昼間動いているのは女性ばかりだ。外を歩くのも、電車の中も、買い物客もそうだ。そんなに専業主婦ばかりではないだろう。男たちはみんな仕事で工場や事務室、現場にいるのか。いつも不思議に思うのが、昼間や通勤時間帯以外に電車に乗って周囲を見まわしたら、女性ばかりなのだ。いま、太極拳の練習に通っているが、うちの倶楽部はまだ男性が多く、15人のうち5人が男性。他の倶楽部では、1人とか、女性だけのところが多い。前に、一人、男性が見学に来た。うちの倶楽部は男性がいるから、入りたいと。その人に聴いたら、男一人で肩身が狭く、孤立していたようだ。紅一点でもてるというのと逆で、黒一点は疎外される。

 老後でもそうで、男たちはどこにいる。女性だけが社会では目立つのに、女性の社会進出は世界でも遅れていると言われる。下位のほうだと批判されているのに、男はどこで何をしているのか。

 旅行に行っても、新幹線内は女性が多く、飛行機もそう、昔からそうで、女性のグループばかりが目立つ。わたしも飛行機では隣が若い女性のときが多い。別に話もないが、ツアーに参加すると、夫婦はいるが、後は女性客ばかりで、男一人が羊の中の狼だ。その狼も圧倒されて、静かにしている。

 山歩きも、ハイキングも、日曜になると、近郊の山は賑わうが、高齢の女性軍や、おばさん軍団でみなさんリュックとポールを手にぞろぞろと駅に降りる。じいさんの姿は見ない。連れだって、花見に行ったり、自然と親しむ散策は女性が多い。

 旦那さんは置いてゆくのか。女子会もそうだが、女性たちはこぞってつるんで、何かをいつも一緒にしている。男たちはつるまない。みんな孤独で寂しい。ゴルフぐらいではないのか。一緒に何かをやったり、どこかに行きましょうということはまずない。

 

 わたしは出たがりで、家にいることがない。休みの日でも、部屋に一日いたりはしない。雨でも暴風でも、とにかく、外に出る。それだから、そういう女性たちの中にいて、おかしいと思うのだ。

 どうして男たちはつるまないのか。女たちはつるむのか。その生態はどうなっているのか。動物として群れたがるのか、一匹狼なのか、そのヒトの習性が知りたい。

 知り合いの女性たちに言われた。いつもわたしは一人で旅行しているのと。それが彼女らにはどうも不思議に思えるらしい。相手がいたら、一緒に旅友として歩きたいが、まずは足手まといになる。わたしと歩く速度が違う。妻がいたときでもそうで、いつも後ろを振り向いて、ちゃんとついてきているかと確認していた。先にさっさと歩くから、奥さんに嫌われていた。だらだらと歩くのが嫌なので、自分のペースでいつも歩いていて、奥さんは足にマメができたと不平ばかりこぼしていた。いつか、振り向いたら、いなかった。あれから十何年か。みんなどこに行ったのか。

 趣味が違うと、行く先々でも意見がぶつかる。女性は買い物とグルメ。わたしはそのどちらも興味がない。前は古本屋と図書館と遺跡巡りと博物館、美術館と連れ回したら、退屈して、そのうち一緒に行くとは言わなくなり、いつしか海外旅行もわたし一人で行くようになる。韓国に家族で行ったときは、ブーブーとうるさく、世界遺産の宮殿でも、歩かせてとガイドについてゆけないと、怒っていたから、もう、連れてゆくのはやめた。

 きっとそういうことがあるから、旦那さんは自分の好きな一人の世界に入りびたる。孤独な趣味が多いのか。カメラも最近は高齢者たちがつるんで歩いて撮影会をしているが、あれはサークルなのだろう。先生がいて、指導してくれる。わたしのカメラ歴は長く、若いときから、何十台も使ったから、いまさら、写し方の講習もいらない。芸術写真でも記録写真でもないから、どうでも写している。スマホでいい。

 どこに行くのも一人で気楽。それが男の生きる道と、恰好つけているのではない。男たちが仲良しというのもあまり聴いたことがない。腕組んでいつも一緒では不気味だ。何かあるのかと勘ぐられる。その点、女性たちはいくつになっても、一人よりは集団行動。女一人が歩いていると、逆に何かあるのかと、心配される。事情があるのか、寂しい湖にいたりすると、自殺でもしまいかと、いらぬ気を回す。

 会話も女性はすごい。話すことが山とあり尽きないのだ。男同士は別に話すこともなく、実にそっけなく静かなものだ。会話量が違う。女性の話好きはそれ自体が運動なのだ。それだから、ストレスも吐き出し、会話体操で健康長生き、男たちは孤独死。寂しく死んでゆく。

 老後の生き方で、そういう集団と孤ということを研究して、コミュニティで活かすようにしたいと考えている人はいないのか。

 

 こういうことを考えたのも、つい昨日なのだが、家にピンポンとおばさんが訪問してきた。首から提げた身分証で、民生委員の方と知る。七十歳以上の一人暮らしの方の支援が必要かどうかの聞き取り調査のようだ。その紙を渡されて見たら、いろいろと記入するところがあるが、わたしを見て、大丈夫そうですねと言う。世帯は一人で出しているが、息子一家と同居しているから安心だし、太極拳もしていて、バイトでマンションの清掃もしていると話したら、若いし元気そうでと、そういう届け出は必要ありませんねと帰られた。地域では孤独死も認知もあり、一人暮らしの老人世帯の見守りもしているようだ。その夕方にも、74歳の男性の方が行方不明になりましたと、服装などを市役所の広報スピーカーで捜索していた。わたしと同じような年で認知症でいなくなる。それで見つかればいいが、どこかで死んでいたりする。男たちはいつも一人で認知も多い。女性たちは友達も多く、いつも誰かと話して繋がっているから、あまり孤独死は男よりないのではないのか。これからは男たちよ、連帯しよう。一人で引きこもるな。もっとおしゃべりしよう。男子会で麻雀したりカラオケしたり、酒を飲もう。ボケ防止にはそれらがいい。