り付いた。

私の職場に、何故か、再び彼女が現れたというだけでも、かなりの「衝撃」だったが、よりによって、私の直属の後輩になるというのだから…。

「一体、どうなっているんだ…」

表面上、私は平静さを装っていたが、心の中は乱れに乱れていた。

榊マリの、皆への紹介が終わり、今日もまた通常の業務が始まった。

そして、榊マリは私の隣の席に着く事となった。

「宜しくお願い致します…」

榊マリは、ニッコリ笑い、私に挨拶して来た。

「こ、こちらこそ…」

私も挨拶を返したが、その時、多分、私の顔は引きつっていた筈である…。

 

<第2章・『陽のあたる坂道』>

 

 

思いがけず、マリリン…いや、榊マリが私の「部下」となったショックが冷めやらぬ中、

私は彼女を連れて、早速「外回り」に行く事になった。

新人の部下が入って来たのだから、彼女を連れて、得意先に「挨拶回り」をしに行くのである。

猛暑のピークは過ぎたとは言え、まだまだ暑さが残る季節だった。

「それでは、行って来ます…」

私と彼女は、職場の上司に告げ、銀行の外に出た。

私の勤め先の銀行は、JR川崎駅から、程近い場所に有った。

私と彼女は、二人して、川崎駅の方へと向かった。

川崎駅へと向かう坂道を、ギラギラと明るい太陽が照らしていた。

そして、銀行から少し離れた場所で、私は物陰に彼女を連れて行き、

「君、何であそこに現れたんだ…?」

と、私はたまらず聞いていた。

「それに、榊マリというのは、君の『本名』か?」

そもそも、銀行が、身元の怪しい人間を採用する筈も無いのだが、私は一応、彼女に確かめてみようと思っていた。

「何を言っているの?本名に決まっているでしょう?」

榊マリは、さも当然のように答えていた。

「まだ最初の質問に答えてないぞ…」

私がそう言うと、彼女は、

「貴方に逢いたかったからよ…」

と、答えた。

相変わらず、答えになっているのかなっていないのか、よくわからなかったが…。

「さあ、行きましょう…」

榊マリに促され、再び私は駅へと向かった。

そう、とりあえずは一通り、「挨拶回り」を終わらせないと…。

「話は、後でゆっくりと。ね?」

榊マリは、そんな事を言っていた。

「やれやれ…」

私は、溜息をついた。

 

<第3章・『狂った果実』>

 

 

私と榊マリは、一日中、「外回り」をした後、

その日は銀行には戻らず、そのまま「直帰」する事となった。

私が担当する区域は、職場の近辺である川崎と、横浜の辺りである。

「外回り」を終え、私と榊マリは、夕暮れの横浜・みなとみらいの街を歩いていた。

「今日は、お疲れ…」

私がそう言うと、榊マリは、

「お疲れ様でした…」

と答えた。

流石に、彼女も少し疲れた表情だった。

私と榊マリは、二人してベンチに腰掛け、みなとみらいの夕景を眺めていた。

「はい、これ…」

私は、榊マリに「缶コーヒー」を渡した。

「それは、『WONDA』じゃないけど…」

私は、彼女に前に飲まされたのとは別のメーカーの「缶コーヒー」を渡した。

「有り難う…」

彼女はそう言って、素直に「缶コーヒー」を受け取った。

私達は、そのまま暫く、何も言わず、港を見ていた。

やがて、いつぞやのように、彼女は私にもたれかかって来た…。

「君、まずいって…。俺には妻と子供が…」

私はそう言ったが、榊マリは、

「わかってるわ。でも、もう少しこのまま…」

と言った。

その時、私はこう思っていた。

「これ以上、この女(ひと)と一緒に居たら、俺は逃れられなくなる…」

しかし、逃げようにも、この女(ひと)は今や、私の職場の同僚になってしまった…。

私は、逃げるに逃げられない状況だった。

そして、私が彼女を見ると、彼女も私の方を見ていた。

榊マリは目を閉じ、私からの口づけを待っているようだった。

そして、私は、まるで吸い寄せられるように、彼女にキスをしてしまった…。

「こうなってしまったのは、他の誰でもない、俺のせいだ…」

後から思えば、これが大きな「分岐点」だった。

この時を境界(さかい)として、私は榊マリの魔性の魅力から、逃れられなくなってしまったのである。

 

<第4章・『俺は待ってるぜ』>

 

 

「今日は、帰りが遅くなるから…」

「あ、そう…」

私が妻に電話をすると、妻からは素っ気ない返事が来たが、特に何も言われる事は無かった。

あの夜、私とマリは、夜遅くまで一緒に過ごした。

そして、それからというもの、私とマリの、

「人目を忍ぶ関係」

が、始まってしまった。

私とマリは、表面上は、ただの職場の同僚だった。

しかも、私は結婚し、妻子が居る事は、勿論、職場の他の同僚も知っていた。

だから、職場の同僚には、私達の関係は絶対にバレないようにしなければならなかった。

私とマリの「秘密の関係」が始まった頃、私はよく、こんな「小細工」をしていた。

「お疲れ様でした」

「ああ、お疲れ…」

銀行の勤務時間が終わった後、私とマリは、ごく普通に別れ、それぞれ違った帰り道を行く。

しかし、その実、私とマリは、一旦は別れたフリをして、別の場所で「待ち合わせ」をしていた。

流石に、職場が有る川崎近辺だと人目に付くので、私とマリは、横浜の方に別々に向かい、横浜の駅で落ち合ったりしていた。

その日の仕事が終わるタイミングによって、どちらが先に横浜に着くのかは、わからなかったが、相手が現れるまでの間、待っている方は、ドキドキしながら、相手が現れるのを待っていた。

 

 

私が先に横浜に着いて、マリを待っているまでの間は、本当に待ち遠しくて仕方が無かったが、やがて、マリが現れると、私の胸は高鳴った。

マリも、私を見付けると、パッと表情を輝かせ、私に駆け寄って来た。

「逢いたかったわ…」

マリは、大胆にも私に抱き着いて来たりしていたが、私も、

「ああ、俺もだよ…」

などと言って、マリを抱きしめた。

最初は、どちらかと言えばマリの方が積極的だったが、こうして二人で逢う回数を重ねる内に、私もすっかり、マリの虜になっていた。

「ミイラ取りがミイラになった」

とは、まさに、この時の私を表すのにピッタリの言葉であった…。

こうして落ち合った私とマリは、度々、夜の横浜の街に出掛け、

「秘密のデート」

をしていた。

 

<第5章・『二人の世界』>

 

 

私とマリは、お互いにしっかりと手を繋ぎ、夜の横浜の街を歩いていた。

私には妻子が居るので、こうしてマリと逢っていると、やはり「罪悪感」が有った。

しかし、その頃、私と妻の関係はあまり上手く行っていなかった…というより、すっかり冷え切っていたので、

今こうして、マリと逢い、「デート」をしている時の高揚感が、妻と子供への罪悪感を上回ってしまっていた…。

私とマリは、言わば「不倫」の関係なので、昼間、大っぴらに二人して逢ったりは出来ない。

なので、「デート」をするのは、専ら夜だったが、

「俺達は今、やってはいけない事をやってしまっている…」

という背徳感が、余計に二人の関係を固くしているように思われた。

 

 

「今日は、泊りがけで出張だから…」

その日、自宅を出る時、私は妻にそう告げていた。

「あ、そう…」

例によって、妻は私に、素っ気ない返事をしていた。

「パパ、行ってらっしゃい!!」

6歳の娘がニコニコして、私に手を振っていた。

そんな娘の顔を見ると、私の胸は痛んだ。

「俺は今、妻と娘を平気で裏切っている…」

そう、私は妻と娘に対し、最低の「裏切り行為」をしていた…。

だが、その時の私は、どうしてもマリと一緒に過ごしたいという気持ちの方が勝っていた。

その夜、私とマリは、いつものように、夜の横浜の街で逢った。

そして、その夜、私とマリは、

「マリーンルージュ」

という、横浜港を一周する遊覧船に乗った。

私達は、「マリーンルージュ」の船上のデッキで、ピッタリと寄り添い、横浜の夜景を眺めていた。

 

 

「あれが、レインボーブリッジだよ…」

私とマリを乗せた「マリーンルージュ」が、大黒埠頭に差し掛かった頃、海に架かる大きな橋が見えて来た。

その時、私はマリに対し、その橋の事を、

「レインボーブリッジ」

と言ってしまったが、実はそれは、

「ベイブリッジ」

の間違いだった。

しかし、そんな事はどうでも良かった。

私には、その橋が横浜港に架かる、

「虹の橋」

のように見えていたのだから…。

マリは私にピッタリと寄り添い、彼女の頭を私の肩に乗せていた。

私達は寄り添いながら、「虹の橋」を眺めていた…。

 

 

「マリーンルージュ」

で、心行くまで横浜港の夜景を堪能した私とマリは、

その後、山下公園の近くにある、

「シーガーディアン」

というバーに行った。

「シーガーディアン」

は、とてもお洒落で、大人な雰囲気の静かなバーだったが、

「人目を忍ぶ恋」

をしている、私とマリには、まさにピッタリのバーだと思った。

私とマリは、そのバーで一緒にカクテルを飲んだ。

マリの頬は、ほんのりと赤くなり、彼女の魅力は更に増していた。

「こんなに、私の事を酔わせて、どういうつもり…?」

マリは、いたずらっぽく笑っていたが、そんなマリを見ると、私はますます、彼女への愛おしさが増していた…。

そして、その夜、私とマリは横浜のホテルに泊まり、一夜を過ごした。

 

<第6章・『嵐を呼ぶ男』>

 

 

「また出張なの!?」

妻が、露骨に嫌な顔をしていた。

その日は日曜日だったが、私が、

「急な出張が入った」

と言うと、忽ち、妻の機嫌が悪くなった。

「仕方ないよ、仕事なんだから…」

私は、なるべく妻の顔を見ないようにして、自宅の玄関で靴を履き、そのまま出掛けようとしていた。

「だって、ついこの間、出張が有ったばかりじゃないの…」

妻は流石に不満そうな顔をしていた。

そんな私と妻の様子を、娘が心配そうな顔で見つめていた。

「本当にすまない…。今度、埋め合わせをするから…」

その日、妻は、本当は久しぶりに家族3人で出掛けたいと思っていたらしかった。

それが、またしても「出張」で、私が出掛けるというのだから、妻の機嫌が悪くなるのも当然と言えば当然だったが…。

「ごめんな。それじゃあ、行ってくるよ…」

私は、娘の頭を撫で、そそくさと家を出て行った。

ここ最近、私は帰りが遅く、そして、何かと言えば「出張」…。

しかも、それは本当は全て、私がマリと逢っていたためであり、「出張」云々は全て「嘘」だった。

「俺は、本当に最低だな…」

自宅を出た後、私は独り言を言っていた。

「たまには、昼間にデートしたいな…」

マリが、そんな事を言っていたので、この日、とうとう私とマリは、お互いの休日である日曜日の昼間から、逢う事にしていたのである。

しかも、私は「出張」という嘘をついて、家を出ていた…。

何処からどう見ても、私は「最低」である。

そして、流石に妻も不機嫌さを隠さなくなっていたが、今思えば、これは「嵐」の前兆だった。

 

 

「凄い!!またストライクよ!!」

横浜のボウリング場で、私が見事な「ストライク」を決めたのを見て、マリが大喜びしていた。

実を言うと、私は学生時代から、ボウリングが大の得意だった。

だから、この日はマリに、ちょっと良い所を見せようと、私は大いに張り切っていた。

そして、私は「ストライク」を連発し、カッコつけて「ガッツポーズ」をしたりしていた。

「君も、やってごらんよ…」

私はマリに対し、「ボウリング」のコーチなどをしていたが、私がわざと、マリの「ボウリング」の、下手っぴなフォームの真似をしたりすると、

「もう!!意地悪なんだから…」

などと言って、マリもとても楽しそうに笑っていた…。

ちなみに、私は妻には「出張」と嘘をついていたので、その日は日曜日ながら、スーツを着ていた。

今は、スーツを脱ぎ、ワイシャツの腕をまくって、こうやって「ボウリング」を楽しんでいたのだが…。

「ちょっと、お手洗いに行ってくるわ…」

マリがそう言って、席を外したので、私は椅子に腰掛け、ペットボトルの水を飲んでいた。

 

 

「あれ?どうしたんだ?こんな所で…」

いきなり、そう声を掛けられ、私はドキっとして、心臓が飛び出しそうになった。

その声の主は、私の職場の同僚の男だった。

「え!?いや、今日は久しぶりにボウリングを楽しもうと思って…」

私は、顔を引きつらせていたが、何とか平静さを保とうとしていた。

「何で、こいつが此処に居るんだ…」

私は内心、大いに焦っていた。

「お前こそ、何で此処に…?」

私がそう聞くと、彼は、

「俺は横浜に住んでるからな。此処にもよく来るんだよ…」

などと言っていた…。

「そ、そうか…」

私は、何とか答えたが、

「こいつに、俺とマリが一緒に居る所を見られたら不味い…」

と、咄嗟に思っていた。

「それじゃあ、ちょっとトイレに行って来るから…」

私は、そう言って、トイレに向かった。

そして、マリが出て来るのを待って、彼女を捕まえると、

「ここに居たら、不味い。先に出ててくれ…」

と言って、マリをボウリング場の外に出させようとした。

「うん…」

マリは面食らっていたが、遠くに、あの職場の同僚の男の姿を認め、ハッとしていた。

「さあ、早く…」

私は、マリを慌てて外に出させた。

「じゃあ、またな…」

私は、マリが席に置いていた、彼女のバッグを持ち、何食わぬ顔で、同僚の男に挨拶し、会計を済ませ、そそくさとその場を後にした…。

しかし、私はどっと冷や汗をかいていた。

 

<第7章・『夜霧のブルース』>

 

 

その夜の事…。

私とマリは、関内にある、

「ブルーライトバー」

で、二人して黙ってカクテルを飲んでいた。

しかし、私達には、いつものような高揚感は無く、マリはずっと俯いていた…。

「何か、すっごい惨めだった…」

マリが、ポツリと呟いた。

そう言うマリの頬には、涙が伝っていた。

「仕方の無い事だけど…。私達って、こうやってコソコソと逢うしか無いんだもんね…」

マリは、とても悲しそうな顔をしていたが、私には何とも言いようが無かった。

「マリ…」

私は、彼女を抱き寄せたが、マリはさっきから、ずっと泣いていた…。

「私達、これからどうなっちゃうの…?」

マリにそう聞かれたが、私は、何も答えられなかった。

本当は私も、マリと同じように泣きたいような心境だったのである。

「マリ、ゆっくり話し合おう…」

私はマリを促し、「ブルーライトバー」を後にした。

 

 

その夜、実は私は、みなとみらいの夜景が見える、

「ハーバービュー」

の部屋を取ってあった。

そして、私はマリを、その部屋に連れて行った。

部屋の窓から見える横浜の夜景は、とても綺麗だったが、私とマリの心は沈んでいた。

私とマリは、そこで固く抱き合い、そして口づけを交わした…。

「私、貴方と離れたくない!!」

「ああ、俺もだよ…」

私とマリは、そんな事を言ってしまっていた。

そう、もはや私とマリは、理性でお互いの気持ちを抑えられるような段階は、とっくの昔に過ぎ去っていた。

もはや、私とマリは、後戻りが出来ない関係になっていた…。

そして、この夜も、私達は朝まで一緒に過ごしてしまった。

 

<終章・『錆びたナイフ』>

 

 

こうして私は、またしても「朝帰り」をしてしまった。

「ただいま…」

自宅に戻って見ると、そこには誰も居なかった。

私と妻は「共働き」だったし、もう月曜日の朝だったので、妻は仕事に向かったのだろうし、娘も保育園に行っているのだろう…と、私は思った。

しかし、何処かいつもと家の雰囲気が違っているのに、私は気付いていた。

何と言うか、本当に「空っぽ」のような雰囲気に思われたのだが…。

ふと、ダイニングのテーブルの上を見ると、そこには「置手紙」が有った。

私は、ハッとして、その「置手紙」を見た。

そこには、たった一言、妻の字で、こう書いてあった。

「実家に帰ります」

と…。

私は、呆然として、その「置手紙」を見ていた。

その時、私は全てを悟った。

妻には、私の「不倫」が、全てバレていたのだと…。

その「置手紙」は、まるで「錆びたナイフ」のように、私の心を抉っていた…。

 

(つづく)

 

 

『LOVE AFFAIR ~秘密のデート~』

作詞・作曲:桑田佳祐

唄:サザンオールスターズ

 

夜明けの街で すれ違うのは

月の残骸(かけら)と 昨日の僕さ

二度と戻れない 境界(さかい)を越えた後で

嗚呼 この胸は疼いてる

 

振り向くたびに せつないけれど

君の視線を 背中で受けた

連れて帰れない 黄昏に染まる家路

嗚呼 涙隠して 憂う Sunday

 

君無しでは 夜毎眠らずに

闇を見つめていたい

 

マリン ルージュで愛されて

大黒埠頭で虹を見て

シーガーディアンで酔わされて

まだ離れたくない

早く去(い)かなくちゃ 夜明けと共に

この首筋に夢の跡

 

愛の雫が 果てた後でも

何故にこれほど 優しくなれる

二度と戻れない ドラマの中の二人

嗚呼 お互いに気づいてる

 

棄ても失くしも 僕は出来ない

ただそれだけは 臆病なのさ

連れて歩けない 役柄はいつも他人

嗚呼 君の仕草を真似る Sunday

 

好き合うほど 何も構えずに

普通(ただ)の男でいたい

 

ボウリング場でカッコつけて

ブルーライトバーで泣き濡れて

ハーバービューの部屋で抱きしめ

また口づけた

逢いに行かなくちゃ

儚い夢と 愛の谷間で溺れたい

 

マリン ルージュで愛されて

大黒埠頭で虹を見て

シーガーディアンで酔わされて

まだ離れたくない

早く去(い)かなくちゃ 夜明けと共に

この首筋に夢の跡

だから愛の谷間で溺れたい