2012年9月11日に公表された福島県の子供たちの甲状腺検査結果(平成24年度実施分※1)をまとめてみます。
【対象市町村】
-中通り地方-
福島市
検査結果 | 内容 | 対応 | 人数 | 割合 |
A1 | 結節なし 嚢胞なし |
経過観察 | 23702人 | 56.3% |
A2 | 0.5cm以下の結節あり 2cm以下の嚢胞あり |
経過観察 | 18119人 | 43.1% |
B | 0.5cmを超える結節あり 2cmを超える嚢胞あり |
二次検査 | 239人 | 0.6% |
福島県の子供たちに対する甲状腺の検査は、平成23年3月の原発事故当時に環境放射線量の高かった市町村順に、平成23年度後半からおこなっています。
平成23年度に甲状腺検査を実施した市町村は。
【対象市町村】
-浜通り地方-
広野町、楢葉町、富岡町、川内村、大熊町、双葉町、浪江町、葛尾村、飯館村
-中通り地方-
田村市、南相馬市、伊達市、川俣町
一言で言えば、原発が立地していた市町村と高濃度のセシウム汚染がわかっている市町村が対象でした。
ですから平成23年度の甲状腺検査結果より平成24年度の検査結果のほうが、嚢胞や結節ありの子供たちの割合は減るはずだと多くの福島県民が考えていたはずです。比較するために平成23年度実施の検査結果と並べてみます(%のみに変更、人数略)。
検査結果 | 内容 | 対応 | 23年度 |
24年度 |
A1 | 結節なし 嚢胞なし |
経過観察 | 64.2% | 56.3% |
A2 | 0.5cm以下の結節あり 2cm以下の嚢胞あり |
経過観察 | 35.3% | 43.1% |
B | 0.5cmを超える結節あり 2cmを超える嚢胞あり |
二次検査 | 0.5% | 0.6% |
嚢胞も結節もない正常な子どもの割合は平成23年度に比べて7.9%減少しました。
さらに1999年度(※2)長崎県の子供の甲状腺検査結果の資料(※3)がありますので3つの検査結果を比較してみます前回と同じ方法 で結節を対象外にして嚢胞のあり、なしで表をつくりました。この3つの資料は、山下俊一放射線健康リスク管理アドバイザーが中心になってまとめたものです。
実施年度 | 1999年 | 2011年 | 2012年 |
地域 | 長崎県 | 福島県 | 福島県 |
嚢胞なし |
99.2% |
64.8% |
56.9% |
嚢胞あり |
0.8% |
35.1% |
43.1% |
【長崎県1999年と福島県2012年との比較】
つまり嚢胞ありの甲状腺に問題が見つかる子供の割合は、長崎県では1%未満だったのに対して、2012年の福島県はその43倍もあったということです。
逆を言えば長崎県の場合、嚢胞なしの正常な子どもが99%なのに対して、2012年の福島県では56%まで減少しています。
【福島県2011年と福島県2012年との比較】
たった1年で正常な子どもの割合が7.9%も減ったということでしょうか。それとも、小児甲状腺がんの原因になる放射性ヨウ素については、2011年調査対象の浜通り北部や中通り北部よりも福島市のほうが汚染されていたということでしょうか。どう考えたらいいのか、わかりません。
【2013年3月11日加筆】
長崎の検査結果の論文では結節については5mm以上を陽性と定義がありますが、嚢胞については定義自体が存在しないため、福島県の検査結果でいう「B」判定のみを指しているのではないか?とのご意見をk様からいただきましたので。加筆しておきます。ご意見をいただきましたk様に感謝です。
Nodules more than 5 mm in diameter were considered to be "positive".
※現在、この資料の比較については嚢胞の定義自体が存在しない為に、定義をどう解釈をするかで見解が真っ二つにわれています。どちらの見解を支持するにしても、必要なのは中立的な信用できる医療機関での検査です。これを読んでいるすべての人へ…大人も含めて甲状腺と血液の検査をおすすめします。
私が子供及び大人の避難者の方に聞き取りした感じでは、嚢胞や結節のある人は3~4割程度、血液に異常がある人が1~2割程度でした。
残念ですが現実に甲状腺がんの診断を受けた方も何名かいます。但し、甲状腺がんは10年後の生存率が極めて高いがんですので失望する必要はありません。現実を知ればいくらでも対処法を探すことができます。
繰り返しますが、必要なことは、日本政府や福島県など政治の影響を受けていない中立的な医療機関での検査です。無料であっても偏向していれば何の意味がないですし、もないでしょうから。
※1http://www.pref.fukushima.jp/imu/kenkoukanri/240911siryou2.pdf のPDF3枚目。
※2前回の記事は西暦表記でしたので「2000年」としましたが、今回の福島県の検査結果と会わせる為、年度表記にしたため「1999年」となっています。
※3https://www.jstage.jst.go.jp/article/endocrj1993/48/5/48_5_591/_pdf