2023/12/27 東京新聞朝刊

 【神奈川県】平和を願う小田原市民らの実行委員会が27日、地元の小田原三の丸ホールでミニコンサートとドラマの上映会を開く。昨年3月に亡くなった俳優宝田明さんの平和への思いをつなごうと、今秋には歌手加藤登紀子さんらと同じ場所でコンサートを開催しており、「年の瀬も自分たちで反戦を歌い継ぐ」と企画した。

 コンサートには、公募の市民合唱団が出演。宝田さんが作詞を手がけた「私の願い」のほか、「サライ」や「手のひらを太陽に」を披露する。合唱団を指導した歌手鶴岡恵さんは、戦死した画学生の遺品を展示する美術館にちなむ組曲「無言館」を独唱する。

 ドラマは旧満州(中国東北部)で終戦を迎えた日本人孤児たちの過酷な生活を描いた「遠い約束~星になったこどもたち」。旧ソ連軍侵攻後、氷点下30度になる寒さと飢え、病気も加わり、旧満州の日本人犠牲者は軍民合わせて24万5千人とされている。主演は松山ケンイチさんで、少年期を旧満州で過ごした宝田さんも特別出演している。

 原作者は、2020年に亡くなった小田原市の元教師、増田昭一さん。17歳の時に現地の難民収容所で5カ月間、60人以上の孤児の死をみとった。体験をつづった著書「満州の星くずと散った子供たちの遺書」(夢工房)を含む3冊がドラマ化され、14年にTBS系で放送された。

 増田さんによると、中国残留孤児になれたのはごく一部で、多くは誰にも助けられなかった。町で自分の靴下とラーメンを物々交換したさんちゃん、そのラーメンを譲ってもらった親友、「お母さんに会いたかったらおへそをみなさい。きっとお母さんの顔がみえるから」と語った母の遺言を守り続けたともちゃんは、いずれも命を落としたという。生前の取材に「最期まで愛情と思いやり、優しさと分かち合いの心を保ったまま死んだ孤児たちがいたことを知ってほしい」と訴えていた。

 午後4時開演、全席自由で千円(中学生以下は無料)。問い合わせは実行委の金子さん=(西岡聖雄)