望 遠
           作:芦田みのり

宇宙の階段を上りたくなって
見上げれば
木星のオレンジ色
が、ぽつり

おひつじ座のラムダ星は
ひとつに見えて、実は二つです
天体望遠鏡を覗くと
ひとつは白く見え、もう一つは
それに寄り添うように黄色っぽく見えます

天体望遠鏡の丸いレンズは
時間の存在する感覚を失くし
見えないものも巨大になって
それから―それから
暗い森、うつろな空に
目を凝らし
すべる光をすくい取った

あれがオリオン座、あれがプレデウス星団
あれがふたご座、あれがカシオペア座
あれが北極星

まだ見えない
と、傍らの人の息が昇る
天の極限まで
到達する…光と点は
白くなって消え
また新たな星の誕生
見えたよ
と、宇宙の階段を下りて
かさかさと
粒子になっていく
声を聞いた


〈芦田みのりプロフィール〉
詩の創作と朗読をしている。即興詩もレパートリー。
目下、開口一番は朗読のホームグラウンド。
2008年より、かとうゆかと「朗読会 おも茶箱」を都内にて不定期開催している。
「詩集 おもちゃばこ」も共同制作。
(次回の朗読会は、2012年7月1日(日)、カフェギャラリー縁(東京都清瀬市)にて)
2008年、2009年には、毎年アイルランドで開催されるイェイツ・インターナショナル・サマースクールに参加。その経験を生かしバイリンガル詩誌・TOY BOXを制作、またバイリンガル朗読会も企画した。
書道も趣味で2011年2月に、日本アートギャラリー(千葉県市川市)にて個展開催。
五行歌誌、「彩」同人。