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今回は、アメリカ政府に対する「グランデール」従軍慰安婦・撤去誓願申請の署名活動にて気付いた、日本の「外向安全保障」の在りをお話ししたいと思います。
その前に、経済学者の土井 丈郎先生が昨日投稿されたブログ記事を紹介させて頂きます。


◎反中反韓感情が反米感情と結合すれば袋小路 - 土居 丈朗
 👉http://blogos.com/article/77370/ 

非常に示唆に富んだ内容でまとめるのに苦労しましたが、以下のように要約出来ると思います。

我が国ナショナリズムの高揚によって防衛費への増加圧力が嵩むことはあっても、少子高齢化の一途を辿る我が国においては、医療・介護・年金と高齢化に伴う社会保障費の増大の増大と両立することはあり得ない。基礎的財政収支(プライマリー・バランス)厳しい環境下では、これら問題にどう対応するかが重要な課題である。


ナショナリズムが短絡的に軍拡競争に転じるようでは、少なくとも我が国の財政は持たない。第二次大戦後の日本は、日米安全保障条約を基軸とした安全保障・外交政策を続けてきた。
第2次安倍内閣でも、この路線を踏襲している限りは、防衛費の際限なき増大と軍国化の懸念はない。

また、国内において親米感情が支配的であれば、日米基軸路線は堅持出来得る。しかし、反中・反韓感情がナショナリズムに火を付け、さらには反米感情と結合した場合、今後、日本は困難な外交・安全保障政策を迫られる。


俗に言う新自由主義批判は誤解に基づくもの。これとTPP反対論と併せての反米感情が「増幅」し、更に反中国・反韓国の感情と「結合」したものが世論で多数となった場合、日米同盟を前提とした東アジアの外交・安全保証政策は転換を迫られる。即ち、反中・反韓かつ反米という発想では、日本は国際的に孤立無援状態に陥る。

以上の内容といったところでしょうか…
続いて、土居 丈朗氏の問題提起を踏まえて、今回の「慰安婦像」問題についてふれてみたいと思います。

世界は第二次世界大戦後の東西冷戦構造の終局から20年以上を数え、その対立構造を二極化から無極・多極化へと混迷を極めております。
その過程において、日本が健全なナショナリズムを取り戻し、日本人がその名誉と尊厳を主張することは当然の成行きと言えます。
一方で、日本が対応をせまられております外交・安全保証政策は、土居氏が指摘されているように、とても複雑な連立方程式を解くような慎重さも必要とされているのです。
前回ブログで指摘させて頂きました通り、今回の「グレンデール」従軍慰安婦・撤去誓願の署名活動には、米国政府の申請プラットフォー”We the People”の開設趣意を良く理解できないままに、119,301の署名が集まってしまいました(日本時間7日、22:25 現在)これに対しては、米国政府もさぞかし対応に困ることでしょう。いや、前回、2012年7月のなでしこアクションが起こした「米国下院慰安婦決議撤廃」時と同様に静観を続ける可能性の方が高いと言えます。
今後、更なる署名活動を続けていくことは、折角に慎重な舵取り対処しております「安倍政権」の外交・安全保障政策を、決して押しする結果とはなりません

宜しいでしょうか、日本を主体とする外交・安全保障政策は、反米でも反中でも、ましてや反韓でもない、「日本が真ん中」のそれなのです。
今回の件で、署名をされた方々をはじめ多くの人達が、過酷で狡猾、一筋縄ではいかない「国際外交」の現実を目の当たりにして、傷つくかもしれません。
しかし、それを他山の石として、私たちはより堅牢で堅実な理論を構築し、新しい時代の外交・安全保障政策を模索し、「積極的平和主義」を唱え「日本を取り戻す」努力を続けていかなければならないのです。
時間がかかりますが、慎重に粘り強く続けていかなければならないのです。

今回も、最後まで読んで頂いてありがとうございました。