おそうめんを流していた。
嫁とふたりでおそうめんを流しながら、いつもの食事の時のように、この国の憂慮すべき未来のことや、終わらない宗教紛争のことについて議論していた。
にわかに僕は席を立つと、セルフサービスの熱いお茶を二杯くんだ。
そして、宗教紛争に心を痛めながらおそうめんをすすっている嫁の待つ席へと戻った。
夜のとばりが降り始め、裸電球の明かりが辺りを包み始めていた。
相変わらず議論は続いていた。
資本主義の幻想について、国政について。
尽きない議論を一区切り、乾いた喉で湯飲み茶碗に目をやると、ハエが浮いていた。
お茶にダイブしてお亡くなりになった様子だった。
おそうめんだけが何事もなかったかのように流れていた。
僕は嫁の分のお茶を酌みにまたセルフサービスのドリンクサーバーへと向かった。
用件を済ませるとまた、国政を案じつつおそうめんをすすっている嫁の待つ席へと戻った。
紺碧の空は緩やかに闇に姿を変え始めていた。
議論は再開された。
近代がもたらした文化の消失と社会の在り方、現代における芸術の役割と可能性。
尽きない議論を一区切り、乾いた喉で湯飲み茶碗に目をやると、ハエが浮いていた。
二回目の出来事であり、僕も嫁も少し動揺していた、しかし。
おそうめんだけが何事もなかったかのように流れていた。
おそうめんはこんな時も冷静だった。
冷製だけにねやかましわ。
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