こんにちは!
今週末4月19日には一迅社文庫アイリス4月刊が発売されます!
ということで、本日から新刊の試し読みをお贈りいたします
試し読み第1弾は……
『偽聖女にされましたが、幸せになりました
平民聖女と救国の王子』
著:霜月零 絵:一花夜
<STORY>
日々、お役目を真面目にこなしている聖女ルーナ。彼女の日常は、一度も失敗したことがない国を守る結界が張れなかったことで一変した。婚約者の第一王子に、偽聖女だと咎められ、婚約破棄を突き付けられてしまったのだ! 辛うじて牢屋には入れられなかったものの、ルーナは王宮の一室に軟禁されることになり――。
明かせなかった恋心が花開く追放聖女のラブファンタジー。
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「……っ」
不意に気配を感じて目を覚ました。
月の光が微かに照らす部屋の中に、誰かがいる!
「こいつ起きやがった! 早く拘束しろっ」
薄暗くはっきりと見えない中でも声でわかる。パーシバル様だ。
そしてもう一人はローブをまとった男で、有無を言わさずわたしを縛り上げた。逃げる間もなかった。
両手を後ろに縛られ、拘束される。
(なに? いったい、なにが……)
部屋の外には衛兵がいるはずだが、気配を感じない。
助けを呼ぼうにも声はまだ出ないし、魔力も違和感が残っている。
ラゼットが付けてくれた影小人は、首の後ろあたりに移動して様子をうかがっているようだ。
「はっ、まだ声が出ないのかよ。こいつは都合がいい。お前が好きな紅茶に仕込んだのは正解だったなぁ」
目が大分慣れてきて、パーシバル様の嘲笑う表情がよくわかる。
(紅茶に仕込んで……? まさか、わたしは毒を盛られていたの!?)
違和感はあった。
紅茶はいつもより苦みが強くて、喉に刺激も感じていた。なのにわたしは気のせいとばかりに紅茶を飲み干してしまった。
(毒を盛られているって知ってたら、絶対にあの高い紅茶飲まなかったのに!)
滅多に飲めない大好きな紅茶だからと、食い意地が張ったばかりにこんなことに。
おそらく自分の魔力に違和感が残っているのも、毒の影響だろう。
結界式で多くの魔力を使うからと、毒が回りきる前に自分自身に治癒を施さなかったことが悔やまれる。まさか王宮で毒を飲まされるなどと思わないではないか。
情け容赦なくきつめに縛り上げられた縄が腕に食い込んで痛い。
パーシバル様がわたしの髪を掴み上げる。
「……っ、……!」
「貴様のような奴が、聖女を名乗るのは最初から気に入らなかったんだよ。薄汚い平民が、金目当てで王宮に潜り込みやがって」
ぱんっと頬を平手で叩かれた。
(王宮に潜り込んだ? 金目当て? どちらも違うわ。聖女と判明して、いきなり王宮に連れてきたのはそっちでしょ!)
思いっきり言い返したいが言い返せない。
叩かれた頬がじんじんと痛みを訴える。
「なんだその目つきは? 俺に文句があるのか平民風情が!」
「……っ!」
思いっきり蹴り飛ばされた。
ゲホゲホと咳き込むわたしに、パーシバル様は満足げに嗤った。
「はっ、そうして床に這いつくばってるのがお似合いなんだよ。なぁ、偽聖女。お前はこれから逃げ出すんだ。偽聖女とバレるのを恐れてな」
何を言っているのだこの人は。
この状況でどう逃げられるというのか。
「父上が帰ってくる前にお前が姿を消せば、誰もが認めるだろう。ヴァニスカこそが真の聖女だったのだと」
姿を消す?
(まさかこの人、わたしを殺すつもりなの!?)
さっと血の気が引く。
何もしていなくともパーシバル様の気に障ればいつでも殴られていたけれど、まさかそんなことをしようとしているとは思わなかった。
「飛ばせ。魔の森にな」
パーシバル様がローブの男に命じると、わたしの身体の下に魔法陣が浮かび上がる。
(転移魔法陣……っ)
身体をひねり魔法陣から逃れようと足掻くが無駄だった。
「お前は罪が発覚するのを恐れて逃げ出すんだ。そして無様にも魔の森で遺体となって発見されるんだ。なぁ、偽聖女!」
ばさりと聖女の正装である法衣が投げつけられる。
高らかに嗤うパーシバル様の楽しげな声を聞きながら、わたしは光り輝く転移魔法陣で魔の森へ転移させられた。
~~~~~~~~~(続きは本編へ)~~~~~~~~~~
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