『江南1970』感想 | 田代親世の恋する韓流LIFE

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先月末に韓国に行った時、
イ・ミンホ、キム・レウォン主演の
『江南1970』を見ました。

ドラマ『ジャイアント』でも描かれた
1970年代の江南地域の土地開発を背景にした
男たちの物語です。

この映画への出演が決まった時、
チンピラや暴力が出てくるものが
あまり好きではない私としては、
若手男優ってこういうのやりたがるんだよなあ、
イ・ミンホ、君もか~と思ったものでしたが、
これが、とっても良かったんです。

孤児で、夢も希望もなく、
孤児院仲間の兄貴分と一緒に屑拾いをしていたところから、
ある社長に拾われ、家族のように共に暮らしながら
裏社会でも顔が利く男となり、
江南開発に関わっていくことになるという男。
イ・ミンホは孤児なので人の絆に飢えていて、
キム・レウォン扮する兄貴分と一緒の時は
無邪気で嬉しそうで、
社長に出会った時は、
図体が大きいのに行き場のない子犬のように
不憫を誘う眼差しと佇まいを醸し出す。
義理堅く、自分が信じるものに対しては
揺らぎのない真っ直ぐな忠犬のような瞳を向ける。
ゴールデンレトリバーのような誠実さが
一貫して漂っているのがいい。

部下に指図したり、相手を脅したりするときは、
どこか投げやり感を出しながら押しが強くて、
『シンイ信義』のチェ・ヨン隊長のようだわ~と思ったり、
兄や父親のような恩人に対しての
人懐こさと不憫さが同居して母性本能をくすぐる様は、
『相続者たち』のキム・タンを彷彿とさせます。

社長の家族として生きて、
妹に秘めた想いを抱きながらも
兄として振る舞ったり、
号泣するシーンもあって、
どの場面もニュアンスが感じられて魅力的でした。
この男の生きざまが、
切なくて、やるせなくて、余韻が残ります。

一方のキム・レウォンも、
卑劣な男という新境地を開いてました。
ギラつくアクの強い部分を全面に出して
ベッドシーンも美しいものとは違い、
猥雑な荒々しさで演じていて、
こういう役をやるようになったんだなあと思いました。
もうすっかり映画俳優です。

それにしても70年代の江南って
あんなに何もないところだったのね、
と改めて驚きます。

巨大な利権をめぐる男たちの腹黒いやり取りに
いいように利用され捨て駒に使われてしまった男たち。
ユ・ハ監督の『卑劣な街』もそうでしたが、
とてもやるせない作品で、見終わった後も
なんとも言えない切なさがあとを引きます。
時間があったらもう一回見たかったです。

全体にスタイリッシュなアクションとは違う
泥臭い暴力シーン満載ですが、
もう、イ・ミンホの魅力で、
乗り越えられます(笑)。
だって汚い格好で屑拾いしていても
瞳が魅力的でかっこ良く見えてしまうのですもの。
前髪好きとしてはオールバックも少々心配でしたが、
それも凌駕する眼差しの演技。

全体に彼から「信じるに足る男」感が
しっかり醸しだされていて、
やっぱりこの人の真っ直ぐな芝居が好きだなあと
大きなスクリーンで見て改めて思ったのでした。