2023/11/24 神戸新聞
 

 2世の韓静さん、支援や相談に奔走 あす「理解を深める集い」 高齢化、困窮など課題語る
 中国残留孤児とその家族への新たな支援策が始まって今年で15年になる。残留孤児2世の韓静さん(53)は尼崎市の支援・相談員として1、2世や家族らの生活を支えてきた。高齢化が急速に進み、医療や介護を中心とした支援の重要性が高まる中、25日に市立中央北生涯学習プラザ(東難波町2)で開かれる「中国残留日本人への理解を深める集い」で課題などを語る。(広畑千春)
 韓さんは18歳の時、残留孤児の母と中国人の父、兄と帰国した。トレンディードラマであこがれていた日本は「来たら全然違った」。苦しい生活の中、どうしても大学に行きたいと奨学金を受けられる先を探して日本語学校に通い、アルバイトで大学や大学院の学費を賄った。卒業後は日本や中国の企業で働いたが、中国ではデジタル化の影響で渡日前の書類が廃棄され、戸籍がない状態だったという。高齢の両親が心配で日本に戻った後、2世のネットワーク化に取り組み、新支援策に伴って導入された尼崎市の支援・相談員に採用された。

 それから15年。韓さんは今、市南部福祉相談支援課に在籍し、18世帯31人の残留孤児とその家族を担当。病院や役所への付き添い、介護認定調査への同席などに奔走し、週1回の「コスモスの会尼崎日本語教室」では、携帯電話の使い方から家族の問題まで、さまざまな悩みに耳を傾ける。

 高齢の1世は新型コロナウイルス禍の外出自粛で体が弱り、介護サービスを利用する人が増えた。私費帰国した2世には日本語がおぼつかないため非正規の仕事しか就けず、乏しい年金で暮らさざるを得ない人も多いが、新支援策は対象外だ。「言葉の壁は高齢になるほど高くなる。韓さんのような存在はとても大きく、支援の継続が鍵になる」と同教室の宗景正代表。韓さんも「みんなが安心して暮らせる一助になりたい」と話す。

 「―集い」は午後1時~4時半。韓さんの講演に続き、兵庫や大阪の支援・相談員が対談する。伊丹市の高校生が製作した短編映画「絆」の上映や、宗景さんが撮影した残留孤児らのポートレート、日本語教室の様子を伝えるパネル展もある。コスモスの会の石打謹也さんTEL090・7489・7091
【写真説明】「コスモスの会尼崎日本語教室」で中国残留孤児や家族らの話を聞く韓静さん=いずれも尼崎市東難波町2
【写真説明】教室では残留孤児やその家族らがボランティアとマンツーマンで日本語を学んでいる