2023/12/03 中日新聞朝刊

 【長野県】全国の平和博物館などでつくる「平和のための博物館市民ネットワーク」の全国交流会が2日、阿智村の満蒙(まんもう)開拓平和記念館で開かれた。大鹿村出身の元満蒙開拓団員北村栄美さん(89)=岐阜県池田町=の講話などを通じて、平和への思いや語り継ぐ重要性を共有した。

 7歳で旧満州(中国東北部)に渡った北村さん。開拓地での生活や敗戦後の過酷な逃避行などの経験を語った。父はソ連侵攻後に現地で軍に召集されて帰らず、妹も旧満州で死別。衰弱した4歳の弟は引き揚げの途中で現地の中国人に預けられたまま生涯、帰国しなかった。「みんなが苦しい思いをした」と話す一方で「私も小さな侵略者だった」と加害意識にも触れ、「戦争は絶対繰り返してはいけない」と訴えた。

 ネットワーク共同代表でピースあいち(名古屋市)理事の丸山豊さん(78)は「つらい体験を本音で話してくれた。こういった記憶を継承していかなければ」と思いを新たにした。

 ネットワークは、ひめゆり平和祈念資料館(沖縄県糸満市)、東京大空襲・戦災資料センター(東京)などの博物館関係者や研究者ら約80の個人、団体が加盟。年4回機関紙を発行し、毎年各地で交流会を開いている。今回はコロナ禍のため4年ぶりの対面での開催で、約40人が出席した。

 この日はほかに、松川高校ボランティア部が会員たちに館内を案内。会員による活動報告や討論などもあった。(長崎光希)