作家の野坂昭如さんが亡くなりました。
日本文壇の巨匠を失い、寂しさを禁じ得ません。
野坂昭如さんの作品とくれば、やはり『火垂るの墓』があまりにも有名ですよね。
これは栄えある直木賞受賞作でもあります。
私もですが、一般的に同作に関しては、スタジオジブリのアニメの方をイメージされる方が多いことでしょう。
私はといえば、アニメはかなり幼いころ見たのに対し、原作の小説は、わずか5年くらい前に拝読しました。
この原作なのですが、まず驚いたのは、野坂昭如さんの独特の饒舌文体。
饒舌文体というのは、句読点や改行が極端に少なく、延々と一つの言い回しが続くという技法です。
アニメの映像的なイメージが強かったので、あの文体は相当な意外感をもって迎えたものでした。
それから、同作が短編集の一編だったということも、驚きのひとつ。
何しろ、映画化されていますので、当然、長編小説なのだろう、という先入観があったわけです。
実際には、映画化作品でも原作は短編ということはめずらしくありません。
でも、これに限っては、なんとなく長編のイメージだったのです。
読後感としては、普通の文体で長く展開するよりは、饒舌で短く締めた方が光る内容である、と実感して、感嘆したものでした。
未読の方は、野坂昭如さん追悼の意味も込め、ぜひ、読まれてはいかがでしょうか。
終戦70周年でもありますから。
謹んで、ご冥福をお祈りいたします。