今期エッセンの新作の中で、すでにプレイしたゲームの印象などをまとめてみました。
個人的な注目作のうち未だプレイできていないのが“テラ・ミスティカ”、“スノードニア”、“サバービア”、“北のヴェニス”、“ルール石炭輸送”、“タヒチ”、“グランドフロア”など少なくないのですがこれらはまた別の機会に。
今期エッセンの個人的ベスト。
フリークにはお馴染みの慣れ親しんだメカニクスと見たこともないド迫力の歯車から生まれた新しい傑作“ツォルキン”。
ワーカープレイスメントの新機軸だが、いろんな意味でバランスもよく、随所で唸らされること多し。
あえて欠点をあげるとすれば3人プレイ時のダミーの導入、初回時のインストの煩雑さなどだがいずれもプレイヤー側の贅沢な悩みでしかない。
評価はやや甘めで9.5点。(プレイ回数5)
今期エッセンの次点は“蟻の国”。
フランスのフリーク向けメーカーの雄、イスタリからの、かつての黄金時代を思わせる快作。
繊細なマネジメントと陣取りの妙。
蟻の縄張り争いという斬新なテーマが完成度の高いシステムと見事にマッチングしており、フリークの心を掴む。
マルチが嫌いでなければ是非どうぞ。
評価は9.0点。(プレイ回数4か5)
キーシリーズ最新作はシリーズ最高作だった。
アイコン化された効果のタイルをめぐる仁義なき戦い“キーフラワー”。
トリックテイクのマストフォローがごときメカニクスが実によく効いていて、ヒリヒリとする90分がまったくダレることがない。
特異な緑ミープルという小技や故意にタイルのバランスを崩していると思われる点は手練デザイナーならでは。
圧倒的な完成度の高さがここにある。
評価は8.5点。(プレイ回数4)
“トロワ”の作者の新作、“ギンコポリス(銀杏都市)”。
最初プレイしたときはシステムやルールを追うだけで精一杯でしたが理解してしまえば存外シンプルなシステムで滅法面白い。
今期エッセン中斬新さ、新規性で選ぶならこれ。
まだ見えてない部分もありそうだが、ルールの洗練度など実に素晴らしく、流石はパールゲームズだと唸らざるをえない。
評価はやや辛めで8.0点。(プレイ回数4)
先述“キーフラワー”のブリーズデイルによるカードゲーム“ウィ・ウィル・ウォック・ユー”。
ダッチオークションとセットコレクションを豊かなインタラクションの中で楽しむ。
アートワークに目がいきがちだがシステムの完成度は抜群に高い。
評価は8.0点。(プレイ回数5)
シャハトのリメイク作“コール・トゥ・グローリー”。
シンプルかつジレンマ濃厚なセットコレクション。何度かのリメイクを経て遂に完成した感強し。
自分のセットが他人に上書きされる緊張感がジレンマをも生み出している。
渋く美しいアートワークは“忍者刀”の人でこの人は日本風のイラストを描かせるとほんとに上手いな、とも。
バリアント2種はまだ試していない。
評価8.0点。(プレイ回数3)
巨匠クラマー&キースリングによるハンスからの期待の新作。
ゲーマーズゲームというにはシンプルすぎるピュアユーロの王道。このシンプルさは高く評価したいところ。
慣れたら添付の上級ルールを導入できるなど懐は深い。
ジレンマは素晴らしいが若干一本調子というか、盛り上がりに欠けるというか、テーマ性は弱い。
上級ルールをやり込むことで上方修正の可能性も高いが、現時点での評価はやや辛めで7.5点。(プレイ回数3)
クニツィア会心の一作“秦”。
シンプルながら氏ならではの良質なジレンマと収束性の高さ、リバーシブルボードなど評価できる点は多い。
引き運はあるが適度で、良質なファミリーゲームといえる。
何度もプレイしたくなる取り回しの良さ。
評価は7.5点。(プレイ回数1)
地味渋な株式ゲームの佳作“メルクリウス”。
手頃な株式ゲームのこれはニュースタンダードか。
あまりにも地味、単調な点で受け入れられない人もいるかもしれないが。
アートワークも遊び心の一切ない渋いものでまさに大人(紳士?)のためのゲーム。
評価は7.5点。(プレイ回数2)
“オドヴィル”、奇妙な村というゲーム。
特に奇異ではないのにどことなく不思議なプレイ感がある。
運要素やや強めと感じる向きもありえるが、システムはスタンダードそのもの。
3人で1回しかプレイしておらず、4人以上でもやってみたいところ。
評価は7.5点。
“シベリア・カードゲーム”。
ボードゲーム“シベリア”の名実共にカードゲーム版。
ストックハウゼンはカードゲームの名手である、と。実に良質で手堅い一作。
やや辛め7.0点。(プレイ回数2)
遠い海から来た“クー”。
ブラフあり、というのが想像以上にガツンとくる衝撃だった。
ルール解釈をめぐって若干の不明点があるがゲームは充分面白い。
某国産同人ゲームとよく比較されるが僕はあちらの方が好み。
7.0点。(プレイ回数1)
ボザのセットコレクション“東海道”。
45分で終わる、ゆるーいファミリーゲーム。
もうちょっとピリピリしてる方が好みだが物見遊山も悪くない。しかしターゲットはいまいち希釈というかはっきりしないというか…。まあ、家族、なのかね。
一度本作をゲーマー5人でガチガチに長考OKでプレイするのが夢w(ガラリと印象が変わったりして…。)
7.0点。(プレイ回数3)
テーマよし、システムよし、アートワークもそそるし、デザイナーはドーンだし、で期待はしていたけれど、こちらの期待が大きかったか。
いや悪くはないし、面白いことは面白い…。
しかしあの“ゴア”を作った人にしてはなー、という感じはある。まあそれを言うのも酷ではある。
ちょっとバランス調整不足ではないか。
7.0点。(プレイ回数1)
惜しい、いや実に惜しい。
これで収束性よく90~120分でしっかり終わるなら傑作だった。
傑作“プエルトリコ”ばりのバリアブルフェイズのメカニクスは実によく効いているし、唸らされる場面も少なくない。
システムとテーマのマッチングも成功している。
国内未流通“方舟とノア”という面白ゲーム。
評価はやや辛めで7.0点。(プレイ回数1)
宇宙開発という胸躍るテーマ、“1969”。
ダイス運に左右される運ゲーかと思ってましたがまあそうでもない。
が前半のあまりのカツカツ感と後半のユルユル感のギャップは大きい。
いい評判をあまり聞かないけれど僕はそこまで悪いとは思ってなくて。(じゃあいいのか?と聞かれるとあれですが…)
7.0点。(プレイ回数1)
ジェフリー・D・アラーズによる本格ユーロ“ニュー・アムステルダム”。
3人で1回やっただけの印象だとバランスの緩い、ふわふわしたゲーム。
システム面での完成度は高そうだし、是非とも4か5で再戦したいタイトル。
木製コンポーネントの質、量には圧倒される。
結局ホワイトゴブリンに足りないのは入念なデベロップであろうか。
上方修正の可能性を秘めた現時点7.0点。
フリーゼによる自信の過去作のリメイク。
邦題はアークライトが“思わぬ拾い物”と付けている。
シンプルなバッティングとセットコレクションに上位下位の味付けを少々といった感じのゲーム。
悪くない、面白い、でも…、という感じが拭えないもどかしさはある。
場合によっては明らかに最適選択肢一択という場面もあってこれはデザインの失敗という気もするのだな。
6.5点。(プレイ回数1)
“ラッタス・カードゲーム”。
一種のワーカープレイスメントで、悪くはない、面白い、でも平坦な印象でインパクトには欠ける。
アートワーク面のデザイン、機能的なレイアウトは流石で、この辺りの仕事ぶりは白ゴブのいいところ。
6.5点。(プレイ回数3)
クニツィアのお手軽株ゲーム“スペクタクルム”。
このシンプルさをどう捉えるかで評価は分かれそうだ。
収束性はよく、良質なジレンマもある。が“これじゃないといけない”感は希薄、というか訴求力にやや不安は残る。
6.5点。(プレイ回数1)
アミーゴ発のセットコレクション“マインズ”。
両隣のプレイヤーとの競合でインタラクションを発生させるタイプ。
印象はやや平凡だったが、リプレイ欲求は高く、今後評価が伸びる可能性も。
6.5点。(プレイ回数1)
スプロッターからの期待作“グレートジンバブエ”。
ひとことで言うと“ダイヤの原石”。ぱっと見は真っ黒い炭(でも実は…)、という感じ。
ルールブックは要リライト。プレイアビリティをメインに再デベロップも要求したいところではあるが、まあスプロッターだから…(とはほんとは言いたくないw)。
フリークがなんとか見出せる本作の面白み、醍醐味はひとえにゲーマーズゲーム特有のハードルの高さからくるもので、このあまりに高いハードルをデベロップに時間をかけることで少しでも低くしていかないことには商業的な成功は覚束ないだろう。(いやスプロッターがそれを目指しているかどうかはわからないけれど…)
アートワーク、とくにカードのイラストは実に美しく、味があって惚れ惚れする。
厳しく6.0点。(プレイ回数1)
こうしてみてみると今回のエッセンはよく言われるように豊作だったのだと思われます。今回7点以上をつけたタイトルはどれもまずまずの面白さはあると思われますし。
次回のエッセンでまた未知なる傑作と出会えることを願いつつ、それまではこれらの秀作のリプレイに励みたいものです。