胚移植後に笑う事で妊娠率が有意に上昇したという論文が2011年のFertility and Sterilityの5月号に報告されました。興味深い結果なのでご紹介します。
背景
体外受精などの不妊治療はストレスと密接な関係があるという報告があります。ストレスを減らすことで成績が向上したという報告がいくつかあります。
今回胚移植後に「笑い」という手段でストレスを軽減させることで移植の結果に変化が現れるかどうかを検討しました。
方法
2005年から2006年の間にイスラエルの病院で体外受精を受けている219名の女性を2つのグループに分けて検討しました。
新鮮胚移植が187症例、凍結胚移植が32症例でした。
移植数は1~2個が133症例、3~4個が86症例でした。
一つグループ(109名)には胚移植直後のベットで寝ている間にプロのお笑いの人が12~15分間簡単なコント、マジック、手品を行い患者の笑いをとりリラックスさせまりた。
一方コントロール(110名)群には通常の胚移植を実施してそのようなお笑いは一切行いませんでした。
結果
胚移植後にコント、マジック、手品等で笑いをとったグループの女性の36.4%が妊娠しました。一方そうでないコントロール群の妊娠率は20.2%でした。
P=0.008となり笑いの群で妊娠率は有意に上昇しました。
(adjusted odds ratio, 2.67; 95% confidence interval, 1.36-5.24)
結論
胚移植後、笑いによりリラックスする事により治療によるストレスが軽減されて妊娠率を高めるのではないかと考えられます。症例数が少ないので確定するには今後の更なる研究が必要です。
この結果から言える事
過去にも不妊治療とストレスの関係は度々指摘され報告されてきました。今回は移植後の短時間のストレスをなくすことで妊娠率の改善を報告しています。今回は移植した胚の状態等については検討されていないので今後の更なる検討を期待したいところです。
できるだけストレスをなくして不妊治療に臨む事が妊娠のためには望ましいと思われます。
The effect of medical clowning on pregnancy rates after in vitro fertilization and embryo transfer.
Friedler S, Glasser S, Azani L, Freedman LS, Raziel A, Strassburger D, Ron-El R, Lerner-Geva L.
Fertil Steril. 2011 May;95(6):2127-30