アニメ艦これは「どうしてこうなった」のだろう? ~十話から見えたこと~ | 十姉妹日和

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つれづれに書いた日記のようなものです。

アニメ艦これと、シンデレラガールズの第三話が終わったとき、この二つの作品を比較して「アニメ艦これと比べて、シンデレラガールズの評価が高いのは、プロデューサーの魅力が大きいのではないか?」というようなことを書きました。

これは今でも大体当たっていたと思います。


そもそも、なぜ艦これはプレイヤーの分身である「提督」を本編中に出さなかったのか?

これはたぶん「視聴者が感情移入しやすいように、あえて提督を不在にしているんじゃないか」と思ったんですが、現在第10話が終了した時点になってから、どうもそれだけではないように思えてきました。


その理由は現在物議をかもしている、あの問題。

つまり、鎮守府の提督(司令官)が、なぜ突然他にいた吹雪を呼び寄せたのか、ということに関してです。


これについては第一話の放送時点で。

「なんでろくに訓練もしてない艦娘をいきなり出撃させてるんだ」

という疑問がありましたし、その後も吹雪は今後の戦局を考える上での重要な艦娘らしいという暗示はありましたが、その根拠は結局示されてきませんでした。

ですが、その理由がついに10話で明らかにされたのです。

その理由とは。


「提督が夢に見たから」


はい。まったく意味がわかりません。

より正確にいえば。


「夢の中でウェディングドレスを着た吹雪が、提督に『私、司令官のことが大好きです!』と一生懸命にいっているのを見て、鎮守府に呼んだ」


ということだそうです。

つまり、これはそう。

「夢に出てきた吹雪がかわいかったから嫁(ケッコンカッコカリ)にしよう」

というそれだけのことなわけです。


そするとこれまでの提督の行動も大体理解できるようになります。

いきなり前線に配備したのも、駆逐艦なのに金剛や瑞鶴と主力艦隊を編成して、その旗艦に据えるなどの、一連の行動はすべて「吹雪は俺の嫁だから早くレベル上げたかったんだ」で片付けることができます。


なんか「そんなのでいいのか」という気もしますが、第10話にはこの他にも不自然な点がありました。

提督が見たという夢の中で、吹雪が告白するシーン。

この背景が、どう見ても現代の日本にしか見えません。

しかし、これまでの艦これアニメ本編を見る限り、鎮守府の周囲だけではありますが、そこが現代の日本と同じ世界なのかはわからないままです。


以上を考えると、提督の存在を含めて、このアニメがどのような世界観をもっているのか、仮説を立てることができるようになりました。


なぜか、画面に現れない提督の謎。

それを解く鍵もここにあったわけです。

つまり、提督とは。


「艦これを遊んでいるプレイヤーの誰か」


であり、それがときどき鎮守府にログインしてやってきているから、ほとんどの艦娘は会う機会がない。

こう考えると、だいぶわかるような気がします。


この「誰か」提督が艦これを遊んでいたある日、吹雪の出てくる夢を見ます。

しかもそこはまさに現代の日本でした。

そして「これまであんまり意識しなかったけど、吹雪かわいいじゃん。よし、この子秘書官にしよう!」と思い立ちます。

提督の吹雪への愛情がここからはじまったと考えれば妥当でしょう。


この提督。大和、長門、陸奥、翔鶴、瑞鶴がいて、一通りの艦娘もそろっているくらいですから、レベルはそんなに低くもないと思います。

すると、イベントなどにも挑戦しているタイプなのは間違いないでしょう。

彼は考えました。


「よし、次のイベントでは吹雪を使うぞー!」と。


このため、吹雪を主力に配属し、経験値をどんどん稼がせます。

当面の目標はまず改2にすること。

そして、いずれレベルがたまったら「ケッコンカッコカリ」をするつもりのようです。


こうすると、長門のいう「司令官の計画は残っていたが、意味がわからない部分も多い」という言葉や、吹雪を改2にすることに拘っていた理由も見えてきます。

司令官としてはさっさと改2にするのが可能なところまで上げて、今回のイベントでは赤城をはじめとする主力艦隊に入れようとしていたわけですから、その準備を整えていただけのことでした。


このまさに「プレイヤーがやりそうな行動」を具現化したようなアニメ艦これの「吹雪提督」。


これに対するニコニコ動画の反応は。

「ぶっちゃけキモい」

「艦娘たちかわいそう」

というものが多いようです。

製作者としては。

「あれ、このくらいのが感情移入できるんじゃない?」

と、考えたのかも知れませんが。

「そんな生々しいもん見たくないわ」

という視聴者の反応の方がこれは正しいと思います。


そもそも、この「プレイヤーがやりそうな行動」というのは。

「吹雪たん……吹雪たんかわいいよ……ハァ……ハァ」


というタイプの「ダメ提督」のものであり、しかもそれが本編で吹雪から「受け入れられている」あたり、余計にダメになっています。。

これがまだ叢雲や曙なら。

「は? あんた何いってるの? マジキモい」

といわれてどうにかネタにできるものの、吹雪のように純情一直線の艦娘の場合。

「司令官がそんなに私のことを思ってくれるなんて。吹雪、うれしいです!」

ということになってしまうので(事実、本編はこんな感じです)「ちょっと待て、考え直せ!」と、視聴者が突っ込みたくなるくらいシャレになりません。


そもそも駆逐艦は大体女子高生くらいの年齢に見えますから、見た目の問題も相まって、もはや「溢れ出る犯罪臭提督」とでもいう他ありません。


こうしたことを考えると、仮に艦これのプレイヤーを提督自身と考えるにせよ、どこを切り取るかは重要だということがよくわかります。


プレイヤーたちは、それぞれの艦娘に対してもちろん愛はあります。

好きなシチュもあると思います。

ですが、あくまでそれは「画面の外」の話のことであって、物語としての艦隊これくしょんの中に、そういう要素を入れたらただの雑音にしかなりません。

ましてこういう「一番ダメな部分」で「艦娘への愛」を語るのはご法度だろうと思います。


大体、なんでこうした感情を全面に出すのなら、如月を三話で撃沈させ、七話で祥鳳を大破炎上させたのか(続報はありません)が不可解になります。

あくまで提督と艦娘の物語が中心なら、あえて史実をおかしな形で織り交ざる意味はまずなかったでしょう。

そして彼女たちを秘書艦(嫁)にしている提督たちからすれば「本編で嫁が沈んだ」ということの方がショックなわけですから、それに対する説明で。

「アニメの提督は吹雪が嫁で、主力の艦娘(赤城、金剛など)意外は愛着ないから、轟沈させてもいいと思ってるんですよ」

といわれたら、納得いかないのは仕方ないだろうと思います。


現在、アニメの提督は「行方不明」ということにされていますが(垢バンされたとも評判)、これでイベント海域が終わってからひょっこりと現れて吹雪とケッコンカッコカリをして終了、ということになったら「なんじゃこりゃ」といわれるのは間違いありません(吹雪の左手に指輪が、くらいかも知れませんが)。


そんな個人提督の物語なんて見たくない、という声を横目に「さあ、これは数多い提督と艦娘たちの物語のひとつにしか過ぎません。次はあなたが新しい艦娘との物語を作ってください。アニメ艦隊これくしょん、完」となれば、「誰得だよこのアニメ!」と、評価が紛糾するのが今から見えています。


せめてアニメでやるなら、もうちょっと他に理想的な提督のケースもあったのではないか? とも思いますが、ともあれ後数話で終了となりますから、ここまで来たので最後まで見守ろうと思います。



個人的な感想。

――舞風と三日月なんていなかったんや。



今回も読んでいただき、ありがとうございました。