今回の投稿は、日本人初のNATO本部要員として勤務することになった女性自衛官の栗田千寿さんです。
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陸上自衛隊の栗田千寿です。
現在、ブリュッセルの北大西洋条約機構(NATO)で、事務総長特別代表(女性、平和、安全保障担当)の補佐官として昨年12月から勤務しています。
左から特別代表、岸田外務大臣、筆者
NATOでは初めての日本人職員で、アジア系職員が少ない中、なぜここにいるの?と不思議な顔をされ続け、最初はまるで珍獣になったような気分でした。
初めは、自分に何ができるのだろう?と考え通しでしたが、友人もできて、珍獣でもいいじゃないか、と思い始めた頃なんだ、よく見たら周りも珍獣ばかりじゃないか、と気づきました。
それぞれの言葉を話して、それぞれの理由でここに来ている。
自分だけがマイノリティだと思えば不利に思ってしまいますが、「みんな」もそれぞれマイノリティなのかも!
NATOへ派遣されるとは全く考えていなかったのですが、なぜだろうとふと、これまでを振り返ってみると意外にも、ちゃんとつながっていることに気づきました。
中高は女子校で育ちました。
「社会では男性の方が選択肢が多いみたいだから、できれば男性に生まれたかった。」と漠然と思いつつも、「女性だからこそできることが、この社会に絶対あるはず」となぜか確信しつつ。
そして、突然知った「自衛官」という道。
自衛隊では、大卒者は幹部候補生学校での教育を経て、通常20代前半で「3尉」に任官します。
女性でも「幹部」になれる!
階級章をつけて勤務する、男女平等の自衛隊。
このこだわりは男性に生まれていれば持たなかったのかもしれません。
いざ入隊してみると男女混成の幹部候補生学校や部隊配属後の訓練で、男性との体力的な差を痛感しつつ時には「多数が正義」なんだろうかと悩みつつも女性だからこそ何か違う役割があるはずだと、いつも考えてきました。
その役割が明確にわかったのは30代になり、PKOに軍事連絡要員として参加した4年前でした。
女性要員の方が、現地住民への接触が容易になり、情報や信頼感を得やすい、また現地女性の励ましや参画のきっかけになり得るんだということを身をもって感じました。
世界には、紛争の影響を受けて、不安定な国がたくさんあります。
そういった国々では、被害者の多くは女性ですし、平和プロセスの交渉などへの女性の参画が求められています。
これこそが「女性、平和、安全保障」のニーズ。
東日本大震災後の災害派遣において女性自衛官が活躍したのも同じだと思います。
被災者の方々の、特に女性特有のニーズを聞いたり、入浴支援などで男性・女性の両方に配慮する活動をしたり。
「女性がいると組織の活動の幅が広がる」と言われるのは、きっとこういうことなんでしょうね。
これまで探し求めていた答えが見つかりました。
「女性でもできること」ではなく、「女性だからできること」が ある!
NATO特別代表はこう言っています。
「多様性は、組織や社会を強くする。だから女性の参画は重要なんだよ」と。
ただの「マイノリティ」だけでは「変わった人」で終わってしまうかもしれませんが「マイノリティ」だからこそ組織や社会に「違う視点」を入れることができるし、それが今後求められていくんだ、と考えています。
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◆次回予告
スタッフです。
次回の投稿は、東京消防庁金町消防署の畠山雅代さんです。
お楽しみに☆