第三十九回大宅壮一ノンフィクション賞(日本文学振興会主催)の候補四作品が二十四日までに決まり、松山市生まれのノンフィクションライター城戸久枝さん(32)=写真、東京都=の「あの戦争から遠く離れて―私につながる歴史をたどる旅」(情報センター出版局)がノミネートされた。
 「あの戦争から―」は、中国残留孤児である父の足跡を追い、「日本生まれの残留孤児二世」としての自分のルーツを探ったノンフィクション。中国への留学や父からの聞き取りなど約十年にわたって取材を重ね、戦争を発端とする父の激動の半生を描き、戦争を知らない世代へのメッセージも込めた。城戸さんは「残留孤児の父の記録を残したくて書いた本。大宅壮一賞の候補に選ばれただけでも光栄なことで、うれしい」と話している。現在、愛媛新聞文化面で「四季録」のコラムを執筆中。
 ほかの候補作品は、城島充「ピンポンさん」(講談社)、鈴木敦秋「明香ちゃんの心臓」(同)、山田和「知られざる魯山人」(文芸春秋)。
 同賞はルポルタージュや内幕もの、旅行記などが対象で、一九七〇年に創設された。選考は四月七日、東京で行われる。