横浜あざみ野のひとつひとつ丁寧につくられた作家ものの器の店 IZUMO[utsuwa] です。
今日は吉田まゆさんの漆芸作品の工程のお話です☆
こちらにはまゆさんから伺ったものをそのまま書きます。
棗 工程
1: 木地固め
生漆を木地全体に摺り込み、木地の全体の強度を高める。
また、木地に漆が染み込むことで、木地と上に塗る漆の付着が良くなる。
2: 和紙着せ
手が透けて見えるほどの薄い和紙を、棗全体に糊漆(のりうるし)で貼り付ける。 痩せ対策や素地の補強のために行う。 和紙が薄いため、この作業を2・3回繰り返し、棗全体の強度を高めていく。
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漆が乾いたら、和紙のボコボコしたところを軽く研ぎ、上から錆漆 を塗る(すり込み錆)。
※お椀などの場合は基本、布を貼ります。布の場合、縦糸と横糸による隙間が生じるため、布着せのあとは、この隙間を埋めるように錆漆を塗ります。 和紙の場合、布ほどの隙間はありませんが、この下地工程は強度を高めるための工程ですので、和紙でも同様に錆漆を隙間に埋める感覚 で塗っていきます。
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乾いたら、軽く研ぐ。
3: 蒔地
下地の伝統技法の一つ「蒔地」。 通常下地は漆と砥の粉などを混ぜて層を作っていくのに対し、蒔地は漆を素地に直接塗り、乾かないうちに地の粉 を蒔き、層を作る方法です。蒔いた後は漆を染み込ませ、粉を固めます。その後、軽く研ぎ、布着せのときと同じように、少しツブツブしている蒔地の面に錆漆を塗り、ツブツブ感を無くします。 この工程を2回繰り返します。
4: 錆地(さびじ) 砥之粉と漆を混ぜたもの(錆漆)を塗っていきます。→乾いたら、研ぎ、形を整え、小さな欠けや凸凹をなくして いく。
この工程を3回ほど行います。
5: 粗を探すための塗り➕ つくろい錆(錆漆) 4の錆地で形をしっかり整えたと思っていても、漆を塗ったり、塗って研いだりすることで、小さな凹みや歪みなど知ることができるので、粗を探すための塗りを行います。 ここまでの下地工程の精度によって、ここで修正する箇所が多かったり少なかったりがわかるので、私にとっては 緊張する工程でもあります。 大学では「捨て塗り(すてぬり)」と言っていましたが、正式名称なのか、合っているのかわかりませんので、ここでは「粗を探すための塗り」と表記しました。
凹みや傷があった場合は錆漆で修正を何度もおこなっていく(つくろい錆)。
6: 下塗り
形が整えたら、塗りを行います。乾いたら、漆の塗面を平らにするために炭研ぎを行います(塗った際にできる刷毛の跡などを研ぎ消す)。
7: 中塗り 下塗り同様に塗り、研ぎます。
[ 加飾 ]
形の精度も上がった中塗りから、加飾を始めていきます。
8: 加飾 螺鈿、卵殻、金粉、銀粉など、厚みがそれぞれ違うものを使用するので、完成したときの仕上がりによって貼っていく順番を決めていきます。 棗は完成したときには凸凹が少なく、できるだけフラットな面にしたかったので厚みのある卵殻から貼る。
1,卵殻を黒漆で貼っていく。
2,漆が乾いたら、黒漆で塗る。乾いたら研ぐ。
このような1,~2,の工程を、素材に合わせて繰り返す。
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ここからまた螺鈿を貼り、わざとポコッとするようにしたり、平蒔絵をしたり、上から更に加飾を施している。
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十分に乾燥させた後、炭で、表面を研ぐ。 はじめは木目の細かな炭から始めて、仕上げは粗い炭へと使い分ける。 炭の跡を消して完全な平面にし、角(かど)の部分がきっちりたつように研ぎつける「胴刷り(どうずり)」をする。
油に砥之粉をまぜたものやコンパウンドなどを綿布につけて磨く。 そのあとは綿で国産漆を使い、摺り漆をして研ぎ面に染み込ませる。 乾いた後、手のひらに菜種油と鹿の角粉(つのこ)などをつけて、磨きあげる。漆の表面を鏡のように美しく仕上げる ためには、この工程を数回繰り返します。
これで完成となります。
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こんなに多くの工程を経て美しい作品が生まれるのですね。
吉田さんの作品は繊細で可憐で上品で、全てが美しく、見ているだけでも幸せな気持ちになります。
<吉田 まゆ>
『素材である漆は、塗り重ねるたびに空気も積み重なり、それを研ぎ出すことは、色の層と共に重なり合った周囲の音や匂いまで磨き出すようで、そこに重ねてきた時間をも感じさせます。
その美しさを、自然の移ろいや記憶の中の景色などをモチーフに表現を試みています。
1988年 千葉県生まれ
2016年 金沢美術工芸大学工芸科 漆・木工コース 卒業
2018年 金沢美術工芸大学大学院 修士課程工芸専攻 修了
2021年 金沢卯辰山工芸工房 修了
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