只見線とフラワー長井線がプロレスでつながる――全国に広げようプロレス鉄道の輪・後編 | KEN筆.txt

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鈴木健.txtブログ――プロレス、音楽、演劇、映画等の表現ジャンルについて伝えたいこと

BGM:NeoBallad『山形大黒舞』

 

 

 

さてさて、長井駅北側特設リングにおける「駅前プロレス」は観戦無料とあって、開始前から多くの方々が詰めかけた。青空の中、このような風景が現出。やはりみちのくは野外が似合う。

 



開会セレモニーでは実行委員長の喜早(きそう)洋介さんが遺影を掲げる中、昨年1月7日に38歳の若さで他界された元みちのくプロレスの選手・井上治さんを追悼する黙とうと10カウントゴングが鳴らされた。山形県(米沢市)出身ということもあり、井上さんはローカル線プロレスでレフェリーも務めた。
 



その後、バトルロイヤルで勝ち残れなかった前王者・日向寺塁からPWLL無差別級のベルトが返還される。指を3本立てているのは「第3代王者」ということか。
 

 

そして第1試合の日向寺塁&梶トマトvs卍丸&郡司歩が開始。空の青とトマトの赤がマッチする。郡司が奮闘するも、日向寺の日本一カッコいいダイビング・エルボードロップに沈んだ。勝者チームはそろってトマトダンス。

 

 

★10月1日=山形・長井駅北側特設リング(観衆未発表)

▼第1試合(20分1本勝負)

○日向寺塁&梶トマト(10分31秒、片エビ固め)卍丸&郡司歩●

※ダイビング・エルボードロップ

 

続く第2試合には“狙われた男”こと大和ヒロシが登場。ここでも『ノリノリ海苔のリノベーション』を熱唱。なお、君津市議員になってからはこれが2試合目となる(初試合は9・26おっこんで5人を相手に61分35秒も闘っている)。

 



先に入場したフジタ“Jr”ハヤトは最後に入場するがばいじいちゃんがなかなか姿を現さないためお眠の時間に。ようやく姿が確認されたものの、アンダーテイカーばりに時間をかけて歩を進める。
 



第2試合はザ・グレート・サスケ&フジタ“Jr”ハヤト&義経&シーサー王vsMUSASHI&Ken45°&大和ヒロシ&がばいじいちゃんの8人タッグマッチ。サスケとハヤト、ハヤトと義経が同じチームになるのはレアだ。
 

試合中に何度か列車が走り去ったものの、技を出した瞬間に通ったシーンはこの時のみ。マスターが「大和ヒロシ、当選おめでとう!」と叫びながらセントーン・アトミコを放つと、ホームを出発した列車が奇跡的なタイミングでその背後を通過していった。ところが、議員としての大先輩からお祝いを受けながら技をかわした大和先生。駅前プロレスならではの見せ場でありながら保身に走ったあたり、政治家としての前途が多難と言わざるを得まい。

 



同じコーナーに立ったハヤトと義経が何やらにこやかに会話していた。このようなシーンが見られるとは…30年間、みちのくを見続けてきてよかった。
 



長井駅駅舎をバックにロープを渡り歩くじいちゃん。だが、バランスを崩し使い古された股間を打ちつけ年甲斐もなく悶絶。
 



サスケとハヤトの間でタッチが成立。中盤を過ぎるとMUSASHIとハヤトがみちのく現在形の闘いを見せる。
 



列車内に続き、野外でもムーンサルト(ラ・ケブラーダ)を見せた義経。一日のうちに車内外でこの技を出したのは、たぶん義経が人類史上初。

 



場外戦の最中、じいちゃんは客席に座り一休み。その隣では大和が本格的にバテている。そんなじいちゃんを捕まえたハヤトは明治生まれの人生の先人をボコボコに。逆説的に「お年寄りを大切にしましょう」と訴える意図だったに違いない。

 



こちらはBAD BOY対決! いつか一騎打ちも見たいものだ。

 



ハヤトがセットしたKenへシーサー王+マスター+義経によるおんぶプレス。最後はシーサー王が振り上げ式のパワーボムでピンフォールを奪った。

 

 

▼第2試合(30分1本勝負)

ザ・グレート・サスケ&フジタ“Jr”ハヤト&義経&○シーサー王(19分50秒、エビ固め)MUSASHI&Ken45°●&大和ヒロシ&がばいじいちゃん

※ファイナルシーサーDX

 

この4人がともに勝ち名乗りをあげるシーンが見られるとは…みちのくの歴史が詰まりまくりなワンショットだ。

 



ハヤトはローカル線プロレスにも東北ジュニアヘビー級とともにLIDET UWFのベルトも持ってきて、大会後も撮影に応じていた。地方のファンにとって、GLEATのベルトを生で見られるのは貴重だ。
 



そしていよいよメインイベント。入場の時点で熊は暴れまくる。これにはタクシー会社の猫だけでなく、ご主人に連れられてきたワンちゃんも驚いただろう。
 



そんな熊だが、記念撮影には静かに応じる。でもこのあと、贈呈された花束を食っていた。



いきなり場外戦に持ち込んだOSO11は、広場を飛び出し道路まで移動しのはしたろうをいたぶる。猫は、写真向かってすぐ左にいたはず。巻き込まれなくてよかった。県でも熊出没注意なのだ。

 

 

さらに荒れるOSOは餌の魚(鮭なの?)を振り回し殴打。鉄柱に打ちつけられた腰のダメージが響き、のはしは防戦一方。その腰を本家ベアハッグでさらにいたぶる。

 



とどめとばかりにカナディアン・バックブリーカーで腰を破壊にかかったOSO。ここでのはしは機転を効かし、コーナーポストを蹴った勢いでリバース。この日は10月1日…アントニオ猪木vsアンドレ・ザ・ジャイアントの名シーンをオマージュする形に。

 



ここから逆襲に転じたのはしは、空から舞い降りるダイビング・ヘッドバット一閃。ところがOSOも粘りスリーカウントを許さない。

 



ならばとマヒストラルで丸め込むとカウントが3つ入った。この日ののはしは、列車の中と外でこの技によって勝利をあげたことになる。

 

 

★PWLL無差別級王座決定戦(時間無制限1本勝負)

のはしたろう(13分58秒、ラ・マヒストラル)OSO11

※のはしが第4代王者となる

 

約6年ぶり2度目の返り咲きを果たしたのはしに、鉄道プロレスの象徴である木製のベルトが渡された。前々日からの過密スケジュール&2度に渡る列車内での試合+リングにおける試合の果てにつかんだ栄冠だ。

 

 

新王者となったのはしは「4代目として返り咲きました! どんどん防衛していきたいんですが、ローカル線プロレスは年に1回です。そこで、全国の電車プロレスのチャンピオンにどんどん挑戦していこうと思います!」と宣言。この言葉が前日の只見線プロレスで電車王となった前田誠に対してのメッセージであるのは言うまでもない。両者によるダブルタイトル戦が実現した時にこそ、真の意味で両路線はつながるのだろう。

そして、その輪をさらに広げ全国各地で開催されている列車内プロレスと交流できれば、プロレスならではのジャンルとして確立されていく。只見線もフラワー長井線も新幹線も、みんながつながったらプロレス鉄道になれる。各路線ともに活性化することが重要なのだ。

 


 

 

さて、のはしにとっての長かった2日間もこれにて終了となったわけだが、こちらはここからさらに長旅が待っていた。せっかく東北まで来たとあり、何十年ぶりかに密航しようと思い立ち、新幹線ではなく鈍行で東京まで戻ってみた。長井駅を出発する頃にはあたりも暗くなっており、新駅舎もこんな感じに。また来年も来たいものだ。



17:43に長井駅を出たあと今泉、米沢、福島、郡山、新白河、黒磯、宇都宮、大宮、赤羽と9度乗り換えし池袋へ到達したのが0:54。ここで終電がなくなったため以降はタクシーで自宅まで。この間、実に79駅へ停車した。写真は新白河-黒磯間。自分の座る車両が貸し切り状態に。昼のローカル線プロレス、前日の只見線列車内プロレスとのギャップがすさまじかった。あれは夢、幻だったのだろうか。
 



そうだ、本当に夢のような楽しい2日間だった。それもこれも、両イベントの実行委員の皆様、地元の皆様、新潟プロレス、みちのくプロレス、只見から長井まで同乗させてくれたGAINA&のはし選手をはじめとするプロレスラーたち、さらにはそこへ集まった乗車客の皆さんが同じ思いで一つになった空間だったからこそ。この喜びを、もっと多くの方々に味わっていただきたい。だから、来年こそは――。(了)