体罰の子どもに与える影響について(2) | 世界の子どもが輝く子育てネットワーク  

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               ( 代表 明橋 大二 ) 

 北陸の冬は、晴れの日が少ないのですが、今日は青空が見えて、それだけでなんだかウキウキします。(って、まだ冬じゃないですよね・・・・・・。)

 今日も、体罰の子どもに与える影響をお伝えします。


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 体罰(子どもをたたく、ける、つねる、あるいは家の外やベランダに出す、ご飯を与えない、など)は、子どものしつけとしてしばしば行われていますが、近年、体罰についての研究が進み、体罰のマイナス面がクローズアップされてきました。


 2002年、体罰を受けた36,000人を対象にした、有名なアメリカの調査では、体罰は、一時的には親の命令に従う「効用」がある一方で、長期的には、①攻撃性が強くなる、②反社会的行動に走る、③精神疾患を発症する、などのマイナス面が見られることが判明しています。

 日本でも、体罰を用いて育てられた場合、特に言葉や社会性の発達に、はっきりと後れが生じることが明らかになりました。
 また多くの虐待は、「しつけのための体罰」と称して行われていることから、体罰は、虐待の温床となっているともいわれます。


 そこから、世界的な流れとして、家庭での体罰を含むあらゆる子どもへの暴力を禁ずる法律を制定する国が徐々に増えています。現在、多数のEU諸国、ニュージーランド、アフリカと南米の数カ国など世界で29カ国が、そのような法律を制定しています。

 そのさきがけとなったスウェーデンは、1979年に世界で初めて体罰全面禁止の法律を制定し、体罰に替わるしつけの方法について大々的なキャンペーンを行いました。その結果、1960年代には、90%以上の親が子どものしつけに体罰を使っていましたが、年々その率は下がり、2000年代には、10%以下になっています。それに伴って、スウェーデンでの虐待件数は、国際的に見てもかなり少ないレベルまで減少しました。


 日本では、学校や施設での体罰は法律で禁止されていますが、家庭での体罰は、禁止されていません。しかし日本でも、体罰のリスクがもっと啓発され、それに替わるしつけの方法(たとえば、『大好き!が伝わる ほめ方・叱り方』に書いたような)が、子どものいる家庭すべてに徹底されれば、確実に虐待の数は減ってくると思っています。


 体罰がどうして問題なのかというと、いくら冷静にと思っても、体罰にはほとんどの場合、親の感情(怒りや非難)が込められます。小さいころから頻繁に体罰を繰り返されると、子どもは萎縮し、恐怖を持ち、自信を失います。また体罰を避けるために、大人の前ではおとなしくなりますが、見ていないところでは少しも守ろうとしません。
 結果として、善悪の判断や、行動のコントロールを、主体的に学ぶ機会を奪ってしまいます。うそやごまかしを平気でやる人たちの育てられ方を調べたら、親がむやみに体罰その他の罰を与える特徴があったそうです。いちばん大切な「良心」が育っていなかったのです。これでは、しつけとはいえないでしょう。しつけの目標は、人に言われなくても、自分で判断し、自分をコントロールできることだからです。
 ですから、体罰は、どんな場合にもすべきでないと私は考えていますし、日本が批准している「子どもの権利条約」の委員会からも、体罰禁止の勧告が繰り返し行われています。


 ただ、私は体罰にも、2とおりあると思っています。1つめは、体罰が必要だと考えて行う場合。2つめは、「本当はやってはいけないこと」と知りつつ、ついついやってしまう場合です。どちらが子どもにとってリスクが高いかといえば、前者のほうです。ですから私は、まずは、「体罰が必要という間違った認識をなくすべきだ」と考えています。思いやりのある子を育てるのに、たたいて教える必要はありません。がまん強い子になってほしいなら、まずは忍耐強く待つことです。子どもを信じれば、必ず子どもに信じられるようになります。やった結果は、自分に返ってくるのです。


 後者のように、「本当はいけない」という自覚がある場合は、抑止力も働きますし、何らかのフォローがなされるでしょう。その気持ちさえあれば、やがて、「したくない体罰をせずに済むようになった」という日が、必ず来ると私は思います。頭ではわかっていてもどうしてもしてしまうのは、それだけ精神的にいっぱいいっぱいになっている、ということなので、ぜひ周囲のサポートを得ていただきだいと思います。


明橋 大二『子育てハッピーアドバイス 大好き!が伝わる ほめ方・叱り方2』
 (一万年堂出版、2011年)