『悪役令嬢は素敵な旦那様を捕まえて「ひゃっほーい」と浮かれたい』を試し読み♪ | 一迅社アイリス編集部

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こんにちは!
本日は、新刊の発売が待ちきれないよーというあなたのために、試し読みをお届けしますハート

試し読み第1弾は……
『悪役令嬢は素敵な旦那様を捕まえて「ひゃっほーい」と浮かれたい 断罪予定ですが、幸せな人生を歩みます!』

著:藍銅 紅 絵:中條由良

★STORY★
ある夜、平凡な社会人だったわたしは何故か、とある乙女ゲームの悪役令嬢・マルレーネに転生していた!? シナリオ通りなら、婚約破棄からの断罪……そして、死? そんなの冗談じゃない! 素敵な旦那様と結婚して幸せになりたい!! そう思って婚約者と距離を置いたのに、悪役令嬢ルートからは逃げ出せない。そこでわたしは、このルートから逃げ出す方法を考え出し――。
幸せになりたくて極端に走り抜ける転生悪役令嬢のラブコメディ

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 ……皆様どうもごきげんよう。悪役令嬢マルレーネに転生したこのわたし。「おーほほほ」という高笑いにも「わたくし」と自身を称するのにもすっかりなじんだ今日この頃。派手なドレスもコルセットもどんとこい。
 商人を呼びつけて「ここからあそこまで、全て買わせていただくわ」とあたりまえのようにおっしゃるマルレーネのお母様にも慣れました。
「ん? 経済を回すのも高位貴族の義務だ。マルレーネもどんどん買いなさい」というお父様にも最近は耐性が付いてきましたとも……。
 細目系悪役顔のルフレントお兄様との関係も、それなりに良好よ……。
 ええ、順応、しました、よ……。うん……多分……。
 そうしてわたしは『ユメアイ』の悪役令嬢らしく、破滅に向かうルート爆走中。
 本気で泣ける。もう逃げたい。
 まず、学園に入学して一年目。
 ギード殿下に命じられるままに、授業のノートを取り、宿題を手伝い、公務も肩代わりし……なのにギード殿下からは感謝されるどころか、下僕扱い。
 次いで二年目。
 学年トップ独走中のわたしと、成績急下降中のギード殿下。ギード殿下との仲はどんどんどんどん悪くなる。
 ついでに言えば、何もしていないのにヒロイン・ウィプケはわたしから苛められているとギード殿下に泣きつき始めた。
 ああ、そうそう。ウィプケ嬢はハーレムエンドを目指しているのではなく、ギード殿下ルート一択。『ユメアイ』に出てきた他の攻略対象者のイケメンたちとは全く交流をしていない。
 ハーレムエンド目指して攻略対象全てに手を出すのなら、全部のルートの悪役令嬢たちと連動して対抗する……という手段も考えてはいたのだけれど。ギード殿下一択では、その手段も取れはしない。 
 ギード殿下以外の攻略対象者たちは、みーんな親が決めた婚約者と和やかな関係を築いている。
 だから悪役令嬢化しているの、わたしだけっ!
 周囲の皆様と仲良くしようとしても、何故だか皆様引きつった笑顔で後ずさる。
 孤児院に寄付とかの善行を施しても、何か裏があるんじゃないかと勘繰られる。
 そう、何をしても、誰も彼もがシナリオ通りにわたしから離れていく。
 これってよくある『ゲームの強制力』というものなのかしら?
 それとも……顔? この悪役令嬢顔が悪いのかしら!?
 ヒロイン・ウィプケが何もないところで自分から転んでもわたしのせい。
 ギード殿下が、成績トップ集団のクラスから最下層のクラスに落とされたのもわたしの陰謀。
 で、学園の皆様からひそひそと悪口を言われるの。
 学園の最終学年になった今では、わたし、学年トップなのに独りぼっち。『ユメアイ』のゲームでは取り巻きのご令嬢くらいはいたはずなのに、それすらいない。
 王太子殿下のエルネスト様やその婚約者のエリーゼ様はわたしのことを気にかけてくださっていたのだけれど……。ほら一応、わたし、ギード殿下の婚約者だし。お二人は将来のわたしの義理の兄、義理の姉になる予定だし……。
 だけどね、お二人も既にご卒業されてしまったの。だから、学園内でわたしが話す相手は教師だけ。
 か、悲しい……。
 やっぱりわたし、婚約破棄されて、断罪されて、破滅する運命なのか。泣ける。
 助けてお母さん……なんて、無駄なことを心の中で叫んでしまう。
 あ、お母さんと言えば、今のマルレーネのお母様とかお父様とは、ゲームとは異なり仲良しなのがちょっと救い。侍女のイルゼとかもわたしに尽くしてくれるし。あー、ルフレントお兄様も、それなりに構ってはくださるの。それがなければもう諦めて、エイラウス侯爵家の自分の部屋の中で引き籠もるか、いっそさっさと逃亡していたかもしれないわ。
 ううううう、めげる。
 だけど何とかしないと卒業パーティで断罪されて、破滅する。
 先輩の話をもっと熱心に聞いておけばよかったなと、ちょっと後悔。
 だけど、今更そんなことを言っても仕方がない。
 それに先輩が主に語ってくれたのは、いかにマルレーネが悪役令嬢として素晴らしいかであって、ゲームのストーリーがどんなふうに展開していったとか、どんな断罪を受けたとかではなかったのよねえ……。あの先輩お手製のノートには、もしかしたらそのあたりが書かれていたかもしれないけれど、読み始めたところで転生させられちゃったから……。
 断罪後の破滅の具体的な内容がわからないのはホント怖い。
 でも、破滅ってことは、国外追放や修道院行き程度ではない……かもしれない。
 まさか、奴隷落ち? それとも娼館行き……。
 い、いやいやいやいや! 考えたくもないわーっ!
 百歩譲ってわたし一人が破滅なら……。うん、だったらさっさと逃亡するだけなんだけど。エイラウス侯爵家の家族や使用人たちも連座で死罪とかだったら……とか考えると、安易に逃亡もできやしない。お父様たちに迷惑がかかるのは嫌。転生前の両親には、親孝行とか何もできなかったから、代わりに今の家族は大事にしたい。
 だから、逃げないで、考えなきゃ。
 断罪される卒業パーティまでは、もうあと半年もない。

「……ギード殿下もヒロイン・ウィプケも……シナリオ通りに相思相愛になっていって、周りの人間もそれを認めて、わたしを蔑んでいる。けれど……。わたしは実際には、ゲームのようにヒロインを苛めてなんかいない。距離を取って、関わらないようにしているというのに、何故か、ヒロインの身に起こった悪いことは全てわたしのせいにされてしまっているのよ……。わたしが何をしても『悪役』って思われるのは、やっぱりゲームの強制力ってやつのせいなのかしら……?」

 考える。

「それと……わたしが『悪役』と皆に思われるのは……侯爵令嬢で、第二王子の婚約者という地位の高さ。入学以来ずっと学年トップ独走中という優秀な頭脳と魔道の持ち主。そして何よりも、美貌を持っているから。恵まれている者は悪役としてうってつけ。そして、持たざる者は同情を買いやすい。それが現実というものよね……」

 考える。
 頭をフル回転。どこかに突破口はないものか。

「そうだ! 誰がどう見てもヒロインを苛めることができないという状況に、わたしを追い込めばいいのよ。そして、わたしが加害者ではなく、被害者として周囲の皆様に認識されるようにすれば……」

 わたしはわたしの両手をじっと見る。
 イルゼに磨き上げられた美しい爪。シミ一つない白い肌。

「破滅する未来回避のためならなんだってやるわよ。幸いわたしは侯爵令嬢に生まれ変わったの。転生前みたいに生活に困るわけでもない。お付きの侍女だの従者だのをいくらでも雇える立場なのよ。うん、できる。やってみせるっ! まずは明日の朝食の時に、エイラウス侯爵……お父様にお願いをしてみよう」

 両手をぎゅっと強く握った。
 さあ、破滅回避のために、抗えわたしっ!

~~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~~~