『伊豆の踊子』 | 今村允彦オフィシャルブログ

今村允彦オフィシャルブログ

行政書士、2級FP技能士、ビジ法リーダーなどの各種資格を取得し、今後も複数の資格取得をめざす、FPの今村允彦の公式ブログ。

もう何度目になるかわかりませんが、また川端康成『伊豆の踊子』を読みました。
古典というのは色あせないからよいものですよね。
新作は新作でよいものですが。


川端のすごさはやはり、美文と、日本の美の表現という、ダブルのインパクトに尽きます。
さらに言えば、「川端康成文学賞」という文学賞があるくらい、短編の名手として知られてもいますが、『雪国』『古都』など、長編も素晴らしい出来栄えですから、ノーベル賞第1号なのもうなずけます。


余談ですが、私自身は、短編よりは長編の方が、読みごたえがあるというニュアンスでは好きなのですが、川端作品の短編はボリュームとは違った重みが感じられますから、感嘆も他の作家のそれとは違いますね。


『伊豆の踊子』はもちろんですが、『雪国』にしても、冒頭が名文として名高いことはあまりにも有名ですよね。
『古都』は、『伊豆の踊子』『雪国』ほど有名な冒頭ではありませんが、やはり抒情的ですし、川端作品は、どの作品をとってみても、とにかく美しい。


また、『伊豆の踊子』も『雪国』も『古都』も、舞台となる地域を強く意識させられる作品です。
このことも、作品自体の美しさと併せて、私がとりわけこの3作を愛する理由のひとつなのかもしれません。


本作に関していえば、川端の学生時代の体験が元になった自伝的作品なのですが、それゆえにリアリティがあり、いわゆる「超時代的作品」ではないにせよ、時代に関わらない魅力を覚えます。


文章が映像的にしようと腐心しているわけでもないものなのに、うまく情景を引き立てているという手法も大きな特徴。
逆にいえば、「映像化しやすい」とも言えるでしょうが、「映像化を想定して書いていないような文章」でもあるというのは、まさしく天賦のものですね。

始まりが美しい自然描写なのに対し、ラストが複雑な胸中での船中というコントラストも、見事に明暗を表し、作品への美しさを付与しているといえるでしょう。


おそらく意識せずにこうしたことを書いたであろう川端は、まさに、文豪の名にふさわしいものと、私は信じます。