渡辺寛 赤線全集 | お散歩日記

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路地裏、バラック、長屋、昭和の香りがする飲食街、遊郭赤線跡地、廃墟、古い町並み、山奥・・・・そんな場所を訪れては下手糞な写真を撮っております。

SNSを始め、各方面で話題となっているので既にご存知の方も多いとは思います。紅灯書籍、売春資料出版のパイオニアたるカストリ出版が、本日九月三日帝都旧吉原遊廓跡に直営店舗「カストリ書房を開店。

遊廓赤線書籍専門店は本邦初。しかも旧吉原遊廓という最高の立地条件。書籍販売と共に、トークイベント等々も企画しているそう。今後の店舗展開が大いに楽しみであります。



カストリ書房

〒111-0031
東京都台東区千束4-11-12
※駐車場なし(近在にコインP有)


営業時間:10〜20時
定休日:月火








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扨、此度読了したカストリ出版の最新本をご紹介致します。新刊タイトルは「渡辺寛 赤線全集」







赤線愛好家諸氏のバイブル「全国女性街ガイド」の著者、渡辺寛氏が各媒体に寄せた赤線街、温泉街に関するルポが一挙に纏められています。「全国女性街ガイド」版元の自由国民社(季節風書店)の協力を全面的に受け、「100万人のよる」などに掲載されていた氏の作品を発掘。

※100万人のよる 昭和三十二年一月号に掲載された「全国女性街ガイド」のものと思しき宣伝。








勿論、各地に残る赤線跡探究の良書としての読み方も出来ましょう。また一方では、長きに亘り好事家の間で「幻の作家」とされてきた渡辺寛氏の人となりを識る伝記的な要素が多分に含まれております。この伝記的な意味合いが、本書に於くサブテーマであるとも受け取れます。


経歴を窺い知れないミステリアスな側面からか、憶測を以て語られることの多かった渡辺氏。その足跡を辿るべく、編集発行者遊郭部氏が東奔西走した執念の取材によって、詳らかに。また附録として直筆のプライベート日記が収録、更には氏のご家族にアプローチし、貴重なインタビューが掲載。赤線紀行作者たる渡辺氏とは別角度の人物像が伝わってきます。



当時、現役の色町だった赤線街を探訪し、女性との逢瀬の数々を書き連ねた渡辺氏の人物像。気になるその後の足取り。作品に触れた多くの読者は、作者は所謂日の当たらない人生を歩んだ、とイメージしているに違いありません。しかし本書を一読すれば、読者が斯様に抱いていた人物像が覆される、と断じても言い過ぎではないでしょう。




波瀾に富んだ経歴、意外とも言える交友関係。渡辺寛氏には未だミステリアスな魅力が存分に詰まっております。ひと度、異なる側面から人物を望むと、意外な人間像が浮き彫りにされることがよくあります。経歴を追うと社会の各分野に足跡を残していた渡辺氏。近い将来の史家、探究者の手により、氏の歩まれた人生ドラマの一篇を知る日が来るような予感がします。