2023/12/08 信濃毎日新聞

 県社会福祉協議会(長野市)が、県内の地域福祉の歴史をまとめた冊子「実践者・開拓者であれ!信州の地域福祉のあゆみ」を発刊した。1960年代以降に県内の社協職員や市民が種をまき、育んできた取り組みを時系列で紹介。「次代の福祉を市民とともに考える1冊になればいい」と期待している。

 4部構成。第1部は地域福祉の開拓者に光を当てた。高齢化を見据えて国が89年に策定したゴールドプランで福祉サービスの権限が自治体に移った時期、長野市社協が市民と取り組んだ在宅介護者の孤立防止策を紹介。障害者の社会参加を目指して県社協を中心に進めたボランティアの育成事業が、98年長野冬季パラリンピックと同時開催したアートパラリンピック長野で結実した経緯も解説している。

 ジェンダーや中国帰国者の課題解決を市民主体で考える飯田市の公民館活動など、第2部では地域福祉の推進者を掘り下げた。2000年の介護保険制度開始以降の事例を取り上げた第3部は、市民が有償で高齢者宅を訪問する北安曇郡池田町社協の独自事業など、高齢化が進む中で福祉を支える住民の役割とその可能性を紹介。生活困窮者の増加など課題が複雑化する今、第4部は困難を抱えた人を包み込む社会の在り方を問うている。

 地域福祉の継承を目指し、県内の社協関係者が2020年に設立した「信州の地域福祉研究会」が編集。同会メンバーで県社協まちづくりボランティアセンター所長の長峰夏樹さん(56)は「分断が進み息苦しさが増す現代、福祉を担う人が支援の手を差し伸べる上での『共通言語』を得る手がかりになればいい」としている。A4判109ページ、2千円。購入の問い合わせは県社協(?026・226・1882)へ。